こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
私達は日々、在宅で生活するご利用者様に対して訪問看護サービスを提供しております。
日々の定期訪問だけでなく、ご利用者様に何か緊急事態が発生した場合には迅速かつ適切な対応をさせていただきます。
緊急事態は日中に限ったことではなく、時に夜間・深夜、早朝にも発生します。
訪問看護ステーションでは、24時間起こりうる緊急事態に対応できるよう、オンコールを担当する者・夜間対応を行う者等、毎月綿密にシフトを組んでおります。
このようにして、サービス自体は止まることなく、24時間体制を構築しているわけですが、簡単には行かないことでもあります。
今回は、訪問看護サービスにおいて非常に重要である「24時間対応」の意義や実態、今後の方向性について一緒に考えていきたいと思います。
是非お付き合いいただけますと幸甚でございます。
訪問看護ステーションの24時間対応とは
2021年時点で訪問看護ステーションは、全国に1万3,000を超える事業所があります。
そのほとんどの事業所で、医療保険と介護保険の訪問看護サービスを提供しています。
医療保険と介護保険で、24時間対応や緊急対応に関する加算として、下記2種類があります。
- 医療保険:24時間対応体制加算
- 介護保険:緊急時訪問看護加算
それぞれ名称は異なりますが、加算の内容は同じと言ってよいと思います。
24時間対応体制加算(緊急時訪問看護加算)とは、「利用者またはその家族などから電話などで看護に関する意見を求められた場合に、24時間常時対応できる体制が整っている事業所」が算定できる加算です。
24時間対応について簡単にご説明すると、
- 24時間365日困ったことがあったら電話で看護の相談にのってくれる
- 電話で話して、訪問看護の必要があれば訪問してくれる
ということになります。
在宅で療養している利用者や家族にとっては、とても安心できるサービスだと言えます。
これらの加算は、事業所が都道府県や市区町村、地域を管轄する厚生局に届出をしていて、なおかつ利用者や家族が希望した場合に受けられるサービスとなっております。
対応の具体例
前述の通り、訪問看護ステーションではシフトによって24時間体制を構築しております。
ここでは、24時間対応の実施の具体的な内容について取り上げたいと思います。
ご利用者様やご家族より 24時間用のオンコール電話に連絡が入ります。
オンコールを担当する訪問看護師は、連絡や相談の内容を丁寧にお聴きします。
なかには相談者様が混乱されているケースもありますので、まずは気持ちを落ち着かせることが必要です。
状況を的確に理解するために、訪問看護師は様々なことを行っているのです。
ご相談内容をしっかり理解し、訪問看護師は迅速かつ適切な判断を行います。
看護師で対応可能と判断した場合は、電話にてアドバイスして終了することもあれば、必要に応じてご自宅を訪問し、しかるべき措置を講じます。
訪問看護師では対応が不可能と判断した場合は、訪問診療の先生に連絡し指示を仰ぎ、緊急往診を検討していただくケースもあります。
相談内容についてよくある事例としては、
- 膀胱留置カテーテルのトラブル(閉塞、血尿、自己抜去、ハルンパックの破損等)
- 体調不良(嘔吐あり、発熱、食欲不振等)
- 経管栄養のトラブル(経管の抜去、漏れ等)
- 喀痰吸引
- 排便トラブル
等、多岐にわたります。
緊急対応において注意すべきこと
私たちが注意すべきことはたくさんあるのですが、この時に特に重要なことがあります。
それは、私達看護師にとっては些細なことと思える相談でも、ご家族にとっては緊急事態であることを認識し、その想いを汲み取って差し上げることです。
これを忘れてしまうと、本当の緊急事態に対応することはできません。
「大したことないのに、またこの家族が大げさなことを言っている」等といった対応は、断じて許されないのです。
些細な異変にも気づけるマインド、そして迅速に対応できる行動力、これが重要です。
いかに他人事を「自分事」として捉えられるかについても、訪問看護の仕事には特に大切なことです。
これは訪問看護に限らず、医療介護全般、もっと言えばどのサービスにおいてもあてはまることであると思います。
24時間相談・緊急対応が可能であるという「安心」
実際、当ステーションのご利用者様に対しても、24時間対応や緊急対応をするケースはたくさんあります。
ご利用者様が安心して在宅生活、在宅介護を継続するためには、何かあった時にいつでも相談できる環境が整っていることが大切です。
胃瘻、痰の吸引、褥瘡処置等において、退院指導でご家族が確実に手技を習得し、指導を受けた内容を実践できていることが多いケースでは、緊急の電話連絡が少ないと考えます。
また、ご利用者様の体調変化を日中のうちに観察し、様子がおかしいと判断された場合は迷うことなく相応の対応をすることにより、極力夜間・深夜帯で動かなくても済むように努めてもいます。
救急病院も訪問診療クリニックも、夜間早朝の時間帯は当直体制になります。人員が手厚い日中に対応するに越したことはありません。
しかしそれでも、トラブルはついて回るものです。
相手は生身の人間ですから、こちらの都合に合わせてはくれません。
ですので、訪問看護ステーションには基本的に「緊急対応」「24時間対応」が求められているのです。
在宅で体調が変化した時やトラブルがあった時に ご家族は非常に戸惑い不安にもなります。
特に、在宅看取りを希望していたご利用者様のご家族も、実際に状態が悪化すると不安感が強くなり、せっかく覚悟を決めたのに自信をなくしてしまうというケースもあります。
このように、緊急でご連絡いただくケースは様々です。
とにもかくにも、ご利用者様の状態の変化を理解し、真摯に関わり、そしてご安心していただけるように対応すること、これこそが訪問看護師の最大の使命と言っても過言ではありません。
すべての訪問看護ステーションに24時間体制が整っているわけではない
訪問看護ステーションは、ご利用者様やご家族に安心して生活していただくために、24時間切れ目なくサービスが提供される体制構築が求められております。
そのニーズの高さは、統計にも表れております。
24時間対応体制加算(医療保険)を必要として算定している利用者数は年々増加しています。2003年には3万372人でしたが、2019年には16万6,461人にまで膨れ上がっています。
しかし現状では、残念ながらすべての訪問看護ステーションで24時間体制が整っているわけではありません。
算定状況は、24時間対応体制加算(医療保険)で88.3%(2020年7月時点)、緊急時訪問看護加算(介護保険)で82.7%です。
年々増加しているものの、まだ全体の10~20%の訪問看護ステーションは、利用者のニーズに応え切れていないということになります。
24時間体制が確保できない根本的な原因とは?
