訪問看護に絶対に欠かせない訪問診療②どう連携を図っていくか

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

毎日暑いですね・・・ 皆様いかがお過ごしでしょうか?

思いのほか早く梅雨が明け、これから連日暑い日が続きますが、皆様頑張ってまいりましょう。

 

ご利用者様は圧倒的に高齢者の方が占めますので、特に熱中症に留意しなければなりません。

こまめに水分補給をし、適度にエアコンをかける等の気配りが必要になります。

 

前回のコラムでは、訪問看護において欠かすことができない「訪問診療」について取り上げ、訪問診療の現状や役割についてお話させていただきました

 

今回は2回シリーズの2本目として、私たち訪問看護師やセラピスト、ケアマネさん等が、日々忙しく動かれている訪問診療医とどのように連携を図っていくかについて取り上げさせていただきます。

皆様お忙しいとは存じますが、是非お読みいただけますと幸いです。

 

訪問診療医の日々の業務を理解する

前回のコラムで、訪問診療の先生方の役割や重要性について取り上げましたが、ここでは普段訪問診療医がどのように日々動いていらっしゃるのかについて、皆様にご紹介したいと思います。

 

訪問診療医は、概ね午前に5~8件、午後も5~8件の患者様宅を訪問され、診療を行います。
訪問件数や時間については、訪問先や患者様の病状等によって変わってきます。

すべて一般在宅への訪問となれば、概ね上記の通りになります。

訪問先が施設であれば、例えば半日で20名とか25名を診るということもあります。

患者様の急変等があれば、当然ながら一定の時間がかかる場合もあります。

 

訪問診療は、時間との勝負と言っても過言ではありません。

いかに効率よく訪問できるかを常に考えなくてはなりません。

そうでないと、緊急往診の依頼にも対応できなくなります。

時間との闘い・・・これは私たち訪問看護ステーションでも同様ですので、この苦労はよく理解できます。

 

では、訪問診療医1名あたりどれ位の患者様を受け持っているでしょうか?

クリニックにもよると思いますが、常勤の訪問診療医1名あたりの訪問患者様数は、概ね60~100名程度ではないかと思われます。

常勤の先生が、午前と午後5名ずつ(1日10名)患者様宅を訪問し、月2回の定期訪問を行った場合の概算数は100名となります。

上記にプラスして、カルテや処方箋の作成、状況によっては緊急往診や当直等も行うわけですので、非常に大変であることは容易にご理解いただけると思います。

機能強化型在支診のように、常勤医を最低3名配置し、プラスして非常勤医もいるようなクリニックであれば、業務負担の平準化もある程度は図れるでしょう。

しかし、院長先生がお一人で診療されているような小規模クリニックになると、なかなかそうはいきません。

それこそ24時間365日休みなく動かれているケースもザラにあります。

実際に筆者も訪問診療の仕事をしていたことがありますが、移動中に医師がカルテ記入や処方箋作成をしたり、緊急の電話対応をしたりする光景を、幾度となく見てまいりました。

この業務内容を見ると、先生が関係者とコミュニケーションを取ることが簡単ではないことが理解できると思うのです。

 

医師とはコミュニケーションが取りにくい??

皆さんにお聞きしたいと思います。

これまでに「訪問診療医と連絡が取りづらい」「このようなことで連絡したら、先生に叱られるのではないか」等と不安に思われたことはありませんか?

 

医師へ積極的に報告しにくい、連絡しにくい、相談をしにくいという悩みは、どのステーションでも存在する「あるある話」なのではないでしょうか?

こうなりがちな背景として、2つの要因があると考えます。

1つは、看護学校や看護大学において「医師が看護師を指導する」という前提で教育体制が築かれている、という点です。

医師と看護師は主従関係のようなものがある、ということでしょうか。

実際は「同士」であり「対等」であるとは思うのですが、この関係性がいろいろ影響を及ぼしていることは否定できません。

そしてもう1つは、訪問看護をはじめとする医療系サービスは、すべて医師の指示がないと提供できない、という点です。

日々お忙しくされている先生に対して、指示書作成の催促をするのも申し訳ないし、気を遣うあまりにコミュニケーションが取りにくくなってしまう、という感じです。

ここからは、どのようにして相互理解を図っていくことが必要なのかについて話を進めてまいります。

 

