「訪問看護ステーション」を立ち上げるには?

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

近年、訪問看護ステーションの運営に興味のある法人が増えてきています。地域包括ケアシステムをますます深化させていく上で、訪問看護ステーションの存在は不可欠であり、ニーズも高まっております。

では、訪問看護ステーションを立ち上げるにはどうすればよいのでしょうか。

今回は訪問看護ステーションの立ち上げの詳細や留意点について解説したいと思います。

ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

訪問看護ステーションの推移

訪問看護ステーションの事業所数は、長きにわたり増加傾向にあります。「第220回社会保障審議会介護給付費分科会資料」によると、令和4年の訪問看護実施事業所数は1万3千件を超えています。

訪問看護ステーションが地域包括ケアシステムをより深化していく上で欠かすことのできないサービスの1つであることは、先ほど述べた通りです。少子高齢化に歯止めがかからず、増え続ける社会保障費・・・社会保障制度を将来にわたって持続するためには、社会保障給付を適正化しなければなりません。

その一環として、入院医療機関では治療が終了し次第、退院させる動きがあります。入院医療機関にとって、いかに入院期間を短くし、在宅へ退院させるかが求められ、それを実行することで高い診療報酬が算定できます。裏を返せば、これが実現できないと報酬による評価が下がってしまうわけです。

これはあくまで一例ですが、社会保障費を適正化しようという動きに他なりません。

では、利用者が退院し在宅に戻れれば、それで終わりなのでしょうか。

退院しても状態の安定しない利用者に対し、継続して医療的な対応を要するケースが多いのも実情です。

そこで重要になるのが、訪問看護ステーションの存在です。

他事業所と連携しつつ、在宅で療養されている方をケアするサービスとして、訪問看護ステーションのニーズがますます高まっていることは紛れもない事実です。

訪問看護ステーションの開設の概要と流れ

訪問看護ステーションを開設するためには、都道府県知事あるいは指定都市・中核市の市長の指定を受けなければなりません。また、法人格を有することも必要です。個人事業主では介護事業を行うことができません。

さらに、厚生労働省令(実際は都道府県等が定める条例)に基づく人員基準を満たし、設備・運営基準に則って適切な運営を行うことが要件です。

開設するまでには、手順に沿ってさまざまな事前準備をしなければなりません。

以下、訪問看護ステーションの開設に必要な内容について解説します。

開設の目的や方針を決める

まず、開設の目的や方針を明確にすることが重要です。

具体的には、開設する地域の特性、既設されている訪問看護ステーションの数、病院や診療所等の医療機関の数、福祉サービスの供給量などを確認します。

この作業が必要なのは、利用者の獲得や人材採用に密接に関連するからです。医療機関との連携も、もちろん利用者獲得に重要なだけでなく、利用者が急変したときに医療機関と連携しているとスムーズな対応が可能となるために必要です。

このような活動により、事業所の開設後における「利用者の見込み数」「提供すべき訪問看護サービスの内容やニーズ」、「連携先」などを把握するわけです。

そこから、訪問看護ステーションを開設する意義や基本理念、自社がイメージする利用者像が、提供しようとする訪問看護サービスの内容に合致するのかを十分検討し、開設の目的や方針を定めて明文化します。この「明文化」が重要であり、訪問看護ステーションの指定申請においても作成が求められます。

安易な参入は非常に危険です。「地域医療に貢献したい」「地域にお住まいの高齢者の生活を支えたい」などの想いを持つこともさることながら、参入するからには多少の困難はあっても長期的視野を持ってサービスを継続する「覚悟」が重要です。

法人を設立する

先ほども触れた通り、訪問看護ステーションに限らず介護事業所の指定を受けるには「法人格」を取得する必要があります。

新たに法人を設立するには、株式会社、有限会社、NPO法人などの設立手続きを行い、法人を設立します。すでに法人が存在する場合は、定款や寄付行為の変更を行うとともに、訪問看護事業所の運営の旨を登記する必要があります。

法人形態の種類により、設立に伴う費用が変わります。開設予定者の実態に即した対応が必要でしょう。

すでに法人化されているのであれば、こちらの解説は無視していただいて結構です。

市区町村・都道府県に「事前相談」を行う

市区町村の介護保険課の担当者にアポイントを取り、訪問看護ステーションの開設に関する事前相談を行います。

担当課と訪問看護ステーションの開設場所、訪問看護事業の目的・理念、運営方針などを説明しましょう。不明な点について質問すれば、担当課の職員は丁寧に回答してくれます。

事前相談をすることにより、不明点が明確になるだけでなく、申請に際しての勘違いや間違った理解を修正することも可能になります。いざ申請という段階になって、誤った理解をしていたことにより、申請そのものが計画通りに進まなくなってしまっては問題です。

このように事前相談は、指定申請手続きなどについて情報を得る意味でも非常に有効でしょう。

開設資金を確保する

どのような事業を行うにせよ、資金の準備は絶対必要なファクターです。

必要な資金は「設備資金」と「運転資金」の2つに大別されます。

設備資金は、事務所の家賃や自動車・自転車などの車両、事務機器等の備品の準備に必要な資金です。いわゆるイニシャルコストがメインとなりますが、事務所の家賃等は毎月の固定費となりますので、ランニングコストの意味合いもあります。

