介護報酬改定により示された「テレワークの推進」

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

4月に入り、暖かい日が続いたかと思いきや、春の嵐が訪れ桜も結構散ってしまいました。

皆様、お花見はされましたか?

筆者は今回あきらめました。別に深刻な出来事があったわけではなく、タイミングが合わなかっただけなのですが・・・

その代わり、先日NPB(プロ野球)観戦のため、家族で東京ドームに行ってきました。天気もよく、あちこち並ぶ桜の木を眺めながら移動できたので、これを花見の代わりにしようかと・・・

冬も終わって、完全に春に切り替わりましたね。朝起きてもすでに外は明るく、お出かけするにも大変気持ちのよい季節です。

ユニケアスタッフも、毎日元気にご利用者様への訪問を行っています。

春の日差しのように、皆様に明るい気持ちをもってサービスを提供できるように頑張ります!

本日のテーマ

2024年介護報酬改定がスタートしましたが、非常に混乱していますね。

総合事業(訪問型サービス・通所型サービス)など、地域によってはサービスコードが決まっていないところもあるそうです。

この状況では、ケアマネさんも提供票が作成できませんし、重要事項説明書の更新やご利用者様への説明もできません。

役所も非常に大変なのは理解できますが、何とかしてほしいものですね。

処遇改善加算についても6月に一本化され、4/15の提出締め切りに向け準備されていることと思います(このコラム掲載時には、もう締め切りしているかも)。

本当に改定時期は準備が大変ですが、これは乗り切っていくしかありませんね・・

今回の介護報酬改定で重視されている施策の一つに、「生産性の向上」があります。

これは今回の改定における、最大の合言葉といってもよいかもしれません。

なかでも、良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくりが重要視されていて、その具体的な施策として今回「テレワークの推進」を掲げています。

これまで、テレワークの推進についてはかなり抽象的な通知しかされていませんでしたが、このたびかなり具体的にその内容が示されることとなりました。

今回は、3月29日発出された通知に基づき、介護現場における「テレワークの考え方」について取り上げ、皆様と一緒に考えてまいりたいと思います。

是非最後までおつきあいくださいませ。

介護における「テレワーク」の基本的な考え方

今回示されたのは、介護現場におけるテレワーク業務について、どのサービスにおいてどの程度認められるのかについての具体的な考え方です。

介護現場のテレワーク推進について、筆者は大きく分けて3つの考え方が挙げられると存じます。

・サービスごと、職種ごとにある程度テレワーク業務の切り出しがなされたこと。

・「書類作成等の事務作業」がメインであること。利用者様等との面談やアセスメント等についても、事前の準備や調整に基づいてなされる前提でテレワークを認めること。

・従業者のうち、人員基準で必要数が定められている職種について、テレワークの範囲が示されたこと。具体的には、人員配置基準以上の従業者について、その「基準を上回る部分」についてテレワークを実施することを認めたこと。

となります。

もともとテレワークについては、事業所の「管理者」について可能であることが示されていました。

しかし今回、それが介護現場の方についても示されたことは、大きな一歩ではないかと思われます。

なお、管理者であろうが介護現場職種であろうが、個人情報の適切な管理を前提に、介護事業所等の管理上支障が生じない範囲内において認めるというスタンスは、踏襲されることになります。

介護事業所等でのテレワークの「基本的なルール」

厚生労働省は、介護事業所等の従業者によるテレワークについて、基本的なルールを以下のように詳しく示していますので、引用させていただきます。

①人員配置基準等で定められた必要数以上の従業者は、基準を上回る部分について、個人情報の適切な管理を前提に、テレワークを実施しても差し支えない。
※例えば常勤換算3.0人が必要で実際の配置数が常勤換算 3.2 人の場合、常勤換算0.2人の部分で従業者がテレワークの実施が可能。
②基準上の必要数を上回らない部分については、利用者の処遇に支障が生じないと認められる範囲内であれば、テレワークを実施しても差し支えない。
※例えば常勤換算3.0人の配置が必要で、1人がテレワークを実施し、サービス提供場所(事業所・施設等及び利用者の居宅等)で業務に従事する従業者数が3.0 人を下回る場合(例えば、常勤換算2.8 人となる場合)でも、 利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、テレワークを実施しても差し支えない。
③人員配置基準等で常勤換算職員数や常勤職員数等の具体的な必要数が定められていない職種については、 個人情報の適切な管理を前提に、当該職種の職責を果たすことができるのであれば、人員配置基準上は、業務の一部をテレワークにより実施しても差し支えない。

上記のようなルールが明記されています。

要は、常勤換算人数を上回っていることが前提で、余剰部分についてテレワークが可能であること、人員配置基準を下回る場合も支障がなければOKだが、原則としてテレワークが認められない職種が存在すること、個人情報管理は当然ながら絶対条件!ということになるようです。

