こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
梅雨明けから厳しい暑さが続いておりますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?
全国の小中学校・高等学校では、このコラムが公開される頃にはそろそろ夏休みが始まる時期かと思います。
宿題に追われることになるでしょうが(笑)、よい思い出作りができるようにお過ごしいただければと思います。
子育てしていれば、夏休みにお子様をどこかに連れて行くことになるでしょう。
ここ2年ほど、コロナ禍で自粛されている方も多かったことと思いますが、お盆で帰省されるという方も多いことと思います。
介護・医療業界でも、子育てしながら活躍される方はたくさんいらっしゃいますが、夏休みが始まると勤務スケジュールを組むことに苦心しがちです。
これはシフトを組む事業所側も、そして働くスタッフさん側にとっても難しい問題です。
両立を図るためには、事業所側の理解は不可欠ですし、同時に働くスタッフさんとの協力も絶対に必要です。
今回は、訪問看護師の子育て事情について取り上げ、今後仕事と家庭の両立をどう図っていくべきなのかについて考えていきたいと思います。
看護師における「仕事・家庭との両立」の現状
少し古い資料になりますが、全国の医療機関・介護施設等における慢性的な看護師不足について何とかしようと、厚生労働省が主催する審議会が開催されたことがあります。
2012年に開催された検討会で、看護職員が退職する理由に関する調査結果が公表されておりましたので、ご紹介いたします。
こちらを見ますと、出産・育児のために転職を余儀なくされたと回答した人が、全体の2割以上となっていることがわかると思います。
複数回答になっておりますので、退職するする理由は1つとは限らないわけですが、それでも出産・育児のために退職をするというのは、非常に大きな問題と言わざるを得ません。
問題はそれだけではありません。
この表を見ていただくと「結婚のため」「家族の健康問題・介護のため」を退職理由としているケースもあります。
これは、介護・医療に限らず、すべての業種にあてはまることかとは思いますが、従業者は自身のライフスタイルに大きな変化が生じると、転職・退職をする(せざるを得ない)ことになりがちであると言えます。
結婚すると、配偶者のお仕事の状況に多かれ少なかれ影響を受けます。
訪問看護師は女性が非常に多いわけですが、旦那さんのお仕事が忙しく協力が得られにくい場合ですと、自身の仕事にも何らかの影響を受けることになります。
出産や育児となれば、なおのことです。
変則シフトや夜勤があるような職場では、どうしてもご家族の理解が不可欠です。
しかし、すべての看護師さんや介護職の方等が、全面的な理解をもって働けている方ばかりではありません。
どこかで懸命にやりくりをして、何とかこなしているのが現状であると言えるのではないでしょうか?
ご家族の介護をされながらお仕事をされている方も、たくさんいらっしゃいます。
特に介護の場合、その期間が長期化しかねませんので、深刻な問題になりがちです。
人間関係の問題や勤務先の社風、待遇の問題等、これまた深刻な問題も離職率が高い要因の一つで問題ではありますが、離職理由が職員のライフスタイルの変化に伴うものであれば、それは何とかしなければなりません。
特に優秀なスタッフさんの離職は、理由はどうあれ事業所にとっては痛い損失ですから・・・
看護師が育児する中で負担になりがちな「夜勤業務」
先にお示しした調査資料で、離職理由の中にあったものの中に「夜勤負担」がありました。
夜勤業務は、特に病棟や介護施設においては絶対に欠かせないものです。
24時間の医療・介護が成り立っているのは、夜間早朝を問わず業務を担う方がいらっしゃるからです。
ですので、私たちはそういう方々には感謝しなければなりません。
しかしながら、上記調査資料で挙がった「結婚」「出産」「子育て」「介護」があるために、どうしても夜勤が担えないという方がたくさんいらっしゃるのも現状です。
特に今回のテーマである子育てにおいては、お子様の預け先が見つからないとか、いざとなったときに家族の協力が得られにくいといった理由で、なかなか夜勤のお仕事はしにくいものです。
もちろん、子育てしながらも夜勤のお仕事をされている方もたくさんいらっしゃいますが、本題の趣旨に外れるため、ここでは敢えて取り上げないことにします。
夜勤ができなくなれば、収入が下がるケースもあるでしょう。
また、看護師の中には、病棟ナースから離れると看護師としてのスキルが陳腐化してしまうのではないかと不安になるケースもあるでしょう。
いろいろ理由はありますが、私たち医療・介護業界に身を置く者として一番恐ろしいのは、ライフスタイルの変化を理由として、やる気はある看護師が全く活躍できなくなってしまう、ということなのです。
それだけは、何としても食い止めなければなりません。
子育て中であっても働きやすい職場
では、子育て中の看護師が活躍できるフィールドはないのでしょうか?
