2024年度介護報酬改定のゆくえ~訪問看護~

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

FIFA女子ワールドカップ、なでしこジャパンは残念ながら競合スウェーデンに惜敗し、ベスト8で敗退となってしまいました。大変残念ですが、大きな足跡を残されたのではないでしょうか。本当にお疲れ様でした。

来年はオリンピックも開催されます。女子サッカーはワールドカップと同じ位重要な大会となるそうですので、どうか気を落とされずに、この悔しさをバネにまた前を向いて頑張っていただきたいです。

また今回は、日本人審判団の活躍も見逃せません。

主審の山下良美さん、副審の坊薗真琴さん・手代木直美さんの3名が、今回FIFAから指名を受けられました。

大会では名誉ある「開幕戦」を担当され、緊張の中皆さん立派に務められました。本当に素晴らしいことです。

過去サッカーの審判を長くしてきた筆者には、これがいかにすごいことかわかります!

この記事が公開される頃には、大会も終了し帰国の途に就かれることでしょう。

どうぞお気をつけて帰国していただければ幸いです。

本日のテーマ

2024年度介護報酬改定について、今さかんに分科会で議論されています。

何度もこのコラムで申し上げていることですが、秋をめどに毎週のように会合が開催され、各サービスの業界団体の関係者からの提言がなされ、最終的には年末をメドに審議がまとまります。

このコラムは、ありがたいことにケアマネさんに多く読まれております(もちろん、ケアマネさん以外の方にもお読みいただいており、大変感謝しております!)。

前回のコラムでは、現在分科会で議論されている中で「居宅介護支援」の論点について取り上げましたが、今回はわが「訪問看護」の現状と改正の論点についてご紹介したいと思います。是非最後までお付き合いくださいませ。

訪問看護サービスの概要

下記のスライドの通り、訪問看護サービスには大きくわけて「介護保険」と「医療保険」に大別されます。これに、生活保護や自立支援医療、指定難病などの「公費」が加わりますが、これは主保険である介護保険と医療保険を補完する位置づけになるため、ここでは敢えて触れないことにします。

介護保険には「要介護」「要支援」にわかれ、それぞれケアマネさんが作成されたケアプランに基づいてサービスが提供されます。

区分支給限度基準額の範囲内に収める前提で、訪問看護サービスの提供回数に制限はありません。

介護保険被保険者の場合、原則として「介護保険優先」となります。

しかし特定の場合においては、介護保険被保険者であっても「医療保険」でのサービス提供が可能です。

「特定の場合」とは、例えば厚生労働大臣が定める「別表7(ガン末期やパーキンソン病等)」に該当する場合、また特別訪問看護指示書が交付された場合(原則月1回で最大14日間)は、医療保険での対応になります。

特別訪問看護指示書は、前述の通り月1回14日間までしか交付できませんが、特定の疾患(神秘を超える褥瘡・気管カニューレの場合)は「月2回(最大28日間/月)」まで交付が可能です。

さらに、精神疾患の方(認知症は覗く)についても、「精神訪問看護指示書」の交付により医療保険での対応ができます。

訪問看護は、上記のように介護保険と医療保険の両方が混在し、かつ公費(全国公費・地方公費)も絡むために取り扱いが複雑になっております。

以前にも本コラムでもご紹介したことがありますが、報酬改定についてご紹介するにあたってはまずこの基本構造を理解していただけると幸いです。

・事業者数と従業者数

訪問看護ステーション数は近年非常に増えており、全国の事業所数は13000を超えております。在宅療養のニーズは高く、これからもますます必要とされるサービスであることは間違いないでしょう。

