訪問看護における家族会を行いました!

2022年9月9日

 

こんにちは。東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

今回はユニケア事業所内で行われた「家族会」の様子をお届けいたします。

 

「家族会」って何?
 
 
一般的な家族会は、精神障害者を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい共有し、連携することでお互いに支えあう会であると厚生労働省は謳っています。
 
ユニケアの家族会は、亡くなった利用者様の遺された家族をお招きし、生前の思い出などをお話する機会を作る会として今回初めての試みとして開催いたしました。
 
家族会は、利用者様の生前に関わらせていただいたスタッフとの再会の場としながらご家族の心のケアの一環として、また多職種にとっても貴重な学びの場とさせていただくことを目的としたグリーフケアの場にしたいと考えております。
 
そんな第一回のユニケア家族会には、2名のご家族の方と1名のケアマネさんにご参加いただくことができました。お忙しい中ご参加いただき本当にありがとうございました。
 
今回はご家族からの貴重なご意見、そして日々密な連携を図ってくださっているケアマネさんからのご意見、実際に関わらせていただいたスタッフからの意見などを中心にご紹介させていただきます。
 
(参加いただいた方々には、家族会を周知していくことにご賛同いただいた上で、事前にお写真の掲載許可をいただいております。亡くなられた利用者様ご本人のお名前のみ、イニシャル表記させていただいておりますのでご了承くださいませ)
 
 
 
 
 
お一人目:M様(ご参加いただいた家族:奥様)
「今でも、夜中にしていたおむつ交換の時間に目が覚めてしまいます。半年経ったんですけどね。」
 
 
 
「皆さんに本当に良くしていただいて・・・」そうおっしゃいながら涙ぐまれていたM様の奥様。
 
M様には、訪問看護・訪問リハビリともに介入させていただいていたのですが、体調を崩されてしまい入院先でお亡くなりになられました。
 
「最初はね、2週間で退院って言われてたんですけどね、5日で亡くなってしまったんですよ。本人も『今年いっぱい持たないよ』って自分で言ってたんで、引き際を主人が自分で決めて、亡くなってったのかなと・・・」
 
M様はお亡くなりになる直前、3回大きく息を吐いて静かに息を引き取られたそうです。
 
 
奥様は、娘様がずっと傍にいてくださったので大変心の支えになったと話されていました。
 
しかし、亡くなられてから5か月ほど経った今でも「朝、写真を見て泣くのだけは許してもらってるんです。昼間は周りの皆さんよくしてくれるのでなんとか保って居られているんですけど」とやはりお辛い心境をお話ししてくださいました。
 
「ユニケアの看護師さんには、お小水や便をいつもやっていただいていたので、本人も苦しまないでいけたのかなと思います。『今日は何曜日だよ。今日はリハビリの先生がくるよ』なんて話すと、本人もとても楽しみにしていて。外に一歩も出られなかったんですが、幸い頭もしっかりしていましたし食べ物も口から食べれていました。それでもやっぱり表に出たがっていたので最後に出してあげたかったなーと、それがちょっと私の心残りなんです。」
 
 
M様は、他の訪問看護ステーションからの引継ぎという形でユニケアのスタッフが関わらせていただいた利用者様でした。
 
 
青木(Ns)「最初のリハビリの介入がすごく大変でしたよね」
 
村竹(PT)「最初の時に入らせていただいて、体格の大きい方でしたので正直な話『自分でいいのかな』という思いもありました。徐々に関係性を築かせていただきつつ、少しこだわりのある方でしたので、自分にできることはなんだろうと考えながらも、奥様にもいろいろとご相談させていただいたなと思います」
 
M様の奥様「本当にいろいろとやってくださって、感謝しかないです」
 
高橋(PT)「僕は前任から引き継ぎ、ちょうど1年くらい関わらせていただきました。最初は、本当に僕の至らない点があったと思うんですが前任者のように上手くいかなくて・・・」
 
