訪問看護ユニケアが考える「ケアマネとはどんな存在なのか」

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

朝晩だけでなく、日中も肌寒い日が増えてきております。

近年の気候は温暖化も手伝ってか、秋が短くて寒い冬がいきなりやってきたりと、従来のようにはっきりしない陽気が多いようです。

 

秋の季語として「小春日和」という言葉があります。

秋の終わりごろから冬にはじまりにかけて、暖かく穏やかな陽気のことをいいます。

筆者はこの「小春日和」が大好きです。

皆様におかれましては、身も心も「小春日和」のように暖かく、そして穏やかであっていただきたいと思います。

 

もう10月も終盤、2022年も残すところあと2か月余りとなってまいりました。

今年を振り返るのはまだまだ早すぎますが(笑)、皆様どうかご自愛くださいませ。

 

本日のテーマ

筆者は仕事柄、多くの介護関係者の方と接する機会があります。

特に接触の多いのが、ケアマネさんです。

 

最近始まった話ではなく、従来からケアマネさんから伺うお話は多々ありますが、その中で特に多く聞かれることに・・・

 

・ケアマネの仕事は本当に大変。何でこんなに忙しいのであろうか。

・「こんなことまでケアマネがやるのか」ということまで依頼される。本来の業務まで手が回らない。

・担当ケースが一杯でこれ以上受けられない。

・ケアマネはあちこちで不足しており、このままではご利用者様は「ケアマネ難民」に陥ってしまうのではないか。

 

といった内容です。

特に最近、上記のことについてはよく耳にするのです。

 

ユニケアではこれまでも、ケアマネさんの実務の現状については多く取り上げてまいりましたが、今回は「ケアマネとはどのような存在なのか」について、原点に立ち返る形で取り上げさせていただきたいと思います。

 

ケアマネの本来業務

ここでは「居宅ケアマネ」を前提にお話いたしますが、ケアマネさんのお仕事は一体どのようなものがあるのでしょうか。

本当にケアマネさんの仕事は多岐にわたるのですが、筆者は一般的に言われるケアマネ業務について、大きく分けて2つあると考えます。

 

1つは、ケアプランを作成し給付管理を行うことです。

ケアプランを作成するにあたっては、インテークをし、時に要介護認定の申請を支援し、アセスメントシートを作成し、居宅介護支援の契約をするという初期の段階(順不同)、そして毎月のモニタリング等を行った上でプランの見直し等も含まれています。

また、ケアマネさんはご利用者様の要介護度に合わせ、区分支給限度基準額の範囲内に収まるようにプランニングします。

そして、各介護サービス事業所と連携し、介護給付費の管理も行っていきます。とても重要な仕事です。

 

そしてもう1つは、ご利用者様や各サービス事業所、医療機関等との連絡調整です。

 

介護保険サービスには、訪問介護や通所介護等があるわけですが、事業所の数は非常に多く、ご利用者様が自分にあったサービスを選択することは極めて困難です。

そこで登場するのがケアマネさんです。

ケアマネさんは、さまざまな事業所についての情報をご利用者様に複数ご提案し、説明した上で、選択していただきます。

また、ケアマネさんはご利用者様の意向を代弁する機能も持ちます。

ご利用者様が事業所に要望やクレームを直接言いづらい場合、ケアマネさんが代弁して事業所に意見を伝えたり、反対に事業所の考えを利用者に伝えたりすることもあります。まさに「調整役」です。

 

ケアマネは確実に不足し、そして高齢化している

介護労働安定センターという団体で毎年行われている「介護労働実態調査」というものがあります。

この調査結果を見ていきますと、介護労働者の待遇や賃金、保有資格などの実態が明らかになります。事業所に送付し、事業所が回答するものと、従事者が回答し、返送します。

 

その中で、大変気になるデータを紹介いたしましょう。

それは、介護保険制度の要と言われる介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均年齢です。

上記をご覧いただくと、居宅ケアマネの平均年齢は「53.4歳」であることがおわかりいただけますでしょうか?

