こんにちは！東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
梅雨に入り、雨が続いたかと思うと暑い日もあり、体調を崩しがちですね。
筆者もこの暑さに少々参り気味です・・・
梅雨が明けると暑い夏がやってきます。
あちこちで熱中症の便りも届いております。私たち訪問看護師も、毎日水分補給に努めておりますが、皆様どうかご自愛くださいませ。
さて皆さん、日々「ストレス」を感じることはありませんか？
ストレスが全く無縁であるという方は、恐らくいないのではないでしょうか？
私たちが日常感じるストレスに対処する方法として、最近「コーピング」が注目されています。
コーピングはストレッサー（ストレスの基となるもの）を認識した上で、焦点型とよばれる手法で対応します。
ストレスのない環境を整備することは企業の務めですが、具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。
今回はコーピングの意味や背景、その実践方法などについて解説します。
皆様どうかお付き合いくださいませ。
コーピング（coping）とは、ストレスに対処するための行動を表す英語で、「cope（対処する・対応する）」が語源であるといわれています。コーピングの考え方はアメリカの心理学者・リチャード・ラザルスによって提唱されました。
ストレスの基（ストレッサー）にうまく対処しようとすることを、ストレスコーピングといいます。
ストレッサーによって過剰なストレスがかかった状態が続くと、心身へのさまざまな悪影響が生じます。心身の健康を維持するためには、ストレスの基を知り、上手にコントロールすることが必要不可欠といってよいでしょう。
コーピングの目的は、主として「ストレスの基となる部分を発見」し、「ストレス要因に対してアプローチ」して「負担の軽減」することにあります。コーピングを上手に活用することができれば、自身が感じるストレスを管理できるようになり、仕事のパフォーマンスの向上やモチベーションの維持につなげることが期待できます。従業員のストレス軽減は、企業の業績に直結するといってもよいかもしれません。
コーピングとは、単に気晴らしや発散といったストレス解消の方法だけに留まりません。ストレス解消のために何かをすることはとても大切ですが、コーピングはもっと科学的な手法といってよいでしょう。ストレスとどのように向き合うかを自覚し、その対処方法を考えて実行していくのが特徴です。
我が国においてコーピングが注目される背景として、ストレス社会の蔓延が挙げられます。
近年、仕事の責任に対する重圧や職場の人間関係など、仕事でのストレスを抱える人が大変多いといわれています。ストレスは大人だけではなく、子どもにもあるといわれている位で、人間はストレスと無関係ではいられないといっても過言ではないでしょう。
上述したように、ストレスが過度にかかるとうつ病や適応障害、脳梗塞などのリスクが高まり、心身共に不調を来してしまう恐れがあります。心身がリラックスしていなければ、よいパフォーマンスが発揮できないばかりか、健康をも害してしまいかねません。労災や過労死が心配される中、従業員のストレスに対して企業が対処しないというのは大きな問題です。
ストレスフルな環境では、仕事へのパフォーマンスも低下が懸念されます。このような背景から、社員がストレスに対処する方法の一つとして「コーピング」が注目されているのです。
では、コーピングにはどのようなものがあるのでしょうか。いくつか種類がありますのでご紹介します。
ストレスコーピングの方法は、大きく以下の3つに分けられます。
〇問題焦点型コーピング
問題焦点コーピングとは、ストレッサーそのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとする手法です。たとえば、ストレッサーが「対人関係」である場合、相手方に対し直接働きかけて問題を解決する方法です。
〇情動焦点型コーピング
情動焦点コーピングとは、ストレッサーそのものに直接働きかけずに、なぜそのストレスがあらわれるのかを分析し、それに対する考え方や感じ方を変えていこうとする手法です。
ストレッサー「対人関係」である場合、相手を変えるのではなく、それに対する自分の考え方や感じ方を変えていくということが例に挙げられるでしょう。
コーピングの使い分けとして、ストレッサーそのものが何らかの対処によって変えることができる場合は「問題焦点コーピング」が適当であり、ストレッサーが対処によっても変えることが困難な場合は「情動焦点コーピング」が適当であると考えられます。
