期待していたが少々がっかり・・・?訪問介護と通所介護の複合型サービス

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

季節の変わり目や寒暖差が激しいこの時期、体調を崩される方が増えています。

全国的にインフルエンザが大変流行しており、私たち訪問看護師もピリピリしています。

高齢者の皆様が万一感染してしまうと、症状が重篤になり生命の危機に瀕する場合もあります。そういうことにならないよう、これまで以上に感染防止に留意しなければなりませんね。

私たち訪問看護師やセラピストは、今日も元気にご利用者様のご自宅に訪問してまいります。

本日のテーマ

11月は2024年度の介護報酬改定に関する動向について、力を入れて取り上げてまいりました。

介護事業所を運営されている方であれば、ご興味がないという方はいらっしゃらないでしょう。

今後ユニケアでは、しばらくの間「2024年度介護報酬改定」等に関するトピックスを重点的に取り上げ、皆様にとって有益な情報を提供してまいりたいと考えております。

今回は、今般の改定の目玉である「通所介護と訪問看護の複合型サービス(以下『複合型サービス』といいます)の新設」に焦点を当てたいのですが、先日の分科会で少々がっかりさせられる事項が議論されていましたので、「ボヤキ笑」も含めて取り上げてまいります。

どうか最後までお読みいただけますと幸いです。

なお本記事は現段階(2023年11月)での途中経過の情報になります。正式な決定事項ではありませんのでご了承くださいませ(しかし導入の可能性は高い)。 現在どういう点が議論になっているのかという視点で、本記事をご覧いただけるとうれしいです。

「複合型サービス」が求められた背景

複合型サービスの創設が議論された背景には、いくつか要因があります。

その中で最も影響が大きかった要因として、筆者は「コロナ禍による通所介護の特例」があったと考えます。

上記のスライドにもあります通り、通所介護サービスはコロナ禍により「利用控え」が深刻化し、稼働率を大きく下げ、収益を圧迫しました。

國は通所介護サービスを、「国民が安心した生活を送る上で欠かせない存在」と明確に位置付けております。ですので、コロナが原因としてサービスの停滞があってはならないとの観点から、様々な救済措置が講じられました。

例えば、期間限定で「より上位のサービス報酬」を算定できるような措置や、コロナ関連でお休みした通所利用者様に対し、自宅訪問などを行った場合に加算が算定できるような配慮などです。

今は残念ながら終了してしまいましたが、この取り扱いは通所介護事業所にとって本当にありがたかったのではないでしょうか。

影響はそれだけではありません。

通所介護のご利用者様の中には、利用控え中においてADLが低下し、中には重篤な状態にまで陥る方も多かったそうです。

せっかく通所して機能訓練などをされても、自宅で何もしない状態が続けば、あっという間にADLは低下してしまいます。

さらに利用控え中、ご利用者様の状態がどうなっているかを確認できずに、変化に気づくことができなかったという問題もありました。

しかし通所介護事業所のスタッフさんが、自宅待機中のご利用者様を訪問し、状態の観察や必要な援助を行ってケアマネさん等と共有することにより、ご利用者様の状態維持に大きく貢献したという事例は、本当にたくさんあったわけです。

ご家族も、慣れ親しんだ通所スタッフが自宅を訪問してくれ、何より安心感を持たれたのではないでしょうか? ほかにも要因はあると思いますが、コロナ特例による通所スタッフさんの居宅訪問は、一定の成果が上がり、これが大きなきっかけの一つとなって今回の複合型サービス新設が議論されたというのは、あながち大げさな話ではないと思うのです。

現在議論されている複合型サービスの概要

上記のスライドは、分科会で示された複合型サービスのイメージ図になります。

「利用者の状況に応じたきめ細かなサービス提供」を理念とし、効率の良い運営と専門職の養成にも寄与できるのではないか、と考えているようです。

このイメージ図には記載がありませんが、報酬は1月あたりの「包括報酬」になる公算が強いと思われます。

設備基準も、通所介護を先行的に運営されている事業所であれば多くの設備を併用できる形になりそうです。また、管理者も「通所・訪問」合わせて1名」の配置となるようです。

