令和6年度診療報酬改定の行方―訪問看護②

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

蒸し暑い日が続きますが、私たちユニケアの訪問看護師やセラピストは毎日元気に活動しております。雨にも負けず、暑さにも負けず、しかし熱中症対策は万全に、今日もご利用者様のために頑張ってまいります。

本日のテーマ

前回のコラムでご紹介いたしましたが、2024年は「介護保険法・介護報酬」「診療報酬」「障害福祉サービス費」の「トリプル改定」が行われます。

私たち訪問看護ステーションだけでなく、すべての介護事業所や医療機関、障がい福祉サービス事業者にとって大変大きな関心事です。

なぜなら、公的保険の報酬改定は、事業経営の根幹に大きく関わるからです。

社会保障は厳しい状況にさらされているものの、私たちサービス事業所は決して欠かすことが出来ない重要インフラです。

報酬アップを強く望むのは至極当然としても、現実は簡単にはいきません。

私たち事業者は、日頃からこのような情報をキャッチアップし、次の一手をどう打つかを考えていく必要があります。

前回からの再掲となりますが、先日行われた「令和6年度(介護・診療報酬)同時改定に向けた意見交換会」という会合で、訪問看護に関して提起された論点について下記の4点をご紹介いたします。

(1)更なる高齢化を見据えた訪問看護の役割等

(2)地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制

(3)介護保険・医療保険における訪問看護の対象者

(4)介護保険と医療保険の訪問看護に関する制度上の差異

今回は「(2)地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制」について取り上げてまいります。皆様、どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。

24時間対応やターミナルケアへの対応

多くの訪問看護ステーションでは、24 時間対応やターミナルケアをはじめとした、利用者や地域のニーズに対応する体制を整備されており、特にターミナルケアのニーズは高まっています。

一方で、医療ニーズの高い方に対しては対応に消極的なステーションも一定数存在するようです。

例えば、特別管理加算の算定に該当するような方いらっしゃるとします。

そういう方は、例えば点滴施行や褥瘡の処置、HOTの管理等が発生します。

バイタル管理や健康観察、皮膚の状態の管理といった基本的なサービスは対応できても、様々な理由から医療ニーズの対応に積極的になれない事業所もあるのは事実です。

これは、事業所の訪問看護師のスキルの問題でしょうか?

もしかしたらそういう理由もあるかもしれませんが、看護師の有資格者であれば基本的には対応できるのではと筆者は考えます。

スキルの問題もゼロではないかもしれませんが、医療ニーズの高い方はやはり日中だけでなく夜間早朝等の対応も求められやすいことから、むしろ人材配置や緊急対応が困難ゆえに「消極的になっている」のではないかと思われます。

これは非常に難しい問題です。

個々の事業所の事情もあり、それを知らない者があれこれと詮索したり批判したりするのは失礼であると考えます。現在は何とか24時間対応をされている事業者様も、実のところは非常に難しい局面の中で「必死」に対応されているのが現状ではないでしょうか。

訪問看護師の「精神的負担」

在宅療養をされているご利用者様の医療ニーズや看取り等を何とか支援するため、多くの訪問看護ステーションにおいて 24 時間対応の体制を整備されていることと思います。

我がユニケアでも同様で、毎日のオンコール体制や緊急訪問の体制を構築することは決して簡単ではありませんが、何とかやりくりをしております。

毎日頑張って働いて下さるスタッフさんには、本当に感謝しかありません!!

