こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
桜もすっかりなくなり、ここ最近は蒸し暑い日が続いております。
毎年GWになると、日によっては気温30度近くなることもあり、なかなか身体が順応できませんよね。
体調を崩しやすい時期になりますので、どうぞ皆様ご自愛くださいませ。
私達もご利用者様に対して、水分補給や換気、更衣等で体温調節し、体調を崩されないように留意したいと思っております。
さて2021年4月に介護報酬改定があり、2年目に突入しました。
もうすでに、国では次回2024年の報酬改定に向けて議論が始まっております。
しかも、次回は診療報酬との同時改定となります。
診療報酬2年ごとに、介護報酬は3年ごとに改定されますので、6年に1度は同時改定がなされるのです。
何だか織姫と彦星のようですね(笑)
冗談はさておき、過去の同時改定の際には結構大きな動きとなるケースが多いです。
今始まったことではないのですが、財務省が次回介護報酬改定に向け、何やら不穏な動きをしているのです。
今回は、先日行われた財政制度分科会で議論された件につきまして、取り上げさせていただければと思います。
皆様どうぞお付き合いくださいませ。
社会保障の現状
さる4月13日に財政制度等審議会「財政制度分科会」が開催されました。
HPに貼付されていた資料を読ませていただきましたが、いくつかある基本論点のうち、筆者は2点に着目しました。
ひとつは「日本は世界的に見ても受益と負担のバランスが不均衡であり、中福祉低負担の状態である」という点。
もうひとつは「社会保障関係費について実質的な増加を『高齢化による増加分』に相当する伸びにおさめる努力が続けられている」という点です。
日本は早くから国民皆保険制度を構築し、日本全国どこの医療機関に行っても一定水準の医療サービスを受けることができます。
私達はこれを当然のこととして享受しておりますが、決して簡単なことではありません。
介護についても、世界にも類を見ない程早く「超高齢化」を迎え、介護保険制度を作って20年以上となりますが、世界に誇れるロールモデルであると言っても過言ではありません。
個人的には、これほどまでに緻密に設計された社会保障制度はないとすら思うのですが、それを「中福祉」と解釈してしまうのか・・・
筆者は少しショックでした。
「低負担」という部分については、全くもってその通りだと思います。
特に高齢者への負担を極力減らし、ギリギリのところで制度を維持してきたということ。
アメリカ等では考えられない位、日本の社会保障は国民に対して少ない負担で利用できる仕組みであることは間違いありません。
財務省は介護サービスを介護保険から徹底的に削ろうとしている。
今回の財政制度分科会では、介護に関することもかなり議論されました。
資料を拝見した率直な感想は、財務相としては介護サービスを介護保険から徹底的に切り離そうとしているな、ということです。
もちろん、この話は今に始まったことではありません。
ずいぶん前から、財務省は介護分野に対する社会保障費適正化を図ろうと画策しておりました。
しかし、厚生労働省との折衝により、多くの部分については議論の俎上に乗りながらも報酬改定においては先送りとなっています。
新型コロナウイルス感染症のまん延もあり、その対策として莫大な税金が投入されました。
経済を立て直すとともに、社会保障費の見直しは絶対的な至上命題であります。
今回ばかりは、財務省も妥協することなく徹底的にやってくるのでは、と危惧しております。
具体的な指摘① 福祉用具貸与の見直し
以前もこのコラムで取り上げさせていただきましたが、「福祉用具貸与のみをプランに位置づけた場合の報酬引下げ」を、財務省は本格的に進めようとしております。
居宅介護支援事業所が報酬を算定するには、ケアマネさんが介護保険サービスをケアプランに位置付けなければなりません。
そうした中、財務省側が指摘したのが「介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した」ケースが一定以上ある、という点です。
何だかいいがかりにも聞こえ、ガッカリしてしまいますね。
その「一定以上ある」という指摘の根拠が、財政制度分科会資料にて取り上げられたのです。
上記の資料を拝見すると、過去に調査したあるデータが記載されていました。
それはケアマネさんに対する調査なのですが、「過去1年間で『本来であればフォーマルサービス不要と考えていたが、介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した』経験があるか」という問いに対し、約15%のケアマネさんが「イエス」と回答したとのこと。
この数字をもって「一定以上ある」と財務省は捉えたということなのです・・・
さらに「歩行補助杖を自費で購入」した場合と、「ケアマネジメントを通じて福祉用具貸与」とした場合の費用額を比較したデータもあります。
購入した方が安いのに、意味もなくケアプランに位置付けたことにより、3年間で約40万円の費用を「無駄遣いしている」と言っているのです。
ここを論点として、財務省は「福祉用具の貸与のみを行なうケースについては居宅介護支援費の引下げを行なう」ことを提案しています。
具体的には、福祉用具をケアプランに位置づける場合に、居宅介護支援費を変動(減額)することも含みます。
このように、杓子定規にものごとを捉えてしまって本当によいのでしょうか?