医療介護の連携の現状

下記のスライドは、筆者が過去に神奈川県内で地域連携研修会にて講師を仰せつかった際にご紹介したスライドです。

テーマは「他職種の垣根を超えた連携を図るためにどうすればよいか」というものであり、筆者は訪問診療クリニックの側から講義をさせていただきました。

 

看護師さんやケアマネさんが医師と連携が取りにくいと感じる理由について、北九州市リハビリテーション支援体制検討委員会というところが現場のケアマネさんや看護師さん等に聞き取り調査を行い、その資料を引用いたしました。

 

やはり「なかなかコミュニケーションが取りにくい」という結果が出ています。

 

興味深かったのは、病院やクリニック側(医師)も連携がうまく取れないと悩まれているということでした。

本当はもっとコンタクトを取りたいのに「ケアマネさんは多忙で連絡が取りにくい」「担当のケアマネさんが誰なのかわからない」という理由で難しい、という意見も多数あるのです。

 

このコラムは、この問題についてどちらがよいとか悪いとかということを述べる場ではありません。

しかし、双方において「遠慮」「誤解」そして「若干の努力不足」が関わっていることは否定できないでしょう。

 

では、このような問題を解決するためには、どのようにしたらよいのでしょうか?

訪問診療医との連携~4つのキーポイント~

訪問診療医が大変忙しく、ハードワークをされていることは理解できたとして、だからといって過度に遠慮していては何も始まりません。

先生の立場を十分理解し、留意しながら連携する方法を模索することが必要ですね。

訪問看護師が医師と連携をとらなければならないケースに「退院支援」「日常の療養支援」「急変時の対応」「看取り」が挙げられます。

こんなハードスケジュールの訪問診療医とスムーズに連携を図るにはどうしたらよいか、日々訪問看護サービスを行っている私たちが考えることをご紹介したいと思います。

「そんなこと、言われなくてもわかっている」ことかもしれませんが、ご了承下さい。

 

①訪問診療医と連絡がつく時間帯を把握する。

訪問診療医の連絡取りやすい時間帯を知っておくと、利用者さんにもご迷惑をおかけすることなく、医師も看護側もお互いに業務がまわりやすいですよね。

多忙な訪問診療医とスムーズに連絡が取れる時間帯は、 

 ・朝のミーティングの後(出発前)  

・昼の休憩時間  

・訪問診療から戻ってくる17時以降

恐らくこの3つの時間帯がイメージできるかと思います。

朝のミーティングの後は、訪問診療に出発する前の時間です。

この時間帯は、同行する看護師や職員もまだクリニックに滞在しており、連絡すると比較的医師につないでいただきやすい時間帯になりますね。

 

クリニックにもよると思いますが、訪問診療医は午前の診療が終わると一旦クリニックに戻ってくるケースも多いです。

ですので、医師とは比較的コンタクトが取りやすいと思います。

ただし、休憩時間に重なることにもなりますので、一定の配慮は必要ですね。

 

連絡を取るタイミングとしては、個々の先生のお考えもあります。

先生によっては、遠慮なく連絡して構わないと言って下さるケースもあれば、クリニックにファーストコールを担当する窓口の方(待機医師・看護師・相談員等)に連絡し、院内でコミュニケーションツール(後述)を使って伝達していただくケースもあります。

 

診療中は難しいとしても、緊急を要する場合は連絡を躊躇する必要はないと思います。

 

情報共有ツールを上手に活用する

スムーズにご利用者様の情報を共有するためには、訪問看護師が的確なアセスメントをおこない、看護師の判断や考えを医師に伝えることが重要です。

情報共有するツールとしては以下の方法があります。

・ご利用者様宅のノート、連絡帳
・電話
・メール(メールは時間帯を気にせず活用できるものの、メールをチェックしているのかの確認が必要)
・FAX(放置されないよう、事前にFAXを送信する旨をお伝えするとよい)
・訪問(直接クリニックに訪問し、医師と面談し口頭でお伝えする)
・クラウド型電子カルテ(最近では多くのクリニックでも活用が増えてきました。本コラムの過去記事でも紹介しております)

情報共有するには、訪問診療医それぞれに合うツールを見極め、スムーズに連携をとれるように適切なツール選択をしていくことが大切ですね。

つぎに、訪問診療医と情報共有するために、考えうるポイントをまとめました。

・伝えたいことや状況を端的にまとめておく。
・ご利用者様に今後起こりうる症状を予測し、事前指示や包括的指示を医師からいただく(例・発熱時・疼痛時の指示、看取りの対応指示等)
・ご利用者様やご家族の希望や意向を代弁し、看護師からみた視点も踏まえて伝える。ただし、個人的な感情は挟まない。
・勉強会やカンファレンスを定期的に行う(有意義な情報共有となる)。