運転資金は、主として人件費(給与や社会保険、福利厚生費等)や水道光熱費、通信費、事務用品費等が考えられます。

訪問看護ステーションは、通所介護や施設に比べればそれほど高額な資金は要しませんが、それでも実際の開設前に職員を確保する必要があるため、収入よりも支出が先行します。

事業者指定を受けない限りサービスは提供できませんし、指定初月にサービスが提供できても、資金化されるのは2か月後になります。

このように、介護保険や医療保険のサービス事業を行う場合は「資金繰り」が絶対不可欠となります。最低でも3か月分、できれば6か月分の運転資金は準備する必要があるでしょう。

資金源としては、自己資金やスイートマネーのほか、銀行融資等が考えられます。特に法人の立ち上げからスタートする場合は、金融機関からの信用がありませんので、例えば日本政策金融公庫等に相談して、低金利融資制度や雇用対策の資金の活用を検討するのも一案です。また、地元の商工会議所や商工会等も相談窓口として有効です。きっと心強い味方となってくれることでしょう。

事業計画を立て、事業所設置、備品や物品の準備、職員を確保する

上記と並行して、指定申請に向けた事業計画を立てます。

事業計画には「設備整備計画」「人員採用計画」「収支(資金)計画」「サービス計画」等が考えられます。どれも非常に重要なものばかりですが、人員採用計画と収支・資金計画は特に重要です。

計画を立案せずに、行き当たりばったりで実行しても決してうまくはいかないと心得ましょう。

計画は単年度だけでなく、3年程度の中期経営計画を立てます。一昔前は5年・10年といった「長期計画」も重要視されてきましたが、感染症の蔓延や自然災害、経済情勢の変化等、不確実性の高い時勢において、長期計画の立案はあまり意味をなさないといわれるようになっています。

事業計画については、主として下記の内容を盛り込むとよいでしょう。

事業所の設置

訪問系であれば、例えばマンション等の賃貸物件でも事業は可能ですが、設備要件は満たす必要があります。

事務室は専用区画であることが必要です。訪問介護や居宅介護支援事業と併用の場合、各事業のスペースが明確に区分されていなければなりません。これは「会計」にもあてはまります。介護保険法上、1法人で複数の事業を行う場合は、各事業ごとに会計を明確に区分しなければなりません。

また、設備は事務室だけにとどまらず、面談室や倉庫、洗面所、洗濯場、感染予防のための汚物処理室や消毒のためのスペースなどを確保します。地域によっては、後述するように自動車での移動が必要なケースもありますが、その場合は駐車場の確保も必要です。

備品、物品の準備

備品や物品には、パソコンや電話機、スマートフォンや携帯電話、FAX複合機、筆記具やコピー用紙などの事務消耗品、介護ソフトの手配も必要です。

さらに、実際に訪問看護に出かける際に必要な衛生材料や薬品等の物品、移動に必要な車両(自転車・自動車等)も考慮しなければなりません。

職員の確保

事業計画に必要なこととして、資金計画のほかに「人材採用計画」も同じくらい重要であることは、先ほども触れた通りです。

訪問看護ステーションを運営するには、看護職員(保健師、看護師又は準看護師)を常勤換算で2.5人の配置が義務付けられています。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も必要に応じて配置します。

採用媒体には、ハローワークや各種求人広告媒体、エージェント等さまざまあります。資金との相談になりますが、複数の媒体を組み合わせて活用することが必要でしょう。

訪問看護師を確保するのは簡単ではありません。その事業所も大変苦心されて採用活動を行っているのが現状です。採用活動は資金の兼ね合いもあるため悩ましい問題ですが、極力前倒しで実施しましょう。特に管理者候補となる方については、開設予定の数か月前には確保するのが理想です。開設準備には、管理者候補の方の存在が絶対不可欠になります。

また法人によっては、職員の異動により確保する場合もあります。その場合は、なるべく早めにその旨を対象者に伝え、開設準備に参画していただきましょう。もちろん、人事異動によって、異動前の部署が混乱することのないように調整することは言うまでもないことです。

さらに、保険請求を行うための事務職員の雇用も重要ですが、保険請求に精通しない職員を配置すると返戻が多発しかねません。実際、事務職員が定着せずに訪問看護師が請求業務を行っている事例もあります。ケアチームのような請求代行業者に依頼するのも一案でしょう。

書類を整備する

訪問看護事業の運営や利用者に対する訪問看護サービス提供等に関する記録、事業の状況を適正に維持するための記録様式や規程等を整備します。

ⅰ)訪問看護サービス提供や事業運営に必要な書類

・事業所の管理記録(事業日誌、職員の勤務状況・給与・研修等に関する記録、月間・年間の事業計画表、事業実施状況表)

・市町村等との連絡調整に関する記録

・利用者との契約に関する書類(契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書、利用料金表等)

