2023年度介護事業経営実態調査の結果が公表!

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

11月に入っていきなり暑い日が続きましたね。

東京では、11月に夏日を記録したのが3日もあり、観測史上初とのこと。11月に半袖を着て行動することになろうとは・・・

それがここへきて急に冷え込んできたので、身体がなかなか順応しきれません。

朝晩は本当に寒く、この記事の執筆をはじめた日には、薄手のダウンジャケットを着て外出した位です。

マスク着用は「個人の判断」となって数ヶ月経ちましたが、最近マスクを着用する方が増えてきているように思います。

筆者も体調管理上、マスクを着けて出かけるようにしています。

どうか皆様、体調にはご留意くださいませ。

本日のテーマ

去る2023年11月10日に「社会保障審議会介護給付費分科会」において、本年度の介護事業経営実態調査の結果が公表されました。

これは次回の介護報酬改定において極めて重要な指針になるのをご存知でしょうか?

今回は、介護事業経営実態調査の結果について「サービス種別」ごとに取り上げ、今後の介護報酬改定にどのように影響を及ぼしていくのかについて、解説してまいります。

皆様、どうか最後までお付き合いくださいませ。

調査の概要

上記のスライドの通り、この実態調査は次回(2024年度)の介護保険制度改正・海保報酬の改定の基礎資料を収集する目的で行われています。

具体的には、各サービス事業所において令和4年度の経営成績や財政状況(決算)がどのように推移しており、過去の数値とどのように変化しているのかを探ります。

そして、「利益が上がり過ぎている?」傾向が強いサービス、横ばい傾向のサービス、利益低下がみられるサービスを洗い出し、次回の報酬改定において適正化を図ろうとするものであります。

もちろん、利益が上がりにくい報酬設定になっているとされたサービスは、プラス改定になる可能性はありますし、より重点的に対処すべき事象(介護職員の処遇改善等)についてはテコ入れ(プラス改定)がなされるでしょう。

しかしそもそも「適正化」とは、平たくいえば「儲け過ぎのサービスは報酬を削る」ということです。 サービス事業経営上は、プラス改定だけに着目せず、むしろ「マイナス」部分に目を向けるべきでしょう。

全サービスの傾向

ここで紹介されているのは「収支差率」です。

収支差率とは、社会福祉法人会計と通常の会計と若干異なりますが、簡単にいうと「税引き前当期利益(一般法人の会計でいう『特別損失』がない場合」と考えてよいと思います。

上記の表は、2022年度の決算とその前年(2021年度)を比較し、どの程度増減があったのかを示すものです。

全サービスの収支差率の平均は2.4%となり、前年対比0.4ポイントの減少という結果となりました。

個人的な考えではありますが、この結果だけを見ればサービス事業所全体が「減益」となっていることは間違いなさそうです。 減益となっているのですから、社会保障サービスの持続可能性を高めるには、少なくとも介護報酬を「プラス改定」にする必要があると強く感じます。

サービスごとの経営実態について

それでは、この実態調査の結果から見える傾向について、サービスごとに注目してみましょう。字数の都合上、ここでは代表的なサービスに絞りご紹介いたします。

●居宅介護支援

居宅介護支援については、前年度比で1.2ポイントのプラスになりました。

要因はいろいろ考えられますが、2021年度改定で基本報酬をはじめとして、全体的に報酬が増えたことは大きいでしょう。

また、居宅介護支援費の逓減性の緩和も起因しているかもしれません。

居宅介護支援事業が全体的に「増益」体質になっていることは、大変喜ばしいことです。

もともと居宅介護支援は、事業として成立できる報酬体系になっていないとまで評価されていました。

最近では、特定事業所加算を算定する事業所も増えてきております。

しかし、全く楽観視することはできない状況です。

そもそも全国的に介護支援専門員不足、そして高齢化に歯止めかかかりません。

そこを何とかしていただかなくては困るわけです。

介護支援専門員の研修の内容を変えていこう、という動きがあります。

それは結構なことなのですが、どうも上記のような根本的な問題を解決しようという動きになっているように思えてなりません。

今回は見送りとなりましたが、増益の状態が続くと「居宅介護支援費の自己負担制導入」議論が加速する可能性はあります。

国は「儲け過ぎ=報酬カット」に走りがちですので、この意味においても楽観視することはとてもできません。

●訪問介護

訪問介護については収支差率が7.8%となり、前年度比2.0ポイントの上昇となりました。

見た感じでは、事業所の利益が単純に高いように思えます。令和元年度が2.6%であったので、かなりの上昇率です。

訪問介護事業は、介護職員処遇改善加算(特定・ベースアップ含む)の算定率が最も高いサービスといわれています。基本報酬も若干上がったことも奏功しているかもしれません。

