介護事業にも大いに役立つ!「エフェクチュエーション」という考え方

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

この記事を書いているのは11月下旬、2023年も残り1か月余りとなりました。
月日の経つのはとても早いと感じる今日この頃です。

2023年を総括するにはまだ気が早いですが、残りの時間を有意義にそして元気に過ごしていきたいと考えます。

本日のテーマ

コロナ禍をきっかけに、私たちが取り巻く周辺環境は不確実性がますます高まってきたと実感できます。
この状況を「VUCA」とよんでおり、社会やビジネスの未来予測が困難の様相を呈していることを示します。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた言葉です。

何かものごとを始めようと思ったとき、最初から十分な資源が整っているというケースは非常に稀なことではないでしょうか。

私たちユニケアでは、訪問看護サービスと障害者グループホームを運営しておりますが、最初から準備万端で完璧にスタートできたわけではありませんでした。
開設後も紆余曲折を繰り返し、今何とか事業を運営してきております。
これについては、皆様もこれまで培われたご経験から考えても、ご納得いただける話ではないでしょうか。

そんな中、最近「エフェクチュエーション」という言葉がよく使われるようになりました。
エフェクチュエーションとは、「過去に起業やスタートアップに成功してきた人がどう考えて行動してきたのか」を分析した考え方です。
今回は、ビジネスの未来を創造する手法の一つとして注目されるこの「エフェクチュエーション」という言葉についてご紹介いたします。
言葉自体は難しいかもしれませんが、この考え方は私たち訪問看護ステーションだけでなく、すべての介護事業所にも役に立つ知識であると思います。
ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

エフェクチュエーションとはどういうものか

「エフェクチュエーション」は、バージニア大学ビジネススクールのサラス・サラスバシー教授が、2008年に提唱した「意思決定理論」です。
先程も触れました通り、成功する起業家・優秀な起業家の思考プロセスや行動であるといわれています。

「意思決定」というと小難しく聞こえてしまうかもしれませんが、要は「この方法を選択しよう」「この方針が最適だ」と判断をすることです。
意思決定という言葉はビジネス用語ではありますが、私たちも日常生活において様々な「意思決定」を行っていると思います。

例えば、はじめていく目的地があるとして、どのような手段で、どのルートで行けば効率よく辿り着くことが出来るかを考えることがあると思います。
いろいろ考えた上で、最終的に「この手段とルートで進もう」と判断して移動することは、まさに「意思決定」そのものです。

主婦の方が調理や洗濯、掃除などの家事をされるのも、いろいろ考えながら効率よく行動されているのではないでしょうか。これも「意思決定」といえるでしょう。

小難しく聞こえてしまう「エフェクチュエーション」という言葉ですが、実は私たちの日常生活にも密接に関係する話であるといっても過言ではありません。

エフェクチュエーションが注目される背景

近年、エフェクチュエーションが注目されてきた背景としては、以下のことが挙げられるでしょう。

先程も触れましたように、不確実性の高い世の中では、中長期的に目標や計画を立てて仕事を行っていくことが困難になってきました。
特に介護や医療の業界では、定期的に法改正や報酬改定が行われ、制度の変更に伴う経営上の影響は結構あります。
筆者はこれを「制度変更リスク」といっています。

現在は高齢者が増え続けており、当面は介護市場自体が縮小することはないでしょう。
しかし、日本は確実な人口減少時代に突入して久しく、20年後・30年後に今の介護市場が変わらず伸び続けるのかといえば、そうとは言い切れません。

経済情勢の変化や消費者の価値観の多様化、企業のグローバル化、多角化などによって、事業計画を立てて実行していく「目標設定型アプローチ」だけでは、なかなか乗り切ることが困難になってきています。
ビジネス環境は急速に変わり、未来を予測することはもはや不可能といってよいでしょう。

成功した起業家たちは、一般的に「論理的」とされるような、分析と予測から選択肢を導き出す論理はあまり重視せず、自分たちが望む未来を実現するために「この状況で、自分たちに今すぐできることは何か」という論理で思考を組み立てているケースが多いことが、研究により明らかになってきました。

この「今のこの現状で、自分たちにできることは何か」という発想が、まさに「エフェクチュエーション」ということなのです。

基本的にエフェクチュエーションは、アントレプレナーシップ(起業家精神)に関する考え方ですが、諸外国に比べあまり起業が活発ではない日本においては、「成熟企業」の間で関心が高まっているようです。