なぜ一部の訪問看護ステーションでは24時間体制が整備できないのでしょうか。
その理由について、考えられることを整理していきましょう。
令和2年度診療報酬改定の結果を検証した「在宅医療と訪問看護に係る評価等に関する実施状況調査」によると、24時間対応体制加算の届出を行っていない理由として「24時間の訪問体制をとることが難しい」「24時間の電話対応の体制をとることが難しい」が挙げられています。
こうした体制がとれない根本的な原因は、訪問看護ステーションに勤める看護職員の人員不足によるものです。
下記は、「看護職員規模別(常勤換算)の24時間対応体制加算の届出状況(令和3年)」を示したものです。
- 3人未満:届出率80.4%
- 3~5人未満:届出率86.5%
- 5~7人未満:届出率91.3%
- 7~10人未満:届出率93.8%
- 10人以上:届出率94.5%
看護職員の常勤換算数(実際に仕事に従事している時間)が少ない事業所ほど、24時間対応の体制が整備できていないことがわかります。
例えば、看護師が3人未満の事業所について考えてみましょう。
毎日交代で電話を待ち、真夜中でも電話がかかってきたら対応をしなければなりません。
必要に応じ、真夜中でもご利用者様宅へ訪問してサービスを提供し、その次の日も日中に勤務をするという状況になってしまいます。
「看護師3人未満」とは、管理者も自ら看護師として稼働している事例です。
訪問看護ステーションには人員基準があり、常勤換算で最低でも2.5人以上の看護師を配置しなければなりませんので、最低限の配置で運営する事業所ではこのようなことが十分起こりうるわけです。
また、小規模の在宅系サービス事業所では、法人の代表者や経営陣自ら現場にフル稼働しているケースも少なくありません。
本来、社長は「経営者」としての重要な仕事があるわけですが、まずは目の前の現場を切り盛りしなければならず、目一杯援助に奔走した後に夜な夜な社長業をするという話を、筆者はよく耳にします。
このようなことが常態化してしまっては、サービスの質が担保できないばかりか、そもそも最低限のサービスを継続することすらできなくなってしまうのです。
看護師の人材不足と処遇
介護業界は、慢性的な人材不足が叫ばれて久しい現状がありますが、訪問看護ステーションにおいても例外ではありません。
人員確保が困難な理由はいくつも考えられますが、訪問看護師の処遇問題を避けて通ることはできません。
全国訪問看護協会研究事業による2015年度の報告では、1回当たりのオンコール手当が1,000~2,000円未満と答えた事業所が34.2%と最も多く、2,000~3,000円未満の事業所が31.0%、3,000~4,000円未満の事業所が10.1%と続きます。
一般的な病院の夜勤手当は数万円のところもあるため、訪問看護のオンコール手当は決して高いとは言えないようです。
そもそも訪問看護師を志す方自体が少ないのもありますが、上記の通り「処遇面」の問題に目をそらすことはできないわけです。
最近では、特定の条件を満たせば、複数の訪問看護ステーションが協力して24時間対応が可能になる制度もありますが、その条件は厳しいものです。
病気や障がいを抱えながらも在宅で生活をしたい方、在宅で最期を迎えたい方、住み慣れた自宅でできる限り長く過ごしたい方々のためにも、訪問看護ステーションで働く看護職員の働く環境を整えることは急務と言えます。
私達は今後どうしていけばよいか?
以前投稿したコラムでも取り上げましたが、訪問看護ステーションでのお仕事を魅力あるものにするためのトリガーは、私たち訪問看護ステーションの関係者が握っております。
上記過去記事の最後に「国には必要なことをしっかり提言するとして、私達は『患者様・ご利用者様によいサービスを提供すること』『地域の事業所様と手を携えていくこと』を実現させ、同時に『事業所で働くスタッフがやりがいを持ち、長く安心して働けるような環境を作っていく』ことが重要である」と結んでおります。
何度も繰り返しになってしまい恐縮ですが、まずは目前にあるご利用者様やご家族様に対して「どうすれば満足度が高められるか」について常日頃から考え、研鑽に励み真摯に取り組んでいくことがとても重要になります。
ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、日々の取り組みや訪問看護サービスに対する考え方等、今後も本コラムで発信してまいりたいと考えております。
当法人の考え方や理念に共感していただける方、是非お問い合わせくださいませ。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
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