介護人材の処遇について(2024年介護報酬改定に向けて)

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

少し遅れてしまいましたが、先日のNPB(プロ野球)日本シリーズはものすごい盛り上がりでしたね。

阪神タイガースが日本一になり、今年のプロ野球シーズンは終了となりました。

関東生まれ関東育ちの筆者にはよくわからない世界ですが笑、38年ぶりの日本一ですから、関西地区での阪神人気はものすごいものがあるようです。

スポーツで盛り上がるというのは、地球平和においては大変よいことです。

このあと、サッカーJリーグや天皇杯、ラグビー等が控えています。今から楽しみですね。

本日のテーマ

前回、介護給付分科会で審議された「介護事業経営実態調査」について取り上げました。

お読みいただいた皆様、誠にありがとうございます。

私たち訪問看護ステーションが取り巻く環境も、安泰であるとはいいがたい部分があります。しかし、不平不満を言ってばかりもいられませんので、とにかくご利用者様に真摯に向き合い、日々のサービス提供に従事してまいりたいと思います。

今回は、11月に開催された介護給付費分科会において審議された「処遇改善加算の見直し」について取り上げたいと思います。

私たち訪問看護事業には、残念ながら処遇改善加算は無関係の話ですが・・・

しかしほとんどの介護サービス事業所様においては、大きな関心事の一つではないかと思います。 どうぞ最後までお付き合いいただけますと幸いです。

現行の処遇改善加算の内容

「介護職員処遇改善加算」が初めて導入されたのが2012年。もう10年以上前になります。

当該加算が新設された3年前(2009年)に、「介護職員処遇改善交付金」が導入されたのですが、この頃から介護職員の処遇改善(賃上げ)を目指してきました。

「交付金」は一時的な対応というイメージを持たれかねません。介護職員の年収を全産業の平均額に近づけようと、3年ごとの報酬改定のたびに改定率も変更(プラス)となってきました。

また、介護職員処遇改善加算のほかに「特定処遇改善加算」が2019年10月に、「ベースアップ等支援加算」が2022年10月に新設され、通常の改定でなく「期中改定」として導入されています。

国が、介護従事者が日本国において大変重要なエッセンシャルワーカーであると認識しており、安定供給のためには処遇改善が絶対不可欠であると強く認識していることだけは、どうやら間違いではないようです。

処遇改善加算には「キャリアパス」という要件が内包しています。 厚生労働省は、この処遇改善加算を従業者の「キャリアパス」の財源の一つとして活用することを認めています。

取得状況と問題点

上記のスライドは、過去5年間の各処遇改善加算の所得率を示すものです。

2023年4月時点での「介護職員処遇改善加算」の所得率は、全体の93.8%でした。

ほとんどの事業所では、何らかの処遇改善加算を算定しているということになります。

特定処遇改善加算は77.0%、ベースアップ加算は92.1%と、大変多くの事業所が取得しているということです。

裏を返すと、未取得事業所もまだまだ存在しているというのも、また事実であります。

以前もこのコラムでお伝えしたのですが、処遇改善加算を全く算定していない事業所があるとしたら、それは非常にまずいことであると思います。

求職者から選ばれない事業所陥らないためにも、処遇改善加算は算定されることを強くお勧めする次第です。

上記のように、介護職員の経済的な処遇を高めていく取り組みを国は推進していますが、今回の分科会では問題点を指摘しています。

それは、算定する上での「わかりにくさ」「処遇改善計画書作成における煩わしさ」です。

処遇改善加算を算定する場合、毎年2月(報酬改定がある年等は4月)に計画書を作成し、行政に提出しなければなりません。

また、毎月7月頃には、前年度の実績報告を行う必要があります。

基本的に処遇改善加算の報酬の振り分けは、一定のルールを遵守する前提で、事業者の裁量に任されています。しかし、そのルール自体がわかりにくいのです。

その仕組みを一から説明すると、かなりの字数となるため省略しますが、この複雑さで毎年事業所は誤を悩まされているのです。

今回の報酬改定において、現行3つある加算(処遇・特定・ベースアップ)を一本化しようとしています。

以下、その内容について解説したいと思います。

新しい処遇改善加算のイメージ

今回の改定案は、現行の3加算を1つにまとめるとともに、それを細分化しようとするものです。

細分化とは、

  • 介護職員の基本的な待遇改善・ベースアップ等
  • 資格や経験に応じた昇給の仕組みの整備
  • 総合的な職場環境改善による職員の定着促進
  • 事業所内の経験・技能のある職員を充実

ということのようです。 上記のスライドのように、①から数字が上がるごとに算定の難易度が上がり、算定率が高くなっていくようなイメージかと思われます。

現行の3加算の要件と新加算案との関係性について、分科会の資料では公開されております。

それが上記のスライドになります。

このまま反映されるのかどうかは、ふたを開けてみないとわからない部分があるのですが、

・「職場環境等用件(最低1つ)」「キャリアパス要件」「ベースアップ等要件」・・・①

・「キャリアパス要件(昇給の仕組み)」・・・②

・「賃金改善用件(リーダー級の職員1名以上が440万円以上)」「職場環境等要件(複数)」「見える化要件」・・・③

・「介護福祉士等要件」・・・④

を想定しています。

現行の3加算は、歴史的変遷を経て追加・見直しがなされてきました。

各種申請の負担や煩雑さの改善は、かなり前から問題視されてきたところです。

前回改定あたりから、処遇改善加算に関する様式を全国統一様式にする等、いろいろ改善に努力されているのは認めますが、結果的にあまり負担軽減がされていないという「残念」な状況になっていることが多いのも事実です。 私たちの期待を裏切ることがないよう、手続きを可能な限り簡素化していただきたいところです。

今後何が期待できるか(まとめ)

処遇改善加算は、次回の報酬改定でも算定率がアップすることが確実視されています。

また、このたび政府は2024年2月より、介護職員に対して月6千円程度の賃金を引き上げる方針を固めました。

補正予算を490億円つけ、ベースアップ加算に上乗せする形での算定になるそうです。

恐らくこの部分を次回の報酬改定に盛り込んでいき、全体の加算率を上げていくのではないかと推測しております。

ただし、今回の処遇改善加算関連の見直しも、現状では居宅ケアマネさんや訪問看護ステーション、福祉用具貸与事業所等については対象にならない見通しです。

訪問看護師にも何とか恩恵に預かれるような改定であってほしいのが本音ですが、せめて居宅介護支援事業所にも当該加算の算定を認めていただきたいです。

先程ご紹介した2024年2月からの賃上げ策も、ベースアップ加算の上乗せという運用とのことなので、現状のルール通り居宅介護支援事業所や訪問看護ステーション等は対象になりません。

前回のコラムで触れました通り、居宅介護支援事業所は収支差率が若干改善したものの、深刻なケアマネ不足に悩まされています。

訪問看護ステーションにおいては収支差率が落ち込んでおり、ステーションにおけるリハビリサービスについてさらなる報酬カットを目論んでいます。

もちろん他のすべてのサービスに言えることですが、ケアマネも訪問看護師も「地域包括ケアシステム」に欠かせない専門職です。

医療も「入院から在宅療養へ」舵を取ろうとしているわけですから、ケアマネさんや訪問看護師にももっと目を向けていただく必要はあるのではないでしょうか?

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

次回の投稿をお楽しみに!