「成功する起業家たちの思考パターンを学べば、自社の新規事業の成功率を高められるのではないか?」と。

エフェクチュエーションの5つの原則

エフェクチュエーションには、5つの基本原則があります。
どれも、介護事業を運営する経営者や、サービスを提供するスタッフの皆さんにとっては参考になることが多いのではないかと筆者は思っております。

手中の鳥の原則

新しい方法ではなく「既存の手段」を用いて、新しい何かを生み出すことです。
新しい方法を選択する前に、周辺にある既存の手段や設備などをいかに有効活用するかを考え、価値を生み出すことです。

許容可能な損失の原則

仮に損失が生じても致命的にはならないコストを予め設定することです。
資本が少ないのに高い固定費をかけて出店し、立ち行かなかった時のダメージは大きいが、ECサイトへの出品や知り合いの店に商品を置かせてもらう形であれば、負担を軽減しつつビジネス展開ができるかもしれません。

物事を成すには、ある程度リスクをとっていくことは必要です。
しかし、資源には限りがあります。その中で無理をした結果立ち行かなくなっては元も子もありません。
「いくらまでなら損が出ても凌ぐことが出来るか」を考えて行動することが必要であると唱えています。

クレイジーキルトの原則

「キルト」とは「つぎはぎの布」という意味です。
形や柄の違う布を縫いつけて1枚の布を作るクレイジーキルトのように、顧客や競合他社、協力会社、従業員などのさまざまな繋がりを「パートナー」と捉えて、一体となってゴールを目指していくことをいいます。

自身に関与する多くの人々、時には競合をも巻き込んでパートナーシップを築くことができれば、新しい事業を拡げていけるという考えです。

飛行機の中のパイロットの原則

先述の4つの原則を網羅した原則でもあり、状況に応じて臨機応変な行動をすることをいいます。

飛行機内では、想定外のことが生じて慌てている暇はありません。
介護サービスでも、想定しないトラブルが生じることは多々あります。
そこでジタバタするのではなく、その場に応じて臨機応変に対応することの重要性を説いています。
ビジネスの世界でも、不確実な状況においては、社内外の人間に働きかけて「今」をコントロールしながら「未来」に向けて舵取りしていくことが重要であるといえるでしょう。

レモネードの原則

使い物にならない欠陥品でも工夫を凝らして、新たな価値を持つ製品へと生まれ変わらせるという考え方。
一見すると失敗に思えても、発想の転換やポジティブシンキングで「ピンチ」を「チャンス」に変え、難局を乗り切れる考え方。

有名な話として、亀田製菓の「柿の種」の事例があります。
「柿の種」という商品は有名ですが、実はこの商品がもともと「想定外のもの」であったといいう話は結構有名です。
あられを製造する際に使用する金型を、従業員が誤って変形させてしまったそうですが、どうにもならずそのまま使用してできた商品を販売したところ、それがお客様からの絶大な人気を得たのです。「柿の種に似ている」との声が相当あがったそうです。
これをヒントに、その後商品改良を重ねて、今やだれもが知るロングセラー商品となったのです。

ピンチを「ピンチ」と捉えるのではなく、むしろ「チャンスに変える」という発想は、介護サービスにおいても大いに参考になると思います。

まとめ

エフェクチュエーションは、ビジネスだけでなく日常生活にも大いに役に立つ考え方です。
「資源がない」と嘆き、他社と比べて羨むだけでなく、自分の身の回りにあるものを「貴重な資源」と捉え、活用していくことは大変重要です。
とは申しましても、人間はついそう考えてしまう傾向にありますが・・・

2024年度は介護報酬・診療報酬・障害福祉サービス報酬の「トリプル改定」が予定されています。今回はこれまでにない大きな改定となる公算が強いといわれ、事業者もそれに備えていく必要があります。

ただ、今回の改定には盛り込まれずにキャリーオーバーとなっている論点もたくさんあり、今後介護業界を取り巻く環境は大きく変化を遂げること間違いなしです。

国が介護報酬や診療報酬をこれまで以上に大幅増となることが、中期的に見てもなか中見込めないと思います。
そういう状況下であっても、介護事業者や従業者は成長を遂げていく必要があります。
外部からの支援がなかなか得られにくいのであれば、「今ある資源」でやりくりしていくことが重要です。

今回は「エフェクチュエーション」という考え方を取り上げましたが、今後介護業界でご活躍される皆様にとって少しでも有益な情報となれば幸いです。

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
今後のユニケアの活動に、どうぞご期待くださいませ!!