いろいろ兼ねることができれば、確かに効率のよい運営ができそうではあります。 しかし、それほど甘くは内容なのです・・・

複合型サービスには少々がっかりする「問題点」あり

いろいろ資料を読んでいきますと、今回の複合型サービスは「小規模多機能型居宅介護」の中で「泊りサービス」がないだけという内容に思えました。

筆者は、この複合型サービスの新設が、現行の通所介護事業所において新たな収益源を確保するきっかけになり得ると期待していたのですが、どうやらそうではなさそうです。

問題点は2点あります。

1つは、地域密着型サービスとして位置づけ、登録最大人数を29名に設定している点です。

これ自体を問題にしているのではなく、現行の通所介護事業所が複合型サービスに転換するのは困難ではないかということです。

まだ深い議論まではされていないので、今後もう少し変わるかもしれませんが、少なくとも現状の通所介護事業所にとってはあまり魅力のあるサービスには見えませんでした。

地域密着型サービスとして位置付けた場合、集客にも影響を及ぼしそうです。

現在の通所介護業界は、過当競争といってよい状態になっています。

まさにお客様の取り合いです。

通所介護事業所が増えすぎたという見方もありますが・・・

通所介護事業所の収益性を確保する観点からも、地域密着型にすることで営業セリアを制限したり、小多機と同じような登録制限(29名まで)を設けたりするのは、少々厳しいものがあるのではないかと思ってしまいます。

もう1つは、訪問系サービスを担う人員基準に、訪問介護サービスと同様の資格要件を設けようとしている点です。

資格を保有するということは、一定の知識と経験を示すものであるという点で異論はありません。

しかし、以前のコラムでも指摘しております通り、訪問介護事業所の求人倍率は約14倍という状況です。ヘルパー1名を雇用するのは、倍率だけを見れば難関大学に合格するよりも難しいといっても過言ではありません。

もちろん、質の担保を図るのは当然です。

しかし、複合型サービスの創設の意義の一つが「訪問介護サービスの人員不足に寄与するため」であるにもかかわらず、資格要件を訪問介護並みに求めるのであれば、あまりメリットが受けられないのではないでしょうか?

もともと通所介護と訪問介護の両サービスを併設している法人様であれば、現在のリソースを活用できる可能性があり、新たなサービスの導入効果として収益を見込めるかもしれません。

しかし、特に通所介護を「単体」で運営されている法人様であれば、新たに有資格者たる訪問介護員やサービス提供者を採用しなければならず、採用難に苦しめられるだけでなく人件費もかさみ、報酬体系次第では負担のほうが大きくなってしまうではないかと考えます。 今後の動向を見守る必要はありますが、正直申しまして複合型サービスの制度設計には少々がっかりさせられました・・・

まとめ

筆者は今回の複合型サービスについて、前述した「コロナ禍特例」のようなものをイメージしていました。

そんなに甘いものではないと怒られるかもしれませんが、今回の複合型サービスは「地域密着型サービス」「定員29名以内」「月額包括報酬制」となり、小多機と似たようなサービス構造になりそうなこと、通所介護と訪問介護で人員の兼務や設備の効率化を掲げているものの、特に人員については両サービスにそれぞれ配置が必要であることなど、正直いって魅力ある構造になっていないようでがっかりしてしまいました。

この仕組みで、果たして全国的に浸透していくのか、少々疑問です。

結局、大手法人にとっては資本の力を活用して、新たなビジネスチャンスを得られるかもしれませんが、そうでなければ負担が大きく、簡単に手掛けることが難しくなるような気がしてなりません。

何度も申し上げてしまい恐縮ですが、本件はまだ詳細な議論ができておらず、正式な決定事項でもありません。

しかし、現時点でここまで議論が進んでいるということは、導入自体は決定といってよいでしょう。

筆者としては、コロナ禍の教訓を活かす形で今回のサービスを新設するわけですから、もっと実態に即した内容にしてほしいと強く思います。

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 次回の投稿をどうぞお楽しみに!