こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
台風があちこちで発生しています。
この記事を執筆している頃は、ちょうどお盆時期で帰省や旅行ラッシュの時期に重なります。ニュースなどを見ますと、近年では台風接近が予想されると新幹線が計画運休するなど、事前対策が採られるようになりました。
台風シーズン真っただ中の時期とはいえ、何もこんな時期にたくさん発生しなくても・・・と思ってしまいますが、自然の力には逆らえません。
自然災害のリスクがゼロにならない以上、可能な限りの備えをするしかありません。
私達訪問看護師やセラピストは、雨や雪が降ったからといって簡単に訪問を取りやめることができません。とはいえ、事業者はスタッフさんの生活の安全も確保しなければなりません。
この、一見するとトレードオフの関係にある2つのことを、最大限両立させなくてはありませんから大変です。
しかし、この事業を行う決断をしてスタートした以上、両立させる覚悟を持って取り組みたいと思います。
皆様、台風や大雨、そして地震などには十分備え、お気をつけいただければと思います。
少し前のコラムでもお伝えしましたが、来年4月実施の介護報酬改定に向けての議論がスタートしています。秋口には本格的な議論が行われ、本年末には審議報告の内容が固まる見込みです。年明け過ぎには厚生労働大臣から諮問があり、社保審が答申し、2月頃には正式決定されます。
ちなみに、2021年度の分科会審議報告は2020年12月23日、厚生労働大臣からの諮問は翌年1月18日、同日に分科会が答申し「改正を了承する」旨の回答を行いました。
分科会で審議された内容は、余程の問題がない限り事務的に手続きされ、事実上審議内容の通り決定されます。儀式みたいなものですね。
前置きが長くなって大変申し訳ございません。
本コラムは、ケアマネジャーの方に多くお読みいただいているようで、本当にありがたく御礼申し上げます。
今回は介護報酬改定の中でも「居宅介護支援」について取り上げたいと思います。
どうか最後までお読みいただけますと幸いです。
上記のスライドは、前回の介護報酬改定から「居宅介護支援」に関する内容を抜粋したものです。
前回改定に向けての審議で最大の関心事は、コロナ対策でした。
審議された時期はコロナ大混乱中の2020年。同年度に緊急事態宣言が2回も発令され、国民生活への計り知れない影響は言うに及ばず、私達介護サービス事業者も本当に苦しい状況となりました。
前回の居宅介護支援に関する、主な改定内容を簡単にまとめますと・・・
・特定事業所加算の見直し
一定期間ターミナルケアに従事したことを評価する意味合いで、特定事業所加算Aが新設されました。
・逓減制の見直し
ケアプラン件数が40件を超えた(ここでは細かい要件は考慮しません)場合、居宅介護支援費の逓減制がありました。今も逓減制の存在は続いていますが、ICTや事務員の導入により業務効率化を図った事業所に対しては、逓減報酬の実施を「45件超」とすることになりました。従来よりも5件多くプランを担当しても報酬は下がらないということです。
・介護予防支援の充実
予防支援プランを居宅ケアマネさんに委託した場合の報酬があまりに低く、ケアマネさんにメリットがあまりないという問題を解消するために、「委託連携加算(300単位/月)」を新設し、受託ケアマネさんにメリットが享受できるように配慮することになりました。
という具合になりました。
上記の表は、居宅介護支援事業所が算定している報酬・加算の率を表しています。
筆者が述べたいのが、介護報酬改定が行われてから2年半近く経つ中で、新たに新設・改定された報酬等が実際どう変わったのかについてです。
「逓減制の見直し」を示す「居宅介護支援費Ⅱ(ⅰ)」の算定率は、わずか8.8%。
看取り支援を行う事業所を評価する「特定事業所加算(A)」の算定率はもっと低く、たったの0.8%です。「委託連携加算」の情報はないのですが、正直言いまして月300単位程度の報酬では全くもって魅力を感じません。
先々のことはわかりませんが、現状において改定による効果が出ているとはとても言えないでしょう。
ただ、こちらも以前コラムでご紹介しましたが、居宅介護支援事業所も「予防支援」の指定を受けられるよう改定されることとなりました。詳細はこれから審議されますが、少なくとも「委託連携加算」などという意味の薄い加算よりは朗報といえるでしょう。
加算の算定状況は定期的に調査・公表されますが、算定率の低い加算は廃止されることがあります。3年で評価するのは時期尚早かもしれませんが、筆者は2021年改定で創設された加算等は十分機能されているとは言えず、今回分科会でよい方向への改定に向け真剣に議論していただきたいと考えます。
上記のスライドをご覧いただくと、居宅介護支援事業の収支差率は「4.0%」となっており、数値だけみれば改善しているように見えます。
しかし、この数値は「コロナ補助金」を含んだものになっていることを忘れてはいけません。コロナ補助金を考慮しない場合の数値は「+3.1%」と記載されています。
この部分を小さい字で記載されているところに、悪意を感じてしまうのは考えすぎでしょうか笑
居宅介護支援事業は、各サービス事業の中で唯一「事業として収益が確保しにくい」
事業と言われ続けていました。実際、令和元年度には収支差率マイナスとなっていました。まじめに事業運営しても収益が上がらず赤字となるようなビジネス、あってよいのでしょうか?
