在宅生活の限界点を高めるということ ②地域との更なる連携強化

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

前回のコラムで「在宅生活の限界点を高める」というテーマを掲げ、その背景となった「社会的入院」について取り上げました。

 

今回はその核心に触れ、私たちが考えている「地域との更なる連携強化」についてお伝えしたいと思います。是非お付き合いいただければ幸いです。

 

〇社会保障費の抑制・適正化は至上命題

超高齢化が叫ばれて久しい中、社会保障費の抑制・適正化は、もはや避けることができない状況となっております。

理由は、皆様ご承知かと思いますが「少子化」です。

厚生労働省が発表した統計によると、2021年の出生数は84万832人で、前年より24407人減少。合計特殊出生率は1.34であり、前年より0.02ポイント減少(前年は1.36)しております。

コロナ禍が終息しない中、今後ますます低下していく可能性があり、非常に深刻な問題です。

 

また、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれております。

 

このように、少ない生産年齢人口で、高齢者を支えなければならないわけですから、増え続ける社会保障費を抑制する方向性となるのは、もはや避けることは不可能と言っても過言ではありません。

 

 

〇在宅生活継続のため、社会資源をどう知り、活用するか?

「社会資源」という言葉、よくお聞きになる言葉かと思います。

 

社会資源とは、簡単に申しますと「支援に活用できるヒト、モノ、カネ、情報」のことです。

社会資源を上手に活用することで、在宅での生活を継続する可能性は高まります。

 

私達支援者は「専門職」とよく言われます。ご利用者様からすれば、私達は専門家なわけです。

専門職である私達が、社会資源に関する情報や知識について、ご利用者様やご家族よりも数歩先を行く必要があります。

 

数ある選択肢をご提供し、その中からご利用者様に選んでいただく。

これはケアマネジメントにあたって求められている手法でもあります。

簡単ではありませんが、必要なことですね。

 

社会資源もたくさんあります。例えば・・・

 

(看護)小規模多機能型居宅介護サービスの活用

訪問診療の活用

成年後見人・任意後見制度の認知と活用

全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」

 

等々あります。

新型コロナウイルス感染症関連でも、打撃を受けた企業等には補助金・助成金や貸付制度もあります。

 

例えば成年後見制度について、江戸川区では「成年後見制度利用支援事業」というものがあります。

ご本人の所得や資産が少なく、後見人等への報酬費用を負担することが困難な方に、報酬費用の全部または一部を助成するというものです。

 

必要な要件を満たした上で申請し、支援決定となった場合には、在宅の場合月額28,000円、施設入所あるいは長期入院されている方には月額18,000円が支給されます。

※詳しくは江戸川区ホームページ(下記リンク)をご参照ください。

 

また先程「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」サービスをご紹介しました。

これは「通い」「訪問」「泊り」に「訪問看護」の機能を備えたサービスです。

とうきょうと福祉情報ナビゲーションの調べでは、東京23内にも60ヶ所弱しか整備されていません。

 

江戸川区内にも、今後看多機サービスの整備は進んでいくと思われます。

看多機サービスの特徴としては、下記が挙げられます。

 

・利用者の体調やご家族の状況に合わせ、サービスを提供

・顔なじみの看護職や介護職が対応するので安心

・利用手続きが1回でよい

・専属のケアマネジャーが配置されている  

 

等々、ご利用者様やご家族の状況によっては、大変使い勝手のよいサービスであると言えます。

 

もちろん、利用にあたっては条件があり、すべての方々が平等に利用できるとは限りません。

しかし、私達支援者がこういう情報や見識を持っていることで、在宅限界点の低下を食い止められるかもしれません。

 

ご利用者様の支援に直接関係のない情報であっても、ご家族に役立つ情報かもしれません。

自分たちで解決できなくても、関係機関につないであげるだけで充分。それも立派な支援です。

 

社会資源と申しますと、どうしても「福祉」の観点で考えがちです。

しかし社会資源は、福祉関連に限りません。

確かに、介護保険や医療保険、公費サービスがメインにはなるのですが、私達支援者がもっと視野を広げて情報収集をすることで、在宅限界点が高まることが期待できるでしょう。