従業者数については、1事業所当たりの平均従業者数は約8名(常勤換算)で、そのうち看護職員(保健師・看護師・准看護師)の割合は7割とのことです。

基本的に、3割はセラピストということになるでしょう。

訪問看護師とセラピストは大変親和性が高く、相互補完的な関係です。

セラピストによる訪問看護サービスには、いろいろ意見が分かれるところですが、なくてはならない大切なサービスであると当法人は考えます。

常勤換算で従業者数が平均「8名」というのが、果たして多いのか少ないのか・・・という点については、筆者はこのニーズの高さから考えるとまだまだ少ないと考えます。

訪問看護サービスというものは、まだ十分に認知されているとは言い切れない部分があります。これは当法人も認識しており、今後もっと力を入れて取り組んでいく必要があると強く認識しております。

訪問看護の経営状況

・訪問看護の給付額

国内の訪問看護事業所数が増えていることは先ほどご紹介した通りですが、訪問看護の費用(保険報酬・公費負担・自己負担含む)は372,400百万円となっております。

訪問看護サービスは約4000億円の市場規模ということですね。

普段現場に立っておりますと実感はありませんが、このように振り返ると私達訪問看護の世間に与える影響力はかなりあるのだなと考えさせられます。

・収支差率

訪問看護事業の経営状況についてですが、上記のスライドの通り「収支差率」は7.6%となっております。

一見すると「儲かっているのではないか」と思われるかもしれません。

しかし、純粋に24時間365日のサービスを切れ目なく提供するために、スタッフがシフトを組んで対応している事実を考えますと、これは妥当な数字ではないかと思います。

今後、訪問看護ステーションが永続的に事業継続を図っていくためには、サービスの向上が不可欠ですし、最も大事である人材(看護師やセラピスト等)をいかに確保し続けられるかがカギになります。

長く活躍していただくためには、昇給なども必要になるでしょう。収支差率というのは事業年度における儲けを表すわけですが、確保した利益は永続的な事業経営とスタッフの処遇に使われなければなりません。そう考えると決して高い数値ではないですし、私達も更なる努が必要になってくることでしょう。

今回の改定の重要論点

分科会では、訪問看護事業における報酬改定の論点として上記を掲げています。

訪問看護には「緊急時訪問看護加算(介護保険)」「24時間対応体制加算(医療保険)」の取得率はだいぶ高まっており、8割を超えているようです。

また、医療行為を必要とされる方に対して算定する「特別管理加算」も、取得される事業所が7割程度にまで増えています。

しかし、まだまだ十分とはいえません。事業所によっては体制構築ができないために、加算算定できないというところも存在しているのです。

公開された分科会資料によりますと、第8期介護保険事業計画において今後必要とされるサービスの見込み量として、訪問看護は2020年度に約61万人であったのが、2040年度には84万人程度に増えると見込んでおります。

どのサービスも悩みは尽きませんが、特に訪問系は中山間部のサービス提供にも非常に大きな問題を抱えています。

質の高いサービスをいかに提供できるか、それは非常に大事なことなのはいうまでもありません。しかし、日本全国で切れ目なくサービスが提供出来、かつしばらくは続くニーズの高まりにいかに対応していくかを考えますと、質の高さを求めるのと同じ位「現状をいかに継続できるか」にも目を向ける必要はありそうです。

まとめ

高齢者が加速度的に増えていることや、在宅医療のニーズが高まっていることを勘案すれば、先ほど掲げました「必要なサービス量」の数値は想像に難くはないでしょう。この「推定値」はかなり高い制度で実現されるものとなりそうです。

そう考えますと、今後在宅での医療ニーズがさらに高まり、それに応える医療従事者をいかに確保するべきなのか、繰り返しになりますが今後議論が白熱していくことでしょう。

業界団体も、どうか各サービスの現状と問題点を分科会に強く発信してほしいですね。

そうしていかない限り、サービス業界全体の課題解決は難しくなるでしょう。

私達も、今一度気を引き締めて日々のサービス提供を見つめ直し、更なる向上を図っていかなければならないと、改めて感じております。

本日もお読みいただき、誠にありがとうございました。

ユニケアでは、今後ますます議論が進んでいく介護報酬改定の内容について、今後も本コラムでご紹介してまいります。

それでは、次の投稿をお楽しみに!!