こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
私たちは訪問看護として、24時間体制によりご利用者様にサービスを提供しております。
24時間対応については、つい先日過去記事でも取り上げさせていただいている通りです。
当然ながら、24時間対応や緊急対応については、私達だけでは絶対にできません。
いろいろな職種の方々にお力をお借りし、何とか対応させていただいております。
私たちは、このことを決して忘れてはなりません。
なかでも、訪問診療の先生方には日々助けていただいており。いつも感謝しております。
ところで皆様は「訪問診療」「在宅医療」について、どの程度ご存知でいらっしゃいますでしょうか?
当然、ある程度は理解され、活用されていることと思いますが、具体的にはあまり深く知られていない部分もあるのではないでしょうか?
今回は、私たちが日ごろからお世話になっている「訪問診療」について、2回にわたって取り上げさせていただきます。
今回はその1回目「訪問診療の現状と役割」です。ぜひお付き合いくださいませ。
在宅医療を推進する背景
2021年12月現在、65歳以上の高齢者の人口は約3622万人と過去最多となり、高齢化率は30%に迫っています。
いわゆる「団塊世代」が65歳以上となる2025年には高齢化率は30%を超え、75歳以上の後期高齢者だけでも13%を超えると予測されています。
上記の統計の通り、日本の人口は減る一方であり、特に生産年齢人口の減少は深刻です。
生産年齢人口は前年同期で焼く62万人も減りました。
わが街江戸川区の人口が約69万2千人(2021年10月現在)ですので、1年で江戸川区の人口分がほぼなくなったという計算になります。
さらに、内閣府による平成29年版高齢社会白書における「65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来の推計」によると、2012年は認知症患者数462万人、有病率15%(7人に1人)だったのに対し、2025年には600万人を超え、有病率も20%(5人に1人)になると推定されています。
一方、令和元年版高齢社会白書によると、治る見込みがない病気にかかった場合、60歳以上の人の約半数(51.0%)が「自宅」で最期を迎えたいと希望しています。
病状にもよりますが、自宅で最期を迎えたいという理由には、「住み慣れた場所で最期を迎えたいから」「最期まで自分らしく好きなように過ごしたいから」「家族との時間を多くしたいから」「家族に看取られたいから」など様々です。
しかし、肝心の「担い手」が著しく減っているのです。
このような背景もあり、社会保障費は膨れ上がるばかりです。
以前、本コラムでも「社会的入院」の問題点についてのコラムを掲載しておりますが、今は療養の場が「病院から在宅」へとシフトしてきています。
「在宅医療」の推進が強く求められるようになったことは、もはや異論の余地はないでしょう。
在宅医療推進のための制度や取り組み~地域包括ケアシステム~
在宅医療を推進していく上で根底にある考え方とは何でしょうか?
それは「高齢者の介護を社会全体で支え合う」の一言に尽きます。
国は2025年に向けて、「地域包括ケアシステム」の構築の実現を目指しています。
上記の図は、介護のお仕事をされている方でしたら、一度はご覧になったことがあるかと思います。
地域包括ケアシステム実現のためには、以下の取り組みが継続的に行われることが必要です。
- 医療の連携強化
- 介護サービスの強化
- 予防の推進
- 見守りや買い物など、さまざまな生活支援サービスの推進
- 高齢者の住まいの整備
です。
各地域では、その実態や諸事情を把握し、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性にあった施策を行うことが重要になります。
要は、地域包括システムのあり方は、地域によってそれぞれ異なってくるということです。
子供から高齢者まで、誰もが住み慣れた地域で自分らしく生活し続けていくためには、行政や医療職・介護職、地域の町会やボランティア、そして住民が一体となって支えあう体制をつくることが求められています。
特に、話の中心を介護者に置き換えるならば、訪問診療の整備と充実は絶対不可欠なこととなります。
在宅医療の体制は
先程、住み慣れた自宅や地域で高齢者が生活するためには、在宅医療の整備と充実が必要不可欠であるとお伝えいたしました。
では、訪問診療に対して国は何を求めているのでしょうか?