〇ストレス解消型コーピング
読んで字のごとく「気晴らし」「気分転換」によるコーピングです。
ストレスを解消する方法として、例えば散歩をしたりカラオケにいったり、おいしいものを食べるなど、皆さんも何らかご経験があるのではないでしょうか。ストレス発散の方法は人それぞれですので、あまり深く考え込まず、気軽に取り組むことが大切です。
コーピングで対処するストレス（ストレッサー）の種類はいくつかあります。ストレッサーは人によって感じ方はさまざまですし、同じ状況下であってもストレスを感じる人とそうでない人が存在するでしょう。
まずは、自分自身が何にストレスを感じるのかを自覚することが必要です。
ここではコーピングで対処する主要な4つのストレッサーについてご紹介します。
〇物理的ストレッサー
物理的ストレッサーとは、温度や光、音など物理的な環境刺激のことです。例として、「暑さ・寒さ」「騒音」「放射線」などが挙げられるでしょう。オフィス周辺の騒音やパソコンやスマートフォンなどのディスプレイから発生するブルーライト、室内温度の暑すぎ・寒すぎという状況も物理的ストレッサーの一つといえます。
〇化学的ストレッサー
化学的ストレッサーとは、化学物質や有害物質などのことです。具体的には「公害物質」「薬物」「酸素欠乏」「アルコール」「タバコ」「食品添加物」「におい」などが該当します。具体例として、オフィス内でにおいの強いものを食べたり、喫煙をしたりすることなどが挙げられます。
〇生物的ストレッサー
生物的ストレッサーは、生体の免疫反応を起こす刺激のことです。例えば花粉やダストなどのアレルギー反応やウイルスなどが考えられます。
〇心理・社会的ストレッサー
心理的ストレッサーとは、「不安」「焦り」「いら立ち」「怒り」「緊張」など、人間の感情を伴うもののことです。社会的ストレッサーには、「情報過多」「過密な都市生活」「家族環境」「経済・政治的問題や情勢不安」「職場関係」「恋愛」などが考えられます。一般的に私たちがストレスと捉えているものの多くは、この「心理・社会的ストレッサー」に当てはまります。
効果的にストレスコーピングを行うためには、正しい方法を理解することが必要です。
以下、効果的なコーピングの方法についてご紹介いたします。
〇コーピングリストの作成
ストレスへの対策や解消方法をリストアップし、実際にストレスを感じた際に実践する方法です。ストレッサーに向き合い、どうしたらストレスに対処できるかについて書き出したものを「コーピングリスト」と呼びます。リスト化する際は質より量を重視し、どんな些細なことでも挙げていきます。内容が多ければ多いほど効果があがりやすいと言われています。
コーピングリストを作成することによって問題を可視化し、実際に検証することは非常に有効です。目の前に生じたストレスに適した対処法に着手できるでしょう。
〇モニタリング
ストレス反応が起きた際に、自分の気持ちをモニタリングする方法です。モニタリングとは、状態を継続的に観察・記録することで改善に役立てることです。
ストレスを分析する場合、例えば頭痛や手の震えなどの身体的反応や、辛さや苦しさといった精神的反応がどの程度の強度で生じたかを冷静に観察します。これがモニタリングです。
その際、観察者の主観を入れないことが必要です。客観的に把握するよう意識してストレスの度合いが理解できれば、対処すべきストレッサーの優先順位を知ることが可能になります。
〇結果の分析
コーピングリストに基づいて実践しモニタリングを行った後は、結果の検証を行います。
リスト化しただけでは意味がありませんし、観察して放置していてはいけません。観察した結果どのような効果が出たのかを分析することが大切です。
ストレスの軽減が図られたのであれば、その手法は効果的であったと結論できるでしょうし、そうでなければ再考が必要であるということになります。
上記のように、ストレスコーピングのPDCAを繰り返すことが重要といってよいでしょう。
ここでは、企業において取り組むべきコーピングの実践方法についていくつかご紹介します。
〇メンター制度や1on１の導入
ストレスを感じた人にとってつらいのは、「誰にも相談できない」「気持ちを分かち合えない」ことではないでしょうか。
ストレスを抱えて辛い思いをする社員に対し、救いの手を差し伸べる方法の一つとして、メンター制度や１on１の導入が考えられます。
