2024年介護報酬改定を占う!介護事業経営概況調査の話

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

つい先日、ユニケア葛西事業所において節分イベントを開催しました。

ここには駄菓子屋がありまして、多くのかわいい子どもたちが買いに来てくれてくれるのでとてもうれしく思っています。

このイベント、名づけて「ユニ天堂豆まき大会」!どこかで聞いたことがあるネーミングですね(笑)

今回も多くのお子様たちにご参加いただき、大いに盛り上がりました。ご興味がある方はどうぞ「活動報告」をご覧くださいませ。

こういう季節の行事はとても大切です!ユニケアもこのようなイベントをこれからも開催できるようにしたいと思います。

少し暖かくなり、確実に春が近づいてきているのが感じられます。

しかし油断すると体調を崩しがちですので、健康に留意し頑張ってまいりましょう!

本日のテーマ

2024年度の介護報酬改定まで、あと1年余りとなりました。

昨年末あたりから、介護報酬改定の詳細について議論する場である「社会保障審議会介護給付費分科会」が頻回に開催されています。

いよいよ本格的な議論が展開されようとしております。

そんな中で、さる2月1日の分科会で最新の介護事業経営概況調査の結果(案)が示されました。

この調査は、簡単に申しますと介護サービスごとの収支状況がどう推移しているのかを調査したものです。

次回の介護報酬改定を議論する上で、この調査結果がかなり重要なファクターになります。

今回は、この調査でどのような結果が導かれ、介護報酬改定にどう影響していくのかについてお伝えしたいと思います。ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

今回の介護事業経営概況調査の概要

この調査は、介護報酬改定に先駆けて毎回実施されております。

2020年度と2021年度における、各介護サービス事業所(法人)の決算状況を調査しています。

これを通じて、介護サービスにおいて収支状況がどうなっているかを可視化します。

来る2024年4月の介護保険制度改正・介護報酬改定の方向性を検討するための、極めて重要な情報となるのです。

今回の調査の概要については下記の通りとなります。

上記の表に記載の通り、

・ 調査客体数:16,830施設

・有効回答数: 8,123施設・事業所(有効回答率:48.3%)

・ 調査項目:サービス提供の状況、居室・設備等の状況、職員配置・給与、収入の状況、 支出の状況 等

となっております。

事業収支と「コロナ施策」との関連

このあと詳しく触れますが、本調査では「収支差率」という言葉が使われています。

収支差率 は「(介護サービスの収益額 - 介護サービスの費用額)/ 介護サービスの収益額」の式にて計算されます。

介護事業収益は、介護報酬による収入(利用者負担分含む)、保険外利用料収入、補助金収入(コロナ補助金及び運営費に係るもの) の合計額と定義され、介護サービスの費用額は、介護事業費用、借入金利息及び本部費繰入(本部経費)の合計額

一般企業で置き換えますと「経常収益・費用(経常収支)」とほぼ同じと言ってよいでしょう。

経常収支は、介護の本業の収支から借入金や補助金等の「営業外収益・費用」を加味したものになります。余程の突発的な収支が伴わない限りは、この「経常収支」をもって当期の収支と捉えてよいと思われます。

今回の調査で特筆すべきなのは、介護事業収益が「コロナ補助金」等の施策が考慮されているという点です。

表の中でもコロナ補助金を「含む」「含まない」それぞれについて介護事業収益等が記載されております。

コロナ禍でどのサービスも大変厳しい状況に追い込まれ、補助金を支給したり臨時の加算等を設けたりして、国も支援はしてくれました。

支援の内容や程度については賛否両論あるでしょうが、国もこれを重く見て支援してくれたというのは事実です。

コロナ対策は、未曾有の世界的な感染症大流行に対して、業種問わず莫大な予算を投じて行われたものです。

ここで注意しなければならないのは、コロナ補助金等を含む場合と含まない場合とで、収支差率の結果を区別して考えなければならないという点です。

補助金等を投入した結果だけを見て、「収支に影響がない」と判断されては困るからです。

また、区別して考えるのは当然として、コロナ補助金を「含まない」収支差率の結果をもって判断されても困ります。

なぜなら、補助金を考慮しなかったとしてもコロナ禍における何らかの影響を受けており、それが収支に多大な影響を及ぼしていると考えられるからです。

例えばデイサービスの場合、コロナ感染不安から利用控えがあちこちで頻発していました。今でもその煽りは受けていることと推察します。本件につきましては、2022年3月に掲載した過去記事でも取り上げさせておりますので、お時間があればご覧くださいませ。

何が言いたいのか。

それは、今回のコロナ禍が介護事業の収支にどう影響したのかを考察するのは至極当然として、そもそもの各サービスの報酬構造等も踏まえて考えていく必要があるのではないか、ということなのです。