とはいえ、24 時間体制を維持するために、スタッフの負担がかかっていることも事実です。

上記の資料によりますと、「看護職員の精神的・身体的負担が大きい」とする看護職員が約8割、「夜間・休日対応できる看護職員が限られているため負担が偏る」と考える看護職員は約7割となっています。

人員に比較的余裕があるステーションであれば、オンコール担当と緊急訪問担当を分業し、負担を軽減できるところもあるでしょうが、実際は営業時間外においてオンコール+緊急訪問を同時に行っているステーションもかなりの数となっております。

また、夜間・休日に緊急訪問した場合、約6割の訪問看護ステーションで は代休が設けられていない、というデータもあります。

訪問看護師を潤沢に抱えることが出来ているステーションは、多くはないと思います。

ということは、程度の差こそあれ、ほとんどの事業所で上記のような現状に悩まれている、といっても過言ではありません。

今回の意見交換会で、このような実態について言及がなされたことは、非常に重要な意味を持つと筆者は考えます。是非とも、この実態を踏まえていただき、よい形での報酬見直しに着手していただきたいところです。

地域の事業所等との連携

ユニケアでは、地域の事業者様との連携をとても大切にしています。

このコラムでも幾度となくお伝えしていることではありますが、私たちは単独で訪問看護サービスを行うことなどとても不可能で、地域の皆様のお力添えをいただいて成り立っていると、心の底から考えております。

「駄菓子屋」を営業しているのも、まさに地域連携の一環であります。

上記の資料をご覧いただきたいのですが、実際に訪問看護ステーションが行っている地域連携事業としては、「実習生やインターン生の受け入れ」「地域の行事や活動への参加」「他の事業所や他職種に対する研修の実施」等が挙げられ、皆さん忙しいながらも大変な努力をされて連携強化を図っていることがわかります。

実際、ユニケアにおいても上記の取り組みは行っており、一定の成果は上がっていると実感しています。

しかし、ユニケアもまだまだ十分取り組めてはいません。

実際、市町村等が取り組む地域ケア会議や在宅医療・介護連携推進事業、災害時や感染管理の体制整備への参加など、地域における在宅医療等に係る様々な取組みを実行したいと思っていても、なかなか難しいのも実情です。

本当は、このようなことを言ってはいけないのかもしれませんが・・・

上記のデータによりますと、「機能強化型訪問看護ステーション」による他の訪問看護ステーションの利用者のケアに関する助言などを求める声も、一定数あるようです。

同業他社を「ライバル視」するのではなく、よきパートナーとして手を携え、ともに地域医療を支える存在であり続けたいですね。

更なる高齢化を見据えた「一体的なサービスの提供」を

以前、介護の「2025年問題」が取り沙汰された時期がありました。

「2025年問題」とは、団塊世代が75歳以上に達する年が到来し、高齢者福祉上の様々な問題が発生するという意味ですが、その「2025年」も目前に迫っています。

今後、訪問看護ステーションに求められる役割は、ますます増えてくることは確実です。そのためには、更なる高齢化を見据えて、訪問看護ステーションの規模を拡大しながらも24時間対応などにおける看護師等の負担軽減にも配慮した、在宅医療における訪問看護の体制整備が求められます。

簡単にはいかない、非常に難しい問題ですね。

この難題を解決するためには、訪問看護に携わる看護職員を更に手厚くすること、訪問看護の質の担保・向上の両方が必要になります。まさに「質」と「量」の両方を求めるという話です。

特に近年、精神科の訪問看護ニーズや、小児の方の医療ニーズが高まりを見せております。

精神科ニーズに対応するステーションは、筆者もよく耳にします。

小児対応についても最近はよく聞かれますが、やはりなかなか対応しにくい領域と認識されているようにも見えます。

上記の資料からも、2011年からの10年間で小児の利用者人数が2.3倍に増えていることがわかります。

精神科もそうですが、小児の方については、患者様本人はもとよりその保護者へのケアも非常に重要になります。

単に定期的に訪問し、ケアをするだけでは足りず、毎日お子様の療育に悩む保護者の方へどう寄り添えるかが非常に重要なのです。

私たちは、医療的ケアに対する技術を高めるだけでなく、いわばソーシャルワークの手法も学ぶ必要に迫られているといってよいかもしれません。

本日もお読みいただき、誠にありがとうございます。

今回のこの「意見交換会」は、私たち訪問看護ステーションとしても深く考えさせられる内容です。以後も数回にわたってこのテーマを取り上げ、皆様に問題提起しながら一緒に考えていきたいと存じます。

それでは、次回の投稿をお楽しみに!!