昔とは少し考え方が変わった?「出戻り社員」の話

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

このコラムを執筆した数日前、関東でも猛暑日を記録しました。

東京でも30度を超え、ジメジメした感じではなかったのでよかったものの、暑さに慣れないこの時期には堪えましたね。

熱中症にかかった方もいらっしゃったようです。水分補給に努めたいものです。

筆者の地元の小学校では、運動会が行われます。

つい先日まで寒かったのに、もう運動会の時期となり・・・月日の経つのは本当に早いですね。

皆様、どうか体調を崩すことなくお元気にお過ごしくださいませ。

本日のテーマ

人材不足といわれて久しい介護業界において、いかにして人材を確保していくかについて、経営者や管理者様は本当に頭を悩ませていらっしゃることでしょう。

このコラムでも触れたことがあるのですが、筆者は人事や採用について関心がありまして、たまに関連するテーマを執筆させていただいております。

微力であっても人材確保や定着に苦心されている皆様に、少しでもお役に立つ情報提供ができればという想いから、定期的に記事を書かせていただいております。

ところで、皆さんがお勤めの会社や事業所で、一度辞めたスタッフさんが戻ってきて、また一緒に仕事をするという経験をされたことはありませんか?

一度辞めた方が戻ってきた社員のことを「出戻り社員」といいます。

出戻り社員については、これまでネガティブはイメージが持たれていましたが、今では条件次第で受け入れられてきているようです。

今回は「出戻り社員」を取り上げさせていただきたいと思います。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

「出戻り社員」とはなにか?

出戻り社員とは、何らかの事情で退職したが、再び雇用された社員のことをいいます。

筆者は冒頭で、出戻り社員についてかつてはあまりよいイメージを持たれていなかった、とお伝えしました。

社員が退職するのは、多かれ少なかれ、その会社での就業を継続できないネガティブな事情が存在した。

それが、ネガティブなイメージの理由かもしれません。

しかしいろいろ考えてみると、退職者が必ずしも「ネガティブな理由で辞めた方」ばかりではないこともわかります。

会社を辞める選択をした人の中には、このような方も存在するでしょう。

・育児や介護など家庭の事情によってやむを得ず離職したけれど、状況が変わったので働けるようになった

・異なる環境で働いてみて、自分には前職が合っていると認識できた。

・体調悪化で不本意ながら一度辞めてしまったが、すっかり体調も回復したのでまた働きたい     等

このように、一度辞めた方の中には「以前勤めた会社で再び働きたい」と考えている人が一定数存在します。

こうした人のニーズに着目し、積極採用を行うことを「出戻り採用」「カムバック採用」などといいます。

「出戻り社員」が注目されている背景

先程、一度退職した社員が戻ってくることについては「ネガティブなイメージ」があるとお伝えしました。

終身雇用が当たり前の時代においては、そういうイメージがあったかのしれませんね。

その昔、一度就職した会社には定年まで勤め上げるのが当然という考え方が、確かに存在しました。

転職すること自体が珍しかったため、中途で辞めるというのは会社への裏切り行為だ、というイメージがあったのかもしれません。

このように、退職者をネガティブに捉える風潮もあったのは事実でしょう。

しかし時代は変わり、転職はいまや普通に行われています。全くもって珍しいことではありません。

筆者は退職後に出戻ったという経験はありませんが、転職した経験はあります。

筆者にとって、転職は自らをステップアップさせるために必要な手段であったと認識しており、後悔など全くありません。

むしろ、必要と判断したときに転職したから今がある、と思う位です。

問題は「転職が普通のことになった」ということだけではありません。

現代において少子高齢化に伴い、労働人口は著しく減少しています。社会全体が「人手不足」に陥っているのです。

人材の流動化が進み、働き方も多様化してきていることからも、新たな人材確保の難易度が高まっています。

介護業界の人材不足は本当に深刻ですが、多くの業界において同じ現象が起こっていることなのですね。

こうした社会変化を背景に、一度会社を退職した人たちにも目が向けられるようになってきました。

ここで、退職した(する)方々の意向について、深く考える必要があるでしょう。

前述の通り、人々が会社や仕事を変えることは一般的になり、女性の社会進出も当たり前に進んでいます。

退職を考える方々の意向も様々です。キャリアを中断して大学院などに進学するケースや、数年間育児に専念し、落ち着いてから再び働き出すケースなどあります。

起業や副業など、人材のキャリア形成に関する選択肢は実に多様化しました。

一直線に進んでいくキャリア以外にも様々な道があり、それぞれが正しい選択であると認識されるようになってきました。

その中で、かつて在籍していた会社に戻るという選択肢もありだなと、ポジティブに捉えられるようにもなっているわけです。

出戻り社員を採用するメリット

業務知識があり、立ち上がりが早い

出戻り社員は、一般公募で採用をする場合に比べてスキルや知識が比較的高いのが特徴です。

その業界・その職種の知見があるのはもちろん、自社特有の仕事の手順を熟知していたり、業務に用いるツールやシステムなどにも慣れていたりする場合が多いです。

介護業界においても、例えば記録ソフトや請求ソフトに明るい方であれば、それだけで即戦力になり得ます。

ソフトに関する経験や知識がなければ、研修等を実施して身に着けていただかなくてはならないわけですから、それが必要ないというのは負担軽減が図れるのは当然でしょう。

自社で働いた経験があるからこそ、その業務に関して熟知しているというのは大きなメリットといえるでしょう。

企業の風土・カルチャーに馴染みやすい

スキルや知識と同様に、企業風土を熟知しているのも強みの一つです。

社風や社内文化というのは、言葉で伝えるのが難しい要素であり、実際に働いてはじめて実感する人も多いものです。

面接ではなかなか感じることは難しく、採用サイト等を見ても完全には把握することはできません。

要は、ミスマッチが起こり得るということです。

その点、いわゆる「出戻り社員」は会社の社風や文化を肌で感じ理解した上で、改めて入社を希望する人材ということですので、少なくとも企業風土に合う・合わないという「ミスマッチ」が起こる可能性は低い傾向にあります。