この調査結果が、次回の介護報酬改定の重要な参考情報になるわけですから・・・

サービスごとの収支差率

上記は令和2年と3年決算における、サービスごとの収支差率一覧です。

これを見てみますと、基本的に収支差率が下がっていることがお分かりいただけると思います。

全サービス平均は令和3年度の収支差率(税引前)は3.0%、前年対比ではマイナス0.9%となっております。

「コロナ補助金等を含まない」場合ですと、収支差率(同)は2.8%と、補助金等を含む場合より0.2ポイント下がっています。

さらに、サービス別の税引前収支差率(令和3年度)を見ていくと、特養はコロナ補助金を含んだ場合でも1.3%、通所介護は1.0%です。

通所リハビリに至ってはもっとひどく、0.5%しか利益が出ていないという計算です。短期入所生活介護もコロナ禍の煽りを相当受けたサービスの一つですが、やはり収支差率は3.3%と大きく下げています。

通所リハビリに至っては、仮に年間売上が1000万円とした場合、単純計算で税引き前利益が5万円しか残らないということになるわけです。

反面、利益が前年対比で上昇しているサービスもあります。

居宅介護支援の令和3年度収支差率は、前年対比で+1.5%の4.0%となっております。2021年の介護報酬改定により、居宅支援は初めて収支差率がプラスに転じたとして業界では話題になっています。

訪問介護は令和3年度収支差率が6.1%、訪問看護は7.6%となっております。

これは、通所介護や通所リハの利用控え等で在宅に滞在する利用者様のケアを、訪問介護・看護で担っているという見方ができると思います。また、コロナ患者様が増えすぎたために病院も退院促進がますます強くなり、在宅に戻った利用者様を在宅サービスが支えているという実態もあります。

実際、訪問看護においてもコロナ特例がありまして、コロナ療養期間中に訪問看護師が訪問した場合には、主治医が「特別訪問看護指示書」を交付することにより「長時間訪問看護加算」の増額(5200円/日の3倍)や特別管理加算の増額(+2,500円)、また電話による対応をした場合には「訪問看護管理療養費」のみ算定が可能になる等、特例が設けられています。

コロナに感染したご利用者様は生命にかかわるリスクが急激に高まります。そのような中でも訪問看護サービスの役割は非常に大きいのも事実です。訪問介護もしかりでしょう。

他のサービスに比べて収支差率が高いからといって、一律に「儲け過ぎ」と捉えるのは違うかなと思うわけです。

介護サービスに従事されるすべての方々が、自らも感染リスクを背負いながら懸命にサービスを提供してきていることは言うまでもありません。

この調査は本当に「実態」に即しているとみなしてよいのか?

先ほども申し上げたように、この調査は次回介護報酬改定を議論する上での重要情報になります。

もちろん、この結果だけですべてが決まるわけではないものの、相応の影響を及ぼすものになるでしょう。

今回の調査、有効回答率が5割を切っているという点を見過ごすわけにはいきません。

2020年の実態調査では、回答事業者数が14,376であったのに対し、2022年実施の概況調査では8,123と、非常に少ないのが実情です。

日本の介護事業所数は、上記の表(スペースの都合上、在宅系サービスのみ掲載)をご覧いただければ、かなりの数に及ぶことは容易に推察できると思います。居宅介護支援だけで約4万事業所、訪問介護は約3万5千事業所、通所介護も2万5千事業所近く存在します。

それなのに、たった8千事業所あまりから抽出した調査結果をもって、2024年から少なくとも3年間の介護報酬が決まってしまうかもしれないのです。

調査方法が「層化無作為抽出法」といって、サービスごとに無作為に抽出された事業者に調査を依頼するという方法を採用しています。調査結果のバラツキを防ぐ目的もあるため、回答数が限られてしまうのはやむを得ない部分もあります。

しかし、それでも少なすぎます。厚生労働省の担当者も、このことは重く見ていることを表明しているようです。私見でしょうが・・・

介護事業者は、こういうところにも目を向けた上で事業運営していく必要があるのだと、改めて痛感させられます。

最後に声を大にして申し上げたいことがあります。

それは、このような概況調査や実態調査の結果、収支差率が高いサービスについては狙い撃ちされる傾向があるということです。

これは本当に納得できません。

収支差率が高いということは、介護報酬の構造上の問題ではなく、事業者の不断の努力の結果であると思います。

頑張ってご利用者様にサービスを提供して、ご支持をいただき、地道にご利用者様を増やしていった結果が、収支差率の向上につながっているのです。

それを無視して、利益が上がっているから報酬を下げるという乱暴なやり方だけはどうしても納得がいきません。

これは皆さん、同意見ではないかと信じております。

確かに少子高齢化は深刻であり、社会保障費の適正化の観点では緊縮財政にするのも致し方ないと思います。

しかし、事業者は懸命に努力を重ねているわけです。

どうか、限られたサンプルだけで短絡的な議論(そんなことはないと思いますが)することはしないでいただきたいと、筆者は強く思います。

今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。

ユニケアでは、今後も皆様にとりまして有益な情報を継続的に発信してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、次回の投稿をお楽しみに!!

【参考URL】

R5年2月1日介護給付費分科会-介護事業経営調査委員会資料

介護サービス施設・事業所調査の概況(令和2年度)