ただ、訪問介護事業も厳しい状況におかれているのは、居宅介護支援と変わりません。

第220回介護給付費分科会において、訪問介護事業が俎上に上がりましたが、訪問介護員の求人倍率は15.53倍であると説明されています。

事業所の約8割が「人手不足」と認識しているとのことですが、現実的には「ほぼすべての事業所」と読み替えて差し支えないと思います。

訪問系サービスは、収入の多くが人件費で占められます。

前述の通り、処遇改善系の加算は次回改定でも算定率が上がると目されていますので、場合によっては更なる上昇も考えられるかもしれません。

しかし「7.8%」という数字は、次回改定でマイナス改定になり得る領域です。

訪問介護員自体もそうですが、高齢化も叫ばれて久しい状況ですので、今後この収支差率の結果が次回改定にどう影響するかを注視する必要があります。

●訪問看護

訪問看護の収支差率は、5.9%となり、前年度対比で1.3ポイントのマイナスとなりました。

当法人は訪問看護ステーションを運営しておりますが、この結果が実感できる部分が多々あります。

訪問介護は大幅なプラスになっているのに、訪問看護はマイナスという結果に・・・

介護士と医療職(看護師・セラピスト)とで違いはあるものの、同じ訪問系サービスなのに、両者は大きな差となりました。

筆者なりに分析しますと、「セラピストによる訪問看護費の削減」は大きな要因の1つかと思います。

ひと頃に比べるとだいぶ減ったものの、それでもリハビリ中心の訪問看護ステーションも存在はします。

国は訪問看護ステーションを「あくまで看護師のサービスである」ということを打ち出したいようで、前回も前々回もリハビリ系の報酬を下げました。

筆者個人としては、訪問リハビリサービスが充実しているとはとても言えず、かつご利用者様のニーズが非常に高い現状を考えると、逆行しているように思えてなりません。

リハビリサービスが大半になってしまうのは問題ですが、訪問看護においてリハビリ提供する数が一定数あるのは自然なことではないでしょうか。

また、訪問看護は訪問介護と異なり、処遇改善加算の恩恵が受けられません。

処遇改善加算の対象外であることも、訪問介護と比べて収支差率がマイナスになった要因の1つといっても過言ではないでしょう。

訪問看護ステーションも、慢性的な人手不足の問題を抱えています。

在宅ニーズがますます高まる中で、人手不足を解決するためには処遇改善が欠かせません。もちろんその他の要因があるのは理解していますが、ここは次回改定でどう変わるのかを注目しなければなりません。

●通所介護

通所介護の収支差率は1.5%となり、前年度比で0.8ポイントのプラスとなりました。

ちなみに、通所リハビリテーションは1.8%であり、同2.1ポイントのプラスでした。

こちらも前回改定で基本報酬がプラスとなり、処遇改善加算の算定率も上がっていることが要因と思われます。コロナ禍による通所介護の利用控えは著しく、コロナ加算の特例を設けて支援したところですが、もしかしたらそれも増益の一因となったかもしれません。

しかし通所介護は、過当競争の様相を呈しているといって久しい状況です。

他者にない特色をもって対応しないと、稼働を高めていくことが難しいというのが実態でしょう。

通所介護はここ何回か、本当に「いじめ」か思う位槍玉にあげられ、マイナス改定が続きました。筆者個人としては、次回の改定もマイナス改定とはならないのでは、と考えております。

国は新たに「複合型(訪問介護と通所介護との複合)サービス」を創設する予定になっていて、ほぼ決まりといってよい状況です。

大いに期待をしておりましたが、どうやらその期待とは違う内容となりそうです。

また、入浴介助加算Ⅱについても、よくわからない改定が実施されそうなのです。

筆者は憤りを感じております。

本件については、今月の本コラムでもしっかり取り上げてまいりたいと思っております。

まとめ

今回は、在宅系サービスに絞ってご紹介いたしましたが、全体のサービスにおける報酬改定率の基準である「収支差率3.0%」を下回っていることを考えただけでも、全体的な報酬改定は「プラス」にシフトしそうです。

しかし、サービスごとに考えると、また変わってきます。

重要なのは、常日頃からこのような情報をしっかりキャッチアップをしていくことです。

今回は診療報酬・障害サービス報酬の改定とも重なります。

収入の大半が保険収入であることを考えると、報酬改定はイコール経営に大きく(ものすごく)影響を及ぼします。

このような情報は常に把握し、次の一手をどう打つべきかを考えなくてはならない、ということはこれからも変わりません。

今回もお読みいただき、ありがとうございます。 次の投稿もどうぞ楽しみになさっていただければ幸いです。