 

居宅ケアマネとしてお仕事されている方のうち、60歳以上が25.1%。全体の4分の1にあたります。

もっと深刻なのが、40歳未満のケアマネは6%にも満たないという点です。

この状況で、現在の60代以上のケアマネさんが引退された後、どのように埋め合わせていくのでしょうか。

 

もちろん、受験資格の一つとして実務経験5年以上という要件がありますので、若い人が多くないという現状は理解できなくはありません。

それにしても、あまりにも年齢構成が歪すぎるのです。

 

介護職員の処遇改善については国も積極推進しておりますが、ケアマネの待遇改善は進んでいるようには思えません。

介護職員とケアマネの賃金格差はほぼなくなっているのが現状ではないでしょうか。

むしろ夜勤回数などによっては、ケアマネよりも給与が高い介護職などいくらでも見かけるようになりました。

筆者がお付き合いのある某訪問介護事業所では、驚くような年収を頂いている訪問介護員さんが2名もいらっしゃるとのこと。

 

上記に加え、ケアマネ試験の難化や更新研修が必要であったり等、ケアマネさんへの負担はかなりあります。

以前よりも、ケアマネを志す人が減っているようにも思えます。

このような現状から、業界では深刻なケアマネ不足に悩まされています。これは厳然たる事実です。

 

こんなことまで行っている「ケアマネ」の現状

先程、一般的に言われているケアマネさんの業務についてご紹介いたしました。

では、実際のところはどうなのでしょうか?

 

居宅ケアマネの仕事を経験されている方でしたら、恐らく異論を唱えられることと思います。

理由は、ケアマネさんが行っている仕事はこれだけに留まらなないのが現状だからでしょう。

 

ご利用者様に何かあった場合、「とにかくケアマネに連絡しよう」となりがちです。

もちろんそれは必要です。ケアマネさんとの情報共有が不足すると、うまく回っていかずにご利用者様への不利益にもつながりかねません。

 

しかし、介護業界とは離れた世界にいる方がケアマネ業務の実情を見た時に、「こんなことまでするのか!」と驚かれることでしょう。

 

認知症のある独居のご利用者様がご自宅から出ていかれ、行方不明となってしまった事例があるとしましょう。

これは実際に起こり得ますし、筆者も目の当たりにしたことがあります。

 

 

ご利用者様が行方不明になった。大変な一大事です。

ご家族がいらっしゃれば、一義的にはご家族が主体になって探したりするでしょう。しかし、ご家族が遠方にお住まい等ですぐに対応できないとなった場合はどうでしょうか?

 

そういう場合に、ケアマネさんが出動するケースが多いのです。

ご家族がすぐに動けない場合や、そもそも身寄りのない場合、ケアマネに連絡することになりがちです。

ケアマネさんも人間ですから、お休みの日も当然あります。

しかし緊急事態であればそんなことも言ってはいられない。連絡が入れば勤務時間外であっても動かざるを得ない。

 

独居高齢者の多い地域では、自然と担当ケアマネが家族と同様の役割を担うようになり、本来の業務ではないと思われる仕事が際限なく増えてしまいます。

上記のような行方不明事件は非常に大ごとで、頻繁にあってはいけないわけですが、病院搬送への付き添いや入院同意書にサインを求められるといったことは、恐らく多くのケアマネさんがご経験されているのではないでしょうか?

このような現実が「日常的業務」になってしまってよいのでしょうか?

 

「遠くの親族よりも、近くのケアマネ」が、ケアマネさんを苦しめる

少子高齢化により、家族の構成やかかわり方は多様化しています。

核家族化が浸透して久しく、高齢の独居者や高齢夫婦の世帯が急増していることは、皆様もご存知のことと思います。

 

かつては「遠くの親戚より近くの他人」という言葉が聞かれましたが、介護の世界では「遠くの親戚より近くのケアマネ」のように思えます。

 

要はケアマネさん等が、当該ご利用者様の「ご家族」と同様の役割を担っているということが問題だと思うのです。

「地域包括ケアシステム」という言葉が聞かれるようになって数年。もはやこの業界の常識となっています。

 