しかし、数値だけを見れば、改定によりプラスに転じてはおります。
これは喜ばしいことですが、楽観視は非常に危険です。
収支差率がプラスになったことだけを切り取り、「儲かっている事業は報酬を下げる」としてきたのが、国の方針です。
このような暴論が展開されることだけは、何とかして避けてほしいところです。
7月に行われた分科会にて、参加委員には居宅介護支援における次回改定の論点について、上記のように共有されました。
「担い手不足」と記載されておりますが、これは国民全体が人口減少による「労働力不足」のことを示しているように読み取れます。
しかし筆者は「ケママネジャー不足」も深刻であると思うのです。
居宅介護支援事業における長年の課題として、「居宅介護支援費の利用者負担導入」があります。
財務省は、居宅介護支援費の自己負担制導入を強く求めています。議論はずいぶん前から行われていますが、そのつど業界は猛反対し、分科会でも時期尚早と認識。結局、この議論は先送りが続いています。
居宅介護支援費の自己負担制の議論は必要だとは思いますが、導入には筆者は反対です。
理由は、この論点以上に緊急的に解決しなければならない重要論点があるからです。
具体的には介護支援専門員不足の早期解決。そして居宅介護支援事業所の収支改善、すなわち報酬の増額が、自己負担制導入よりも優先すべき課題と考えます。
実務研修受講試験の受験資格が厳しく、かつ更新制もあります。
事実、介護支援専門員はどんどん「高齢化」しています。どんなに若いケアマネさんでも、試験制度の問題から30代前半位ではないでしょうか。
ケアマネジャーとしての質の担保は、確かに必要です。ケアマネさんに限らず、私達は更なる研鑽を積んでいく必要はあります。
それと並行して、介護支援専門員数を増やしていかない限り、地域によっては深刻になっている「ケアマネ難民(プランを依頼したくてもケアマネが見つからない)」状態は解消されないでしょう。
また、居宅ケアマネさんは、介護職員処遇改善加算の対象外になっています。これは、私達訪問看護ステーションも同様なのですが・・・
今後ますます困難ケースが増えていくわけですから、質を上げずにいたずらに処遇だけ高めるというのも問題ですが、とにかくケアマネさんは不足していることが明らかなのですから、同時進行で処遇を高めていく必要はあります。
今回の改定でも、介護職員の処遇改善への取り組みはされると思います。
ただ、もうそろそろ「ケアマネ」「訪問看護師」「セラピスト」といった「介護職ではない」スタッフにも処遇改善に向けて整備していただきたいところです。
生産性を上げるための事業者努力も必要です。
毎月の実績管理を、いまだにサービス事業所とFAXでやり取りしているという現実があります。この状態では、なかなか効率よく業務ができる状況とはいえませんね。
介護ソフトは各社でたくさん出ていますが、事業所間で活用するソフトがバラバラなため、相互互換性に乏しく結果としてアナログ的に対応せざるを得ない部分があります。
今年度からスタートした「ケアプランデータ連携システム」もあまり進んでいる実感がありません。事業所がもっと業務の効率化と生産性を上げていくための意識付けと努力は必要ですし、同時に国ももっともっと推進していってほしいと思います。
莫大な予算をかけて開発しても、結果として使い勝手の悪いものであれば話になりません。税金の無駄遣いになってしまいます。
無駄にしてしまった開発費は、国民が受ける損失です。
介護サービス事業所には厳しく監督し、何かを間違えれば報酬返還などと言ってきます。
それを言うのであれば、このようなシステム開発で十分な成果が得られない、ましてや失敗となったのであれば、その損失を国民に対して補填する位すべきです。
それ位、国は現状に目を向け、緊張感をもって議論し決めていただきたいと思います。 本日もお読みいただき、誠にありがとうございました。