メンター制度とは、新入社員や若手社員などの様々な悩みに対して、年齢や社歴の近い先輩社員がサポートし、必要に応じて助言する制度です。ここでポイントになるのは、「年齢や社歴の近い先輩社員」がメンターにすべきであるという点です。年齢や社歴が離れ過ぎてしまうと、なかなか相談しにくいものです。
相談できる人が社内で明確になっていれば、新入社員や若手社員はその制度を積極的に活用することが期待できます。社員も自分自身の悩みや不安を相談できれば、安心して仕事をすることができるでしょう。
1on1制度とは、上司と部下が定期的に行う1対1の面談のことであり、部下の成長を目的として行われます。
ここで注意すべき点は、上司から話をするのではなく、部下が中心になって話してもらうこと。1対1の面談をよいことに、上司が部下に説教してしまっては意味を成さなくなります。上司が部下の気持ちに寄り添い、傾聴しながらもアドバイスをすることで、部下は感情や問題を整理でき、前向きな意識への転換やストレスの軽減につなげることが期待できます。
〇講座や研修の実施
ストレス対策を行うために、各種講座や研修を実施することも有効です。
もちろん、他者にコーピングやストレスマネジメントを行ってもらうことも重要ですが、社員自らもストレスに対処するための学習をすることも大切です。
近年ではe-ラーニングも充実しており、手軽に学べる環境も整っています。
社員自らストレスの仕組みや対処法を知ること、そして社内全体でコーピングの手法をトレーニングする環境を構築することにより、組織全体のエンゲージメントや生産性を高めることができるかもしれません。
〇オフィス内での環境整備
環境整備を推進することも、ストレス対策には大変重要です。
例えば、オフィスの動線やレイアウトに配慮すること、休憩スペースの確保、使いやすいオフィス機器の配慮、明るさ・室温などへの配慮が考えられます。
予算の問題もあり、すべてを完全に実行することは難しくても、どこにストレスの原因があるのかを分析して、可能な限り環境を整備することによって、社員は気持ちよく自身のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
従業員のストレスに対処すべく、日本でも労働環境に関連する法整備が進んでいます。企業において労働者のメンタルヘルスケアの推進は必須と言っても過言でありません。
ここでは、企業のメンタルヘルス対策についていくつかご紹介します。
〇ストレスチェック制度の導入
ストレスチェック制度とは、ストレスチェックおよびその結果に基づく面談指導の実施、集団ごとの集計・分析等の取り組みをする制度です。ストレスチェック制度の中心になるストレスチェックは、労働者のストレスレベルを判定するためのアンケート形式の検査であり、企業はその結果を受けて何らかの対応を行います。
〇産業医の活用
メンタルヘルスの専門家である産業医や産業保健の専門スタッフとの連携も、労働者の健康管理を行う上で有効です。労働安全衛生法では、労働者が50人以上いる事業場においては産業医を選任することが義務（50人未満の場合は努力義務）となっています。
産業医の役割は「治療」ではなく、労働者の心身の健康をサポートすることです。具体的には、健康診断の実施・結果への対処、長時間労働者の面接指導やストレスチェックの実施などが挙げられます。必要に応じて適切な医療機関の紹介をすることや、休職者の復職判断をする場合もあります。
産業医を活用することは、従業員のストレス対策に大きな効果が期待できるでしょう。
〇研修の実施
ストレスマネジメント研修は、小規模企業においても比較的導入しやすい取り組みです。
具体的には、管理者や従業員に対してメンタルヘルスの重要性を啓蒙し、基礎知識の教育を行うことです。
ストレス対策について社内の意識を高めることにより、メンタルヘルス不調に気づくだけでなく、ストレスの回避や予防に役立つことも期待されます。厚生労働省でも社内研修に関する資料も公開されていますし、近年ではe-ラーニングやDVDなどを活用して、手軽に学ぶことが可能です。
日本が「ストレス社会」といわれるようになって久しい中、企業が従業員のストレスに対してしっかり対処することは極めて重要です。
コーピングを実施することで、従業員のエンゲージメントが高まり、企業の生産性向上が期待できるなどメリットもあります。
本記事が、企業においてコーピングを検討する一助となれば幸いです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