国が在宅医療の提供体制について求めている機能は、主に以下の4つがあります。
(1)退院支援
入院先訪問診療のクリニックとで連携・協働して継続的な医療を行う
(2)日常の療養支援
多職種と協働し、患者や家族の生活を支える医療を提供するとともに、緩和ケアの提供ならびに家族への支援も行う
(3)急変時の対応
在宅療養の患者の病状が急変した時の往診や訪問看護体制の導入、入院病床の確保を行う
(4)看取り
住み慣れた自宅や介護施設など、患者が希望する場所で看取りを実施する
が挙げられます。
これらの機能を継続していくには、病院、歯科、薬局、居宅介護支援事務所、各介護サービス事業所地域包括支援センター、短期入所サービス施設等が多職種、多機関を超えて連携を図り、24時間体制で在宅医療を提供していく必要があります。
もちろん私たち訪問看護師も、上記機能のフロントローとしてサービスにあたっております。
在宅医療の現状はどのようになっているのか
・在宅医療の提供の実態
厚生労働省の資料によると、訪問診療を行う診療所の数は20,167カ所(診療所全体の約20%)、訪問診療を行う病院の数は2,702カ所(病院全体の約30%)と、近年その数は横ばい状態です。
上記の中で「在宅療養支援診療所」の占める割合は、訪問診療実施医療機関の約7割程度です。
下の表もご覧くださいませ。
また患者様の年齢分布について、9割が75歳以上の高齢者であり、ますます増え続ける高齢者に対して訪問診療のニーズがいかに高いかが窺えます。
ちなみに、在宅療養支援診療所の基準は下記7つが設けられています。
(1)診療所である
(2)24時間連絡を受ける体制を確保している
(3)24時間往診可能である
(4)24時間訪問看護が可能である
(5)緊急時に入院できる病床を確保している
(6)連携する保険医療機関、訪問看護ステーションに適切に患者の情報を提供している
(7)年に1回、看取りの数を報告している
※ただし、(3)、(4)、(5)の往診、訪問看護、緊急時の病床確保については、連携する保険医療機関や訪問看護ステーションにおける対応でも可能
このように他の連携機関と協力しつつ、24時間体制で往診、訪問看護などの提供を行っています。
私たち訪問看護師も、多くの訪問診療クリニック様とお付き合いさせていただいておりますが、まさに上記の一翼を担っている形になります。
訪問診療を行う診療所の数は。2017年のデータでは20,167ヶ所となっております。
そのうち、上記「在宅療養支援診療所」の届け出数は約7割(14,615ヶ所)とのことです。
近年では、機能強化型の在支診も出てきているものの、思ったほど増えてはおらず横ばいです。
在宅医療推進の最大の問題点とは
「在宅療養支援診療所」を開設するためには、いくつかの課題があることが分かっています。
一番の問題点は、医師の負担増ではないでしょうか。
先にお示しした在宅療養支援診療所の多くが、医師(院長先生)が1人で24時間・365日対応されている現状があるのです。
筆者が長年お付き合いのあった訪問診療クリニックの院長先生のお話です。
2004年、42歳で地域初の訪問診療クリニックを立ち上げたこの先生は、長年にわたり在宅診療に従事されていました。診療した患者様の数は2500名以上です。
長くお一人で診療を行っていらっしゃいましたが、開業10年を過ぎた頃から物理的に限界を感じ、常勤医2名・非常勤医5名増やし、機能強化型在支診として活躍されていました。
しかし、長年の激務の原因もあって大病を患い、2018年にご逝去されてしまったのです。
筆者は通夜と告別式のお手伝いをしましたが、参列者数は数百名を超え、当該市の市長まで弔問されていました。いかに、地域医療の発展に多大な貢献をされたかが窺えます。
長年の無理が災いとなり、寿命を縮めてしまったのではないでしょうか。無念でなりません。
上記は実際にあったお話ですが、やはり医師1人で24時間・365日対応するのは非常に難しく、他機関・多職種との連携は不可欠です。
在宅医療を行うにあたり、患者・家族からの連絡をいつでも受けられる体制づくりが必要となります。
多職種それぞれの悩みや課題、気を付けていること等を、関係者で共有する機会を持つことで、患者や家族のケアの充実につなげていきます。
次回は、訪問診療医の多大な負担を軽減するために「他機関・多職種との情報の共有方法や連携」をどうしていくかについてについて取り上げたいと思います。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
【参考URL】
厚生労働省 在宅医療政策の方向性
内閣府 平成29年版高齢社会白書
内閣府 令和元年版高齢社会白書
厚生労働省 人生の大集団会における医療に関する意識調査
在宅医療の最近の動向(厚生労働省)