M様の奥様「いえいえいえいえ、本当に、全然違うんです、超わがままで、甘ったれで・・・」
 
高橋(PT)「最初、怒られてしまうこともあったんですよ」
 
M様の奥様「そうそうそう。慣れてくると大丈夫なんですけどね、最初は気難しいところがあって」
 
高橋(PT)「それでもM様は『もう来なくていい!』なんてことは一度もおっしゃらず、その際は『次頑張ります!』と」
 
M様の奥様「慣れてくるととても頼るし、体も楽になるし、楽しみにしてたんですけどね。本当に皆さんは大変だったと思いますよ」
 
M様の奥様「もうね、あそこのベッドに座らせてもらうのなんて、私じゃできないですからね。だからもうそれだけでも本当にうれしかったんですよ、本人も『今日は誰が来るのって』いつも聞いていました。楽しみにしていたんでしょうね。本当に来ていただいてホッとするんですよ。やっぱり来てくださった後にはとても楽になるんですよ」
 
 
誰かが来てお話をしてくれるだけで喜んでいたと話される奥様。
 
ユニケアの介入を楽しみにしてくださっていたという話を聞くと、本当に嬉しくなりますよね。
 
 
「訪問の最後は五町さん(Ns)に来てもらってね、本人の調子が悪くなってたからタクシーだの救急車だのって全部やってもらって、ちょうど身体も綺麗にしてもらって病院に行って入院したんです。今でも『おかあさん、おかあさん』って聞こえるんです。しばらくあの部屋には行けませんでしたね。今では朝写真を見て一泣きして、それから1日を始めるのが日課です」
 
「夜中の9時におむつ取り換えて、その後0時と2時に取り換えて、それで5時にも取り換えてってしてたのでね、半年経った今でもその時間に目が覚めるんですよね」
 
 
入院された後にすぐに自宅に戻られると思っていたのは、ご家族だけではなくユニケアスタッフも同じでした。
 
突然のことで本当に驚くとともに、奥様のことを考えると、とても心が痛みます。
 
それでも、奥様の現在のご様子や最後は安らかにお亡くなりになられたということ、ユニケアスタッフへの思いなど貴重なお話を沢山お聞きすることができ、とても勉強になる素敵な時間を過ごさせていただきました。
 
 
 
お二人目:T様(ご参加いただいた家族:奥様)
「おら病院は嫌だよ、病院は嫌だよってね」
 
 
 
「うちも、ユニケアさんには本当にお世話になって、本人も悔いなかったと思います」
 
7月末にお亡くなりになられたT様の奥様は、亡くなられる直前のことを鮮明に記憶されていました。
 
T様の奥様「7月の末にね、のど自慢を見ていたんです。そうしたらせき込みはじめて、ふと見てみると口から痰が出てるんですよ。『あらおじいちゃんどうしたの』って。その後に綺麗にしてやった後に吸い飲みでお水やったんですよ。その後でしたね。娘と『(息が)止まっちゃってるよ!』って。その後すぐにユニケアさんに来てもらってね・・・」
 
生前「ばあさん、(僕は)長いことないみたいね」とご自分の最期を感じ取られていたようですが、「最期は本当に苦しまないでいきました」と当時の様子をご共有くださいました。
 
「本人はおむつが本当に嫌だったみたいで、夜一緒に車いすでトイレに行ったらね、浅く座ったみたいでトイレで二人で倒れちゃて。トイレで心中だねーなんて。すぐにユニケアさんに電話して救急車呼んだんだけど、コロナでなかなか来れないみたいで。朝まで様子見てもなんともなかったのでよかったですけどね。あの時は夜中なのに電話しちゃって心配してもらって、本当にありがとうございました」
 
 
T様には前の退院後から介入させていただいていましたが、実は当時は「退院後1か月で亡くなるかもしれない。もう自分で立ったり歩いたりはできないかもしれない」と言われていたそうです。しかし、その後車いすでトイレに移動できるほどの体力と筋力を取り戻されたとのことで、ご本人も奥様もとてもリハビリに励まれていたことが想像できます。
 
門脇(OT)「いつもT様も奥様も笑顔で迎えてくださいました。必ず今日の日付を確認したり、右手で字を書く練習をしたりしました。ベッドの隣に座ってもいいですか?とお聞きすると、よく『お雛様とお内裏様みたいだね』って冗談をおっしゃっていましたよね」
 
T様の奥様「ね、本人ももう喜んじゃってね」
 
門脇(OT)「徐々に体調が悪く寝ていることが多くなってしまったんですが、最後の介入日にベッドを上げて北島三郎の曲を一緒に歌ったり踊ったりした時間があったんですけど、それが本当にT様らしい時間になったなということを覚えています。エンゼルケアには他の看護師2人に一緒に同行させてもらうことができたんですけど、本当に眠るように、穏やかな表情をされていました」 
 