介護現場におけるテレワーク実施の留意点

介護現場においてテレワークを推進していくには、どのようなことに留意する必要があるのでしょうか。

まず、テレワークを行うことにより、事業所等を不在(あるいは手薄)の状態となった場合でも、実務に支障がないような体制を組む必要がある、ということです。

これは、各事業の運営基準を遵守することはもちろん、各職種の責務・業務をしっかり果たすことが前提であるということになります。

テレワークを実施することで、基準を満たすことが出来なくならないよう、重々管理する必要があります。


次に、テレワークを実施できる日数・時間数は、サービスの種類や事業所等の実態等に応じて判断・管理するということです。


そのためには、毎月のルーティーンをある程度把握し、例えば終日不在・半日不在でも、ご利用者の処遇に支障が生じないかの確認・判断が重要です。

「この日は終日書類作成をする日」「この日はオンライン面談を行う日」「この日は現場で仕事をする日」など、可能な限りテレワークを行う日時を決めておくことで、テレワークで実施したとしてもご利用者様の処遇に支障はなくなるでしょう。


そのためには、テレワーク実施者と現場従業者との間で、適切に連絡が取れる体制を確保する。連絡体制がしっかり構築されていれば、テレワーク実施を推進できる可能性は高まります。


テレワーク実施者の労働時間の管理等については適切な労務管理を行うことも重要です。関連して、テレワーク実施者と現場出勤者との間で、不平等が生じないようにすることも必要です。そうでないと、なかなかテレワーク実施を推進することは難しくなるでしょう。


利用者・入所者との面談・相談やアセスメント等のための観察等の業務について、コロナ禍により情報通信機器を駆使した対応が進んでおり、国も推進の動きがあります。

ただ、そのためにはいくつかの配慮が必要です。

例えば、相手方の情報通信機器の整備状況やIT操作のリテラシーも関連します。相手方がPCやスマホをお持ちでなかったり、ネット環境が整っていなかったりすれば、相手方の表情や反応を直接確認することは難しくなるでしょう。

これは、ご利用者様自身やご家族の状況に左右されることです。

中には「直接会って面談を受けたい」とお考えの方もいらっしゃることでしょう。

意思疎通の上で一定の制約を解消することに加え、ご利用者様及びご家族様の理解を得て行うなど、適切に対応することが重要です。ご本人様が対応できなくても、家族側でも操作環境が構築でき、家族の同意がある場合には、テレワークによる対応でも利用者の処遇に支障がないと考えられます。

テレワークの実施について職種ごとの考え方(人員配置基準を下回る場合)

今回の通知では人員配置基準を下回る場合のテレワークの実施について、職種ごとに詳細な留意事項が示されています。

主なものを以下に紹介します。

☆介護職員・看護職員について

書類作成等の事務作業は、テレワークで実施しても利用者の処遇に支障がないと考えられるが、職員が事業所等に不在となることで利用者の処遇に支障が生じないよう十分留意する。

利用者を直接処遇する業務及び直接処遇に関わる周辺業務は、原則テレワークでの実施は認められない。

とされています。

☆理学療法士・作業療法士・言語聴覚士について

書類作成等の事務作業は、テレワークで実施しても利用者の処遇に支障がないと考えられる。

面談等の業務は、意思疎通が十分に図れる利用者について、本人・家族の理解を得て行うなど、適切に対応する。

リハビリテーションの実施等の利用者を直接処遇する業務は、原則として、テレワークでの実施は認められない。

テレワークの実施日時及び時間数を決める上では、施設・事業所全体で提供するリハビリテーションの時間が減少しないよう留意する。また、利用者の希望する訓練実施日に影響しないよう留意する。

と示されています。

☆介護支援専門員について(居宅介護支援・介護予防支援)

・書類作成等の事務作業については、テレワークで実施しても、利用者の処遇に支障がないと考えられる。

・居宅サービス計画の作成等をテレワークで行うに当たっては、適切なアセスメントやモニタリングが行われた上で実施する必要があることに、留意する。

・運営基準上義務付けられている少なくとも1カ月に1回(介護予防支援は3カ月に1回)利用者に面接することにより行うモニタリ ングについて、オンラインで行う場合は、利用者の同意を得るとともに、利用者がテレビ電話装置等を用いた状態で十分に意思疎通を図ることができることを確認する。

・サービス担当者会議をオンラインで行う場合は、家族含む関係者間で対象者の現状を共有できるよう、また利用者・家族との意思疎通が十分にとれるよう、留意する。

と記されています。

一部の職種のみ取り上げていますが、基本的には、

・書類作成等の事務作業については、テレワーク対応は可能とみられる

・面談・モニタリング等は、情報通信機器を使用することから、相手側の環境が十分整っていて同意が得られていれば、推進することは可能。

・直接処遇する業務(身体的介護や医療行為、リハビリ等)は、その性質上テレワークはNGである。

の3つに集約されるでしょう。

●まとめ

テレワークの実施にあたっては、ご利用者様の処遇のほかに管理者・現場従事者とも個人情報の適切な管理が前提となります。

個人情報の管理を十分行った上で、テレワーク業務が可能な業務を事業所内で切り出し、実施しても実際の業務に支障がなければ、むしろ介護業界にてテレワークは推進すべきかと筆者は考えます。

他業界においてはすでに取り組んでいるところも多いのが実情です。

簡単にはいかないのは百も承知ですが、それでも工夫を重ねて推進することで、介護現場で働く方への「働き方改革」が少しでも実現できるのではないでしょうか。

今後の介護業界では、「生産性向上」への取り組みが必要不可欠になります。

テレワーク実施の検討は、介護事業の生産性向上にも一役買えるのではないかと思います。

今回は、介護現場における「テレワークの推進」について取り上げました。このコラムが、スタッフさんが働きやすい事業所づくりに少しでもお役に立てば幸甚です。 今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。