令和6年度診療報酬改定の行方―訪問看護①

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

関東地方でも梅雨入りしていますが、ここのところ暑い日が続いていますね。

このコラムを執筆している最中、奄美大島では集中豪雨が続いていて大変な状況になっております。被害に遭われている方に置かれましては謹んでお見舞い申し上げます。

日本では毎年のようにどこかで何らかの天災が発生しています。

筆者自身は幸いなことに、これまで被害に遭ったことはありませんが、いつ何時どうなるかわかりません。

我が家では非常持ち出し袋を自宅玄関前に保管し、何かあってもすぐに持ち出せるように備えています。最低限の食糧や水はもちろん、ラジオやライト、乾電池、配偶者との結婚式や子どものアルバムも備えています。倉庫には、500mlの水も数箱常備しています。

電気が止まってしまった場合にも多少は備えられるよう、ポータブル電源の購入も検討しています。災害に備えることはとても大切です。

本日のテーマ

関係ない話で前置きが長くなってしまい申し訳ありません。

2024年は介護保険法改正・介護報酬改定が行われる年です。皆様ご存知の通り、3年ごとに法や報酬が見直されます。

今回特筆すべきなのは、「診療報酬」も2024年に同時改定される点です。障害福祉サービス費も改定されますので、「トリプル改定」などといわれています。

私たち訪問看護ステーションでは、介護報酬改定の動向を確認することももちろん重要なのですが、「診療報酬改定」も同じ位重要な関心事です。

なぜなら、訪問看護サービスは介護保険だけでなく「医療保険」も関係するからです。

今回、「令和6年度(介護・診療報酬)同時改定に向けた意見交換会」という会合で、訪問看護に関して提起された論点は下記の4点になります。

(1)更なる高齢化を見据えた訪問看護の役割等

(2)地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制

(3)介護保険・医療保険における訪問看護の対象者

(4)介護保険と医療保険の訪問看護に関する制度上の差異

となっております。

今回は「(1)更なる高齢化を見据えた訪問看護の役割等」について、筆者の見解等を踏まえてご紹介したく存じます。今後複数回にわたって取り上げますので、どうかお付き合いいただけますと幸いです。

訪問看護サービスのニーズは確実に高まっている

在宅医療の対象者について、意見交換会では「既にピークを迎えている地域もあり、地域差はあるものの、多くの二次医療圏では 2040 年以降にピークを迎えると推計されている」と記載されています。

統計を見ればいろいろ見える部分は異なるのでしょうが、一般的な感覚であれば「まだまだ今後も在宅医療は高まる」というイメージで間違いないでしょう。

意見交換会では、訪問看護ステーション数の推移についても言及しています。

これまでの在宅医療の体制整備や累次の改定により、都道府県によりばらつきがあるようですが、着実に増加してきているのは間違いありません。

令和4年度の訪問看護事業所数は1万3千事業所を超えています。ニーズの高まりは今後もしばらくは続くと見られています。

適時に最適な訪問看護サービスを提供するために

意見交換会では訪問看護ステーションに対して「利用者様の心身の状態や社会的背景などの多様化にも柔軟に対応し、適時に最適な訪問看護を提供することが求められている」と言及しています。

今後は、訪問看護ステーションにおいては「より訪問看護の質の担保・向上」を図っていく必要があるでしょう。

また意見交換会では「看護職員による定期的な訪問により、利用者の病状や心身の状況及びその変化等を把握し、評価を行い、必要に応じて訪問看護計画を見直すことも必要な時代に突入している」とも言及があったようです。

筆者の個人的な考えになってしまいますが、退院支援看護師を配置する病院のように、訪問看護サービスにも「ソーシャルワーク」的な知識や経験が今後求められるかもしれません。実際に専門職を配置することは難しいでしょうが、知識と経験は求められてくるような気がします。

これは簡単にはいかないかもしれませんが、今後訪問看護ステーションには「社会福祉援助」に関する知識を習得することが必要になってくるのではないでしょうか・・・事業所内でも、今後そのような研修等を実施していくとよいように思います。

訪問看護ステーションの管理者の役割

意見交換会では、訪問看護ステーションの管理者の役割や責務についても提言がありました。

管理者の責務の一つとして「主治医の指示に基づき訪問看護が提供されるよう、主治医との連絡調整、訪問看護の提供を担当する看護師・療法士の監督等必要な管理を行う」と定義されています。