 

等が考えられます。

 

信頼関係を築く

訪問看護師と訪問診療医は、日々顔を合わせているようで、その頻度はそれほど多いわけではありません。

「お互いに忙しいから」というのが大きな原因の一つでしょうが、そうであってもお互いが時間を作り、顔を合わせることが信頼関係を築くための第一歩であると思います。

 

医師の訪問診療時に、訪問看護師はご利用者様宅へ同行することがあります。

特に初診時は、情報共有の一環として同行するケースは多いですね。

場合によっては、ケアマネさんの配慮でサービス担当者会議を同時開催することもあります。

 

関係者が一堂に会するため、ご利用者様やご家族は負担になってしまい申し訳なく思いますが、チーム内で情報共有をするには絶好の機会になることは間違いありません。

最近では、訪問診療医もサービス担当者会議に出席されるケースも増えており、大変ありがたい限りであります。

こういう取り組みが、医師と看護師・ケアマネ等との距離を縮めるきっかけになるのではないでしょうか。

 

また、訪問診療日前日や2、3日前位をメドに、ご利用者様の情報を訪問看護側から先生に伝えておくという方法もよいかと思います。

訪問診療医も、診療前に患者様の状態を把握でき、診療当日は診察しやすくなります。

先生としても、訪問看護師の事前情報提供は大変ありがたいと感じていただけるはずです。

訪問診療医に進言する際の伝え方にも、配慮も必要です。

医師も人間ですので、不躾な言い回しは自尊心を傷つけることにもなりかねません。

訪問看護師も他職種と同様、高度なコミュニケーション能力が求められるということですね。

 

医師がケアの方向性についてどのように考えているかを確認する。

ご利用者様の訪問看護を開始するにあたり、訪問診療医のお考えや治療方針を事前にお聞きし、ケアの方向性を決めておくことが求められます。

ご利用者様やご家族の希望や意向を踏まえ、上手に医師の考えや方針を聞き出しましょう。

あまり看護師が前に出過ぎてしまうと、先生のお考えを踏みにじることにもなりかねませんので、そこは先生を立てつつ、かつ言うべきことはしっかり伝えることが重要です。

ご利用者様やご家族の意向に基づいた意見であれば、ほぼほぼ医師も理解を示してくれるはずです。

もちろん、収集した情報は記録に残し、関係者と共有することも怠ってはなりません。

医師の考えや方針がわかれば、それに対して必要であれば利用者さんから事前指示書をもらっておくとよいかと思います。

 

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉があります。

もしものときのために、その人が望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことです。

厚生労働省では「人生会議」と名付け、その重要性を啓発しております。

利用者さん自身が病気当で意思疎通ができなくなった場合に、例えば人工呼吸器を導入するのか、胃ろうの造設をするのか、あるいは延命措置を講じるのか自然に任せるのか等の難しい判断を、可能な限り事前に確認しておくことです。

また、万一その人に何かあった場合には、誰に判断を仰ぐのかという「代理人の指名」という意味合いもあります。

どのような医療やケアを受けたいか、受けたくないかなど記載した書面を作成しておくというものです 

近年、このACPという考え方を在宅医療の現場でもよく使われるようになっております。

そのためには、ケアチームが一丸となって、風通しのよい連携を確保していかなくてはならないわけですね。

まとめ

今回は、「訪問診療医との連携のコツ」についてお伝えしました。

訪問診療医と訪問看護師との連携体制については、まだまだ課題が多くあると思います。
しかし、在宅医療はあくまで主役は利用者さん、患者さんです。このことを忘れず、私たち訪問看護師は、利用者さんや家族の意向を十分にふまえた上で医師との連携の要となり、支援することを大切にしていきたいですね!

ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、訪問看護に関する多種多様な情報や、介護保険制度の動向等、皆様にとりまして有益な情報を発信しています。

訪問看護を学びたい方は、ぜひユニケアでご一緒に知見を広げていければと存じます。ぜひお気軽にご連絡いただけますと幸いです!!

 

【参考URL】

北九州市における医療・介護の多職種連携の取り組み

厚生労働書「人生会議してみませんか?(アドバンス・ケア・プランニング)