もちろん、何らかのトラブルを起こして退職した場合は話が別になります。そういう人材を再び雇用することはないでしょうし、人材側も同じでしょう。

採用コストを抑えられる

個人と企業の相互理解が得られた状態で採用が進むので、話が早く進みます。

また、採用にかかる工程数が一般公募よりも少なくて済むのも特徴といえます。

さらに、過去に接点があった関係だからこそ、人脈を通じてアプローチ可能な場合が多いと考えられます。

一般公募に比べても、外部サービスにあまりコストをかけずに募集・採用を行うことができます。

出戻り社員を採用するデメリット

過去の経験が邪魔をして、今のやり方に適応できない可能性がある

不確実性の高い世の中において、企業もそれに呼応すべく変化しています。

確かに、出戻り社員が過去に在籍していたときには通用したかもしれませんが、出戻り後もそのまま通用するとは限りません。

そこには注意が必要です。

退職してからの期間長期にわたってからの復職の際に、この可能性は高まります。

その人材が十分受け入れ、新しいやり方を学び適応しようという気概があれば問題ないでしょうが、過去の成功体験を引きずり過ぎると学び直しの阻害にもなりかねません。

現役社員から不平不満が出るリスクがある

出戻り社員を採用する際、過去の実績や他社で得た経験を加味して、相応の役職・ポジションで入社してもらうこともあります。

しかし、本人の実力やポテンシャルだけを見て決めるのではなく、現役社員からはどのように見られるかの配慮も必要です。

ここでも、出戻り前に円満退職しているか否かが問われるでしょう。

前述の通り、何らかのトラブルを引き起こして辞めた場合は問題外ですが、そうでなかったとしても自社で努力を続けてきた人よりも、一度辞めた人が厚遇されたのでは、現役社員のモチベーションが保たれるとは考えにくいです。

出戻り社員を採用する際の注意点

在籍時からの良好な関係づくり・円満退社が大前提

たとえどんな理由で退職した人であっても、在籍時の会社に対する印象が悪ければ、出戻り採用の依頼に応じてくれる人はいないでしょう。

だからこそ、出戻り採用を成功させるには、採用時以上に在籍時の会社に対する印象をいかによくするかが重要になります。

従業員満足度やエンゲージメントの向上に努めることは、現役社員との関係性を良くしてパフォーマンスを高めるだけでなく、退職社員に「また戻って働きたい」と思い出してもらえる効果も期待できるでしょう。

また、退職の申し出があったとしても最後まで丁寧なコミュニケーションを心掛け、「円満退職」という印象をもって送り出すことも大切です。

先入観で相手を見ない

出戻り社員の過去の経験は、採用する側が人物を正しく評価する妨げになってしまう場合もあります。

昔の実績を持ち出して過大評価してしまったり、退職後の経験を考慮せず当時の印象だけで過小評価してしまったりするのはよくありません。

そうした事態を防ぐためにも、かつての実績や印象は参考にしつつ、あくまで現状の実力や仕事への姿勢、価値観等を冷静に評価する必要があるでしょう。

時短勤務や副業・業務委託などの可能性も柔軟に検討する

例えば育児や介護などを理由に退職した社員の場合、働く時間や場所の条件が出戻りの大きなハードルになる可能性があります。

このような方々の中には、本当は辞めたくなかったがやむを得ず退職を決意した、という方もいらっしゃるでしょう。

このようなケースでは、例えば時短勤務の導入や在宅勤務を可能とするなど、勤務条件を見直し柔軟な働き方を構築することも重要です。

出戻り採用の成功確率を高めることにも繋がります。

また、独立・起業により退職した人であれば、パートナー企業として業務委託契約を結んで仕事をしてもらうことも一つの方法です。

実際に筆者も、このような形で過去に在籍した会社と関わりを持ったことがあります。

転職をせずに副業として協力してもらったりするのもよい方法です。

一度退職をしている人たちだからこそ、雇用関係を継続できなかった理由を精査し、可能な範囲で柔軟に検討してもよいでしょう。

出戻り社員を受け入れるときのポイント

“親しき仲”でも特別扱いしすぎない

出戻り採用は、一般公募よりもお互いを知っている状態で選考がおこなわれるため、書類選考の免除や面接回数の短縮などをして効率的な採用をしやすいメリットがあります。

その一方で、確認のプロセスを簡略化してしまうのは問題です。

これは出戻り社員に限らず、すべての採用においても同様なのですが、特に旧知の仲だからといっても口約束で話を進めるのはではなく、雇用契約の内容をはじめ重要な確認事項については、しっかりと書類に落とし込んでやり取りをすることが重要です。

今の職場に上手く馴染めるかを考慮

出戻り社員は、個々の社員とも少なからず関係性のあった人たちです。

その人が戻ってくると、他の社員にどんな影響があるかを考慮することも必要です。

人間関係も考慮して配属先を決めたり、配属前に出戻り社員と配属先の双方と丁寧にコミュニケーションを取ったりすることも大切です。

人材不足が厳しい世の中で、いろいろ知恵を絞って人材確保をすることが大変重要です。

本コラムが、皆様にとって何らかの参考になれば幸いです。

本日もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。