皆様ご存知のこととは思いますが、夜勤のない職場はたくさんあります。
例えばクリニック、デイサービスやデイケア、保育園等々・・・
訪問看護も、子育て中の看護師でも働きやすい職場の一つと言えます。
訪問看護ステーションでは、看護師が病気や障害を持つ方の自宅に訪問し、主治医の指示の下に看護を行います。
訪問看護の職場には土日休みのところも多く、変則的なシフトはほとんどなく、夜勤も基本的にはありません。
当法人も、仕事と育児の両立には大変力を入れております。
実際に子育てをしながら仕事をするスタッフはたくさんいますし、産前産後休暇はもとより、育児休暇も取得できる体制が整っています。
ご興味がある方は、下記「採用サイト」を是非ご覧いただければと思います。
いかにしたら、育児中の看護師が輝けるか?
手前味噌ではありますが、当法人はスタッフの子育て支援に力を入れているという自負があります。
しかしそれでも、まだまだ十分ではありません。
全国の訪問看護ステーションにおいても、会社のリソースの問題もあり、意欲はあってもなかなか着手できずに地団駄を踏んでいる経営者も多いことと存じます。
だからと言って、できない言い訳ばかりを並べても法人の成長は見込めません。
頭から汗が噴き出る位考え、何らかの方策を考えて実行していかなくてはならないのです。
例えば・・・
- オンコール対策
先ほど、訪問看護では基本的に夜勤がないと申し上げました。
しかし、夜勤ではないものの「オンコール当番」というものが存在します。
事業所によりけりですが、常勤看護師で概ね月に5~6回程度オンコールを担うようです。
少し古いデータですが「一般社団法人全国訪問看護事業協会」が行った「訪問看護ステーションにおける24時間体制に対する調査」によると、全体の8割以上が「緊急時訪問看護加算(介護保険)」「24時間対応体制加算(医療保険)」を算定しています。
下記の表をご覧くださいませ(上段:介護保険、下段:医療保険)。
上記加算を算定しているということは、訪問看護ステーションが夜間早朝含めたサービス体制を敷いているということであり、訪問看護師がオンコールにて対応していることを意味します。
夜間や早朝のオンコールは、不安が付きまといます。
何もなければよいのですが、それでも自宅等で緊急用のスマホ等を枕元に置き、入電すれば対応し、いざとなれば出動するわけですから、いつでも動ける態勢を整えなければなりません。
正直なところオンコールは、未経験の方や経験の浅い看護師さんには結構な負担になります。
経験豊富な看護師さんでも、不安がないはずはありませんが・・・
夜間早朝のオンコール負担の軽減は、当事業所でも今後考えていかなくてはならない重要な事項の一つであります。業務の平準化を考えることが重要です。
業務の平準化により負担軽減が図られれば、子育てしながらでも無理なく業務遂行できる可能性が高まります。
また、そもそも夜間早朝対応を回避するための努力も必要です。
日中から患者様の状態をしっかり把握し、夜間に急変するリスクがある場合は早めに訪問診療の先生等に相談し指示を受けたり、日中のうちに訪問して然るべき対応をしたりして、夜間オンコールの負担を減らすことも有効です。
これは簡単ではありませんが、研修や先輩スタッフの同行等のOJT等を活用することで、在籍する全スタッフの意識とスキルを高める努力は法人として必要でしょう。
- 柔軟なシフト体制
ビジネス用語に「組織スラック」という言葉があります。
スラックとは「余剰」「弛み」を意味しますが、一見すると「余剰はよくないのでは」と思うかもしれません。
しかし、ここでいうスラックは、無駄を意味するものではありません。
組織を上手に動かすには、資源の「余裕」がある程度必要であるということです。
資源に余裕があれば、組織活動がリスク許容的に働く形になるため、それだけスタッフさんの処遇を高め、ひいてはご利用者様へのサービス向上に振り向けることができます。
決して簡単にいく話ではありませんが、法人の意識の持ち方で変わっていくと思われます。
先ほど申し上げた業務の平準化ももちろんですが、経営資源の選択と集中を意識することが必要です。
