通所介護の報酬に関する議論~社保審・介護給付費分科会より~

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

このコラムが公開される頃には、東京でも梅雨が明けていることでしょう。

いよいよ夏本番!と言いたいところですが、既に何日も前からとてつもない暑さに見舞われております。

筆者も既に少々夏バテ気味・・・ 

幸いにして食欲は旺盛ですし、何とか週に2~3日はジムで運動もできているのでよいのですが、夏バテ防止には水分補給と食事、適度な休息と睡眠が非常に大事です。

皆様もそうかと思いますが、訪問看護サービスはどうしても移動が多く、時間に追われてしまうことが多い仕事です。日によっては食事や休憩もままならず、次のご利用者様宅に移動しなければならない時もあります。こういう時に、熱中症のリスクは飛躍的に高まってしまいます。

ご利用者様の中には、エアコンを使わずに灼熱状態のお部屋でお過ごしの方もいらっしゃいます。その場合、ご利用者様にお願いしてエアコンをかけていただくこともあります。

本当に熱中症は、最悪の場合人間の命を奪ってしまうこともあります。声を大にして、筆者も含め徹底した対策が必要ですね。

前置きが長くなってしまいましたが、さる7/10に2024年度介護報酬改定に向けた「社会保障審議会・介護給付費分科会(以下「分科会」といいます)」が開催されました。

今回は、通所系サービスに関する議論がなされたようです。今回のコラムでは「通所介護」に焦点をあて、現状の問題点や次回改定の展望について考察した糸井思います。

是非、最後までお付き合いいただければ幸いです。

そもそも「介護給付費分科会」とは何か?

筆者はこのコラムで数えきれないほどご紹介しておりますが、「社会保障審議会介護給付費分科会」ではどのようなことを話し合われているのでしょうか?

いつも本コラムをお読みいただいている方はご存知かと存じますが、分科会とは次回の介護報酬改定をどう進めていくかを話し合うための会合です。

前回の改定が、ご利用者様へのサービスや事業者の運営にどう影響しているのか、様々な業界関係者の意見を聞きながら議論し、報酬改定の方針を策定するのが、この分科会です。分科会で審議された報告書は、厚生労働大臣の手にわたります。

よほどのことがない限り、審議報告された報酬改定の内容は「決定事項」となります。

分科会での審議内容は、冗談抜きで私達介護事業所の運営に直結するものとなるわけですから、気にならないはずがありませんし、気にしなければならないとまで言い切れます。

通所系サービスの具体的な検討内容

7月10日の社会保障審議会・介護給付費分科会における主要議題は、通所系サービスの報酬体系でした。以下のサービス種別ごとに意見が交わされています。

通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護

療養通所介護

通所リハビリテーション

短期入所生活介護

短期入所療養介護

今回は「通所介護」にしぼり、その中で「入浴介助加算」について分科会でかなりの議論となりましたので、今回取り上げます。

減収の原因となった「入浴介助加算」の見直し

通所介護、地域密着型通所介護等について、厚生労働省が「論点」として示したのは、「必要な日常生活上の機能向上並びに自立支援につながる質の高いサービスを提供する」部分です。

もう聞き飽きた部分もありますが、国は一貫して「自立支援」「ADLの向上」を謡い続けています。

もちろん、筆者はこれに対して否定するつもりはなく、むしろ大賛成です。

ただ、通所介護は報酬改定のたびに槍玉にあげられ、毎回減収を余儀なくされているような気がしてしまいます。

7/10の分科会では、通所系サービスについて議論されたわけですが、委員の皆様の大きな関心事として「入浴介助加算」が挙げられました。

21年度改定でも利用者の「機能向上」や「自立支援」という名の元に、個別機能訓練加算、入浴介助加算、生活機能向上連携加算(ICTツールなどを使って外部のリハビリテーション専門職との連携を図る場合を評価)の見直しなどが行われています。

今回は特に、多くの事業所が算定している「入浴介助加算」について意見が集中したようです。

現在の「入浴介助加算」の報酬体系は下記の通りです。

入浴介助加算(Ⅰ) 40単位(改定前は50単位)

入浴介助加算(Ⅱ) 55単位(21年度改定から新設)

です。

無理もありませんね。入浴介助加算の改定はあまりに打撃が大きく、憤りすら感じてしまった位ですから・・・通所介護事業所を運営していない(過去には運営経験あり)筆者でもそうなのですから、通所介護事業所の経営者様や管理者様は、その心情たるやいかばかりかと察します。

入浴介助加算(Ⅱ)の算定率は、たった1割!!