具体的な指摘② 軽度者の総合事業への移行
財務省は、軽度者への訪問・通所介護について介護保険から外し、総合事業への移行を求めています。
これについても現在に始まった話ではなく、すでに前々から議論されていることではあります。
「軽度者」とは要介護1や2の方々のことです。
軽度者については介護保険から切り離し、地域の実情に応じたサービス提供を実施すべきであると、財務省側は指摘しております。
これまでの論点を分析すると、訪問・通所介護のみのプランについても、居宅介護支援費の引下げを画策しているのでは、と斜に構えてしまうのですが、考えすぎでしょうか?
「サービス内容に応じた居宅介護支援費(報酬)」を構築するということは、極論を言えば利用者様のサービス利用を国が規制する、という解釈もできます。
もちろん、利用者様に選択肢を提示し、必要なサービスを適切に提供するというのは必要です。
しかし、財務省が考える「選択サービスによって居宅介護支援費が変動する」ことを進めれば、弊害も出てくると予想されます。
詳しくは後述しますが、分科会の重要論点である「ケアマネジメントに利用者負担」が本当に導入された場合、利用者様としては少しでも負担軽減させる方向にシフトする可能性が生じます。
ご利用者様にとってよりよいケアマネジメントを行おうと思っても、もっと安くしろとか、負担の多いサービスはいらないといった話が横行しないとも限りません。
そうなれば、居宅介護支援事業所側の収入は確実に減っていきます。
介護支援専門員のなり手が、ますます減っていくことも予想されます。本当に恐ろしいことです。
具体的な指摘③ ケアマネジメントの利用者負担の導入
そして筆者がもっとも問題視しているのが、先程も少し触れましたが「ケアマネジメントの利用者負担の導入」を進めようとしている点であります。
いろいろ読み込んでいきますと、不安が尽きなくなってしまいます。
多くの識者がおっしゃっていますが、サービス内容に応じた報酬体系を一貫して進めていくことにより、適切なケアマネジメントを阻害する危険が高まるのではないかと思います。
そもそもケアマネジメントは、利用者様の生活の自立に資するためのものであり、知識と経験を持ったケアマネジャーさんが他職種と連携し支えるというのが、考えの根幹です。
これが阻害されてしまえば、利用者の自立支援はどうなっていくのでしょうか。
先程、福祉用具のみのケアプラン作成の話で「フォーマルなサービスが不要だから福祉用具貸与を位置付けた」ことが問題になっていることに触れました。
そうなってしまうのは、例えばボランティアさんや民生委員さん等といったインフォーマルサービスを位置付けた場合に、居宅介護支援費が算定できないルールにも問題があるからではないでしょうか!
「適切なケアマネジメントが必要」というのであれば、介護保険サービスをケアプランに入れなくても報酬が発生するしくみを整えればよいのです。
そうすれば、必要がないのに福祉用具貸与を位置付けるという「言いがかり」のような話もなくなっていくのではないかと考えます。
財務省の指摘する問題は概ね解決できるではありませんか!
今後私たちが考えるべきこと
私たち支援者は、どうしても介護保険や医療保険のサービスを中心に考えてしまいがちです。
しかし本来、高齢者の支援はそれだけに留まりません。
介護給付の利用に縛られず、多様な地域資源で支えるケアマネジメントを評価すること、これはまさにケアマネジメントの真骨頂であります。
今回の財務省が掲げる論点には非常に乱暴なものがあり、そこは到底看過できません。
日本介護支援専門員協会も、今回の財務省の考えに対して強い申し入れや提言を行っているようですが、各業界団体は闇雲に反対するのではなく、しっかりエビデンスを提示して必要性を訴えなくてはならないと思います。
私達サービス事業者や援助者も、常にこういったトレンドに目を光らせていく必要があると、改めて感じた次第です。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、日頃お世話になっている皆様にとって少しでも有益な情報を発信してまいる所存でございます。
どうか今後ともお引き立ての程、よろしくお願い申し上げます。
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