・指定訪問看護に関する記録(訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等に対する情報提供書(医療保険)等)

・会計経理に関する記録

・設備・備品に関する記録

・運営規程(事業の目的・運営の方針、従業者の職種・員数・職務内容、営業日・営業時間、指定訪問看護の内容及び利用料その他の費用の額、通常の事業の実施地域、緊急時等における対応方法、その他訪問看護ステーションの運営に関する重要事項)

・事業所のパンフレット 等

ⅱ)事業運営に必要な規程等

・組織諸規程(個人情報保護規程、旅費規程、学会・研修会参加規程、慶弔見舞金規程、福利厚生に関する規程、車両管理規程、防災防火管理に関する規程)

・人事諸規程(就業規則、育児休業規程、介護休業規程、再雇用規程、給与規程、退職金規程、人材評価規程)

・業務諸規程(感染症に関するマニュアル、交通事故に関するマニュアル、クレーム対応マニュアル等)

・BCP(感染症・自然災害)や虐待防止措置規程等の策定

が考えられます。

これらが整備されていないと、サービス提供に支障をきたすばかりでなく、基準違反となり行政指導・処分を受けることになりますので、十分認識しなければなりません。

賠償責任保険に加入する

業務の実施に際して、利用者やその家族等に対してけがをさせてしまったり、器物を破損してしまったりした場合は、法律上の賠償責任を負うことになります。

しかしその内容によっては、賠償金額がとてつもない高額に及ぶ場合があります。それを補償するために、損害賠償責任保険への加入が義務付けられています。

指定申請の際に、賠償責任保険の写しの提示を求められます。間に合わない場合は、申し込みが確認できる書類で代用することも可能ですが、地域の担当課の判断によります。

自己判断せずに、役所と協議しましょう。

指定申請をする

訪問看護事業の指定は、介護保険と医療保険に大別されます。

前者は、介護保険法に基づく都道府県知事または指定都市・中核市市長による居宅介護サービス事業者および介護予防サービス事業者としての指定となります。後者は、健康保険法に基づく地方厚生(支)局長による訪問看護事業者としての指定となります。

介護保険法の指定を受けると健康保険法による指定をみなし規定で受けることができます。

介護保険法のみの指定を希望する場合は、「指定訪問看護事業を行わない旨の申請書」を地方厚生(支)局長へ提出する必要があります。

この手続きを失念するとサービスの開始が遅れてしまい、売上が立たなくなるため収支に悪影響を及ぼすことになりますので、細心の注意が必要といえるでしょう。

なお、開設後は6年ごとに指定更新の申請もしなければなりません。

加算等の体制の届け出をする

事業者は、介護報酬で定める届出事項(加算体制等)、サービス計画策定・支給限度額管理上で必要となる事項を都道府県等に届け出ます。医療保険の場合、健康保険法における届出事項(加算体制等)を地方厚生(支)局長に対して届け出をすることになります。

指定申請も同様ですが、加算体制の届け出を失念すると加算が算定できなくなります。

実際、この届出をせずに加算を算定し、のちに国保連等から指摘を受けて取り下げを余儀なくされるという事例も多発しています。重々注意しましょう。

業務管理体制の届け出をする

事業者には、業務管理体制の整備が義務づけられており、指定前後に届け出を行わなければなりません。

業務管理体制の届出の目的は、法令遵守の義務の履行を制度的に確保し、指定取消につながるような不正行為を防止するとともに、利用者の保護と介護事業運営の適正化を図るためにあります。

業務管理体制の届出は、事業所数によって若干変わります。事業所数に応じた事項を、事業実施地域等に応じて国・都道府県(指定都市)に届出するとともに、変更があった場合は改めて変更の旨の届出が必要です。

事業を開始する

指定申請が承認されるまでに、通常1~2ヶ月程度かかります。

開設準備と同時に、訪問看護ステーションのPRを行うことは、スムーズに事業を開始するためにも非常に有効です。準備期間中、あるいは事業開始後に、医療機関や居宅介護支援事業所などとも連携を図っていきましょう。

また、職員の研修も早期から行い、訪問看護サービスの質を担保しておくことも大変重要です。

まとめ

訪問看護ステーションを立ち上げるには、事前準備を抜かりなく行うことが不可欠になります。準備することは山ほどありますが、開設にあたっては漏れなく準備することで、成功へと一歩近づけるでしょう。

オープニングスタッフは、事業を船出するための大切な「クルー」になります。皆さんが心を一つにして真摯にサービスを提供すれば、訪問看護サービスはきっと質の高いものとなり、利用者や事業所等からも支持されるでしょう。

今回ユニケアとして、訪問看護ステーションの立ち上げについて取り上げると、場合によっては「地域にライバルを増やしてしまうのではないか」と思ったりしました。

しかし私たちは、そのような次元の低いことを考えてはいません。

日本全国に訪問看護ステーションはもっともっと必要であり、訪問看護師を目指す方々が増えてほしい。

純粋にそう考えたので、あえて取り上げようと思った次第です。

これから訪問看護ステーションの開設を検討されている皆さんに、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。 今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。