訪問看護師が一番やらなければならないことは、ご利用者様のケアです。
この、最も重要なことが十分できていない要因があれば、取り除く努力をしなければなりません。
もし、煩雑かつ膨大な事務仕事を訪問看護師がすべて担っているという状況であれば、業務のアウトソーシング等を検討することもあり得るかもしれません。
当然、直接的なコミュニケーションが重要なのは言うまでもないですが、オンライン会議システム等のICT技術を駆使すれば、柔軟な勤務体制を構築することができます。
そうすることによって、場合によっては人員を増やせなくても業務に余裕ができ、柔軟なシフト体制が構築できるかもしれません。
子育てしながらも、十分活躍の機会が広がることが期待したいところです。
- お子様の預け先
お子様の預け先を見つけるのは一苦労です。
事業所によっては、企業内託児所を完備しているところもあるようですが、経費もかかり簡単にはいきません。
しかし、子育て中の看護師さんを確保するには、お子様の預け先について企業は素通りするべきではないと思います。
子育て中の看護師さんにとって最も不安なのは、お子様が体調を崩してしまうケースです。
預け先がなくなってしまうのですから、当該スタッフの勤務に支障を来たします。
上手に訪問調整する等、事業所内でフォローできる体制が確保されているなら安心でしょうが、そうでなければ休まざるを得ません。
もちろん、お子様の病状にもよりますが、軽度であれば事業所内にお子様を連れてきて、周囲のスタッフの見守り体制があれば、そのスタッフさんは休まなくても済むかもしれません。
- いざという時の相談窓口
事業所内で、例えば管理者や経営者に対してスタッフさんが気軽に相談できる雰囲気を作ることも重要です。
そうでなければ、お子様が熱を出してしまった際にスタッフさんは相談しにくくなり、結果長続きせず離職するということになりかねません。
いざという時の相談窓口は、事業所外にもあります。
子育て中の期間のみに留まらず、子育て後の看護師復帰を応援する行政の支援サービスもあります。
厚生労働省の委託事業「仕事と育児カムバック支援サイト」は、産休・育休からの復帰を予定している女性、出産・育児を理由に退職し再就職を目指す女性、働きたいと思っている子育て中の女性を支援しています。
再就職支援やファミリーサポートセンター、保育所、各種セミナーなど、仕事復帰を目指す女性に役立つさまざまな情報を提供しています。
育児休業から職場復帰された方の体験談、メールでの相談対応などのコンテンツもあります。
こういう事業を行っているのは、正直言ってよく知られていません。
法人レベルで、子育て支援に向けた情報収集をしていくことが必要だと思うのです。
まとめ
長くなってしまい申し訳ありません。
先程申し上げた
介護・医療業界に関わらず、仕事と家庭の両立は至上命題になります。
「求人を出しても人が集まらない」と嘆きたくなる気持ち、痛いほど理解できます。
しかし、慢性的な看護師・介護職不足と言われる中、発想を転換することにより少しでもそれを解消できるのであれば、この不確実性の高い世の中だからこそ必要なのではないでしょうか。
筆者はそう思ってやみません。
ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、訪問看護師の魅力ややりがいについてこれからも発信し、同時に当法人の様々な取り組みについてご紹介してまいります。
そして、ユニケアのファンを1人でも多く増やすことにより、私たちが提供する訪問看護サービスの質をもっと高めていけるよう努力いたす所存です。
当法人の取り組みにご興味のある方は、お気軽にご連絡くださいませ。
今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
【参考URL】
看護職員需給見直しに関する検討会(2012年12月1日開催)資料
一般社団法人 全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査報告」