これだけ訪問看護サービスのニーズが高まっているわけですので、に訪問看護ステーションが大規模化し、ご利用者様が増えていくのはごく自然なことです。

また、訪問看護ステーション内も多職種が関わり、かつ地域の他サービス事業者様との連携も複雑になる中、訪問看護ステーション管理者のスキルや能力は高いものが求められるのも、これまた自然な流れかと思います。

意見交換会では、管理者が持つべきスキルの例として「従業者のマネジメント」「サービスの実施状況の把握」「より一層の訪問看護計画等への必要な指導及び管理」等を挙げています。

サービス付き高齢者住宅等の入居者に対する訪問看護の在り方

今回、診療報酬改定に関する検討会(中医協など)で、筆者が知る限りサ高住等の入居者に関する「訪問看護の在り方」について言及があったのは、あまり記憶にありません。

とはいえ、いわゆる住宅型有料老人ホームやサ高住といった「同一建物居住者」に対する介護サービスの提供については、諸々問題があって議論が高まっているのは事実です。

実際、介護保険においては「同一建物減算」の仕組みがあり、一定以上の人数を同日にサービス提供した場合に「所定単位数の10%」「同15%」の減算が適用されるルールがあります。

訪問診療についても同様の仕組みがありますし、訪問看護も介護・医療保険とも同じような概念があります。

近年、介護付き有料老人ホーム(特定施設)よりも「住宅型有料老人ホーム」「サ高住」の人気が高まっているように思えます。

特定施設は介護保険の基本報酬が「マルメ」であるゆえ、必然的に売上のアッパーが決まってしまいます。それに対して住宅型やサ高住は「在宅」の括りになるため、いろいろなサービスを複合的に提供することによって高い収益が期待できるようです。

最近では、指定難病(パーキンソン病など)に特化し、訪問看護サービスを複合された有料老人ホーム等も増えてきていると聞きます。

ガン末期の方であれば文句なしで「医療保険」による訪問看護サービスが提供できますが、入居期間がどうしても短期間になってしまうために、なかなか安定した経営に結びつきにくいという話も聞いたことがあります。

筆者個人的には、いろいろ特色あるホームが存在し、利用される方に幅広い選択肢を提供できるようにすべきであるとは思います。あくまで「ご利用者様の側」に立った場合の見解です。

反面、制度の隙間を縫って、グレー的なサービスを提供するホームがあるのも事実です。

意見交換会では、サ高住の入居者へ提供する訪問看護サービスについて「実態を確認しつつ検討する必要がある」と述べられていますが、これが診療報酬にどのように影響するのか気になるところであります。

訪問看護サービスを提供する環境の変化

訪問看護を提供する環境も変化していることも事実です。

コロナ禍の教訓から、情報通信機器を用いた診療・サービス提供が進みつつあります。

サービス担当者会議においても、オンラインによる開催も増えてきているようですし、筆者が知る限りでも「オンライン診療」をされる医療機関も聞かれるようになりました。

もちろん、サービスの根幹は「直接ご利用者様宅へ訪問し、心身状態を肌で感じつつ適切なサービスを提供すること」でありますから、どうしても労働集約的な形になってしまうのはやむを得ません。

しかし、情報機器を今後可能な限り活用していかなければ、サービスの生産性はなかなか高まっていかないのも事実です。

意見交換会では、今後情報通信機器の普及状況によっては、主治医によるオンライン診療の際に看護師が居宅へ訪問し、診療の補助を行うという「D to P with N」の構築も想定されるのではないか、と言及しています。

「D to P with N」の「D」は「医師(Doctor)」、「P」は「患者様(Patient)」、「N」は「看護師(Nurse)」を意味します。「医師と訪問看護師が一緒になって患者を診療する」ということと筆者は理解しています。

これは大変よい連携になると思いますが、実現するためには「D to P with N」の「N」すなわち訪問看護ステーション側に対して何らかの評価が必要になります。

「評価」とは、報酬としての評価ということです。

オンライン診療はまだまだ十分に浸透しているとはいえないようですが、厚生労働省は医療・介護(特に介護業界)においてICTの活用をますます推進したい考えを持っていることは間違いありません。

推進したいのであれば、そこに財源をつけて評価することが必要です。

「同時改定」に関する意見交換会で上記のような論点が上がるということは、検討の内容によってはこの点について新たな報酬(加算?)を創設しようと考えているということか?とも思われます。

本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。

ユニケアでは、これからも皆様にとりまして有益な情報が発信できますよう、努力を重ねてまいります。

どうか今後ともご愛顧を賜りますよう、よろしくお願いいたします。