〇もはや当たり前!!「医療・介護の連携」に対する当法人の取り組み

随分前から、業界では「医療と介護の連携」が叫ばれています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、ICTの導入もますます進んできています。

まだまだ十分ではないものの、医療ではオンライン診療も導入され、サービス担当者会議もITを駆使して可能になってはきています。

国もITの活用は推進しており、人材不足の解消の起爆剤になるのではという期待もあります。

 

医療と介護の連携は、必要であると認識はしていても、実際には難しい問題もあり進みません。

医療側と介護側の間には「見えない(見える?)壁」があり、コミュニケーションが取りにくいという根深い問題があるのも、事実です。

 

しかし、ウィズコロナに進んでいく中、もはや悠長なことを言っている場合ではなくなっています。

 

当法人では、かねてから「医療・介護の連携」の重要性を理解し、推進に向け力を入れております。

 

 

さる2021年10月14日に第6回オンライン座談会「MCSで多職種連携を変革しよう!~実践編~」」を開催いたしました。

ありがたいことに、多くの方々にご参加いただいたのですが、この座談会において「メディカルケアステーション(MCS)という連携ツールをご紹介し、実際に医療・介護の連携手法について意見交換を行いました。

マーケティング用語に「ネットワークの外部性」という言葉があります。

ネットワーク外部性とは、同じ財・サービスを消費する個人の数が増えれば増えるほど、その財・サービスから得られる便益が増加する現象を指します。

 

この考え方は、主として通信ネットワーク等において顕著に見られます。

何故なら、どれだけよい機能を備えていても、利用する方が少なければメリットがないからです。

 

その昔、携帯電話を持っている人は「奇特な人」扱いだったそうです。

実際に所有していても、利用する人が少ないので、まるで使い物にならなかったわけです。

 

しかし今や、携帯電話を持っていないという方はまずいないでしょう。

このように、圧倒的な利用者数が確保されたから、現在ではスマートフォンというイノベーションが実現したのです。

 

当法人では、ICTツールを活用して、「医療介護の連携」活動を真剣に取り組んでおります。

 

ただ、私達だけが声高に叫んでも、どうにもなりません。

訪問診療の先生やケアマネさん、薬剤師さん、介護士さんといった関係者が、患者さんを中心に置いて一緒に支援していく。これが必要です。

サービス事業のいかんにかかわらず、患者さんに関わっている方であれば、どなたのご意見も大変貴重ですし、自由闊達な意見を寄せていくことそのものが、在宅生活を継続させる力になります。

 

見えない垣根が今もありますが、もうそのようなことを言っている場合ではありません。

私達は、これからも真摯に地道に、患者様のために活動をしてまいる所存です。

そして、関わって下さる皆様のために、少しでもお役に立つよう努力いたします。

 

〇当法人の今後の構想

現在、当法人では訪問看護・リハビリサービスを提供しておりますが、今後はこのサービスをさらに強化することはもちろん、新たなサービスの導入も検討しております。

 

例えば、居宅介護支援事業所の開設です。

外部との連携を図っていくためには、まず法人内で多職種連携を図る仕組みを作っていくことが必要であると考えております。

 

そのために、当法人では研鑽を積み、情報を集め、今何をすべきかを見極めつつ進めていきたいと思います。

 

今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。

当法人では、今後も皆様にとりまして有益となる情報を、活動報告として提供させていただきたく存じます。

どうか今後もお引き立ていただけますと幸甚でございます。

 

 

(参考URL)

厚生労働省統計2021年 日本の出生率・死亡率等

 

一般社団法人全国医療介護連携ネットワーク研究会

 

江戸川区ホームページ「成年後見制度利用支援事業」

 

全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」

 

メディカルケアステーション(MCS)

 

総務省統計

 

とうきょう福祉情報ナビゲーション(看多機)

 

公益社団法人日本看護協会HP