入浴介助加算は、利用者が「自宅での入浴」を実現できるよう、ケアマネやセラピスト等の専門職が個別の計画立案を行い、それに従った入浴介助を評価するものとして、21年度改定において「入浴介助加算(Ⅱ)」が新設されました。それに伴い、従来の入浴介助加算は10単位/回の引き下げとなりました。

これは非常に痛い改定でした。

単純計算ですが、月の利用累計が800名程度の「中規模事業所」で、ご利用者様全員が入浴サービスご利用された場合、21年度改定による減収額は「減収分10単位×10.90円×800名=87,200円」となります。

年間100万円以上の減収となってしまったのです。

事業者は、実質減収となった分を何とか穴埋めすべく、入浴介助加算(Ⅱ)の算定を模索しました。

しかし、実際の算定率はたった1割であると、分科会で報告されたわけです。

他の加算を算定しようにも、新たに体制を整えたりスタッフ増員したりするにも限界があります。新たに加算を算定しても、かえってコスト倒れになってしまっては、いくらご利用者様の利益になることであっても決断することは困難です。

結果的に、減収を受け入れざるを得ない形になってしまいました。

通所介護で相当のニーズがあり、かつ事業所負担が大きい「入浴サービス」

筆者も経験がありますのでよくわかるつもりですが、通所介護サービスにおいて「入浴」のニーズは相当あります。

住環境やご家族状況によって異なる部分もあるため、一概には言えないものの、それでも要介護認定を受けている高齢者の方にとって、自宅で入浴をするというのは簡単なことではありません。デイサービスでの入浴を希望される方が多いのは、自然なことだと思います。

他方において、入浴介助にはスタッフの身体的負担及や水道光熱費などの費用面で、かなりのコストがかかっていることも、厳然たる事実です。

夏の暑い時期に行う入浴介助は、地獄のような大変さだという方もいる位です。

また、最近のエネルギー資源の高騰から、水道光熱費の負担が非常に重くのしかかっています。入浴介助を行う事業所にとって、毎月の水道光熱費の負担は想像を絶します。

それなのに、水道光熱費のコスト増を、入浴介助加算をはじめとする介護報酬で吸収しきれないという事態に陥っているのです。

上記の内容を踏まえた何らかの手立てを求める意見が、事業者団体や専門職を代表する団体から挙がっています。

筆者自身、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件を見て、頭をかしげたくなることばかりです。現場のことを全く分かっていない人間がつくった報酬体系だな、といいたくなります。

委員の中には「そもそも特殊浴槽や機械浴を使うような中重度の方々は、入浴介助加算(Ⅱ)の算定はなじまない」といった指摘もあったそうです。至極ごもっともだな、と筆者は思います。

先ほど触れたように、入浴介助加算(Ⅱ)の算定率は大変低調で推移しています。これまでの報酬改定の傾向から、算定率が低い加算は廃止となるケースもありますが、通所介護にとって(ほかのサービスでもそうですが)「入浴」サービスは清潔の維持・整容のためにも絶対不可欠なものです。いわば事業サービスの「生命線」であり、ご利用者様はそのご家族にとっても決して無視できるものではありません。

ある委員が「今後どういうふうに考えていくかということは議論の必要がある」と述べていることからも、今後白熱した議論が繰り広げられるでしょう。

筆者としては、入浴介助加算(Ⅱ)を残すかどうかはさておき、少なくとも入浴介助加算(Ⅰ)は旧来の報酬単位に戻すべきだと強く考えます。水道光熱費などのコストが国民生活全体を圧迫している現状がある中、現行の入浴介助加算の報酬体験ではとても続きません。何としてでも見直していただきたいところです。

上記の資料をご覧いただければお分かりの通り、通所介護事業の収支差率は1.0%となっております。

赤字でないだけまだマシ!という意見もあるかもしれませんが、事業として最終利益が1%しかでないのであれば、長期的な事業運営は困難と言わざるを得ません。

この状態では内部留保も確保できず、何かあったときの大規模修繕等もおぼつかないでしょう。

真剣に考えていただきたいと切に願う次第です。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

冒頭にも申し上げましたが、皆様どうか熱中症にご留意され、お元気にお過ごしになられることをお祈りいたします。 それでは、次回の投稿をお楽しみに!!