確かに、地域包括ケアシステムという考え方は大変重要です。

しかし、その仕組みを支えている原動力の一つが、居宅ケアマネの善意による行動であったとする場合、それは社会にとって望ましい状態と言えるのでしょうか。果たして、それは健全な状態と言えるでしょうか。

もちろん、ご利用者様の権利擁護をすることは、介護福祉に従事する人々にとって重要な責務であることは間違いありません。

ご利用者様の権利と尊厳を守り、様々な困りごとを関係者と一緒になって解決していくという考え方自体は、とても重要でかつ尊いものであるといえるでしょう。

 

しかし、だからといってケアマネさんが日中夜間問わず、ご利用者様の家族同様に支援するというのはいかがなものでしょうか?

「仕事柄仕方がない」としてしまっていいのでしょうか?それが「当然」と括ってしまって本当によいのでしょうか?

 

ケアマネさんは「スーパーマン」ではない!

自分のプライベートを犠牲にして、担当するご利用者様を全て救済するというのは、そもそも無理があると思うべきではないでしょうか?

 

確かに、豊富な知識と経験を基に、生活保護の手続きから障害年金の申請まで何でもこなしてしまうような、スーパーマンのようなケアマネさんもたくさんいらっしゃいます。

 

そのようなケアマネさんは本当にすごいのですが、仕事の部分だけをクローズアップするのは非常に危険であると思います。

なぜなら、それを実現するために、そのケアマネさんが血のにじむような努力を重ね、また多くの犠牲のもとに成り立っているかもしれないからです。

 

スーパーケアマネさんを発掘するのもよいかもしれませんが、それ以上に「何が本来のケアマネ業務なのか」「何をする必要がないのか」を出来る限り示すことが必要であると考えます。

それを行うのは、介護事業法人の経営者レベルでは問題が困難過ぎるので、やはり国の仕事でしょう。

 

何としてでも、ケアマネさんに処遇改善を!

先程から申し上げているように、ケアマネさんの仕事は一般的に定義づけられている内容よりも多岐にわたっています。

そして最大の問題は、こういう現状に対して国は理解を示しているとは思うものの、この現状を解決しようという気概が見えにくいという点です。

 

今後、AIを駆使したケアマネジメントの仕組みを構築すべく、いろいろ開発が進んでいるようです。

AIをうまく利用することにより、確かにケアマネさんの業務負担軽減にはつながるでしょう。

 

ただ、人間でなければできないこともたくさんあります。

そこを考慮しますと、AIではどうにもならない部分について、生身の人間であるケアマネさんが今後も担うことになるでしょう。

そんな中で、ケアマネ不足や高齢化という現実について国が本気で目を向け、処遇改善や業務負担軽減に努めなければ立ち行かなくなるでしょう。

 

今こそ、ケアマネの処遇改善に踏み切るタイミングではないでしょうか?

すでに遅きに失したと言わざるを得ない話かもしれませんね。

 

介護職員処遇改善加算について、ケアマネさんにも十分恩恵が受けられるようにしてほしいです。

 

居宅介護支援費については、他サービスとは違って唯一利用者負担がないサービスです。

それは、介護を必要とされる方へのセーフティネットの一環であると、筆者は勝手に考えております。

 

しかし、居宅介護支援費に利用者負担を設けるべきであると、かなり前から議論が展開されているのです。

 

財源の問題もありますし、上記について個人的にはやむを得ない部分もあると思います。

しかし、利用者負担を議論するならば、同時にケアマネの裏事情、すなわちケアマネの本来業務について今一度真剣に向き合っていただき、基本報酬をアップさせる必要はあるのではないでしょうか。さらには、ケアマネさんの処遇を確実に高められるような仕組みを、どうか構築していただきたい。

筆者は真剣にそう思います。

 

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

ユニケアでは、今後も皆様にとってお役に立つ情報を定期的に配信してまいります。

当法人の取り組みに少しでもご興味をお持ちの方、是非お気軽にお問い合わせくださいませ!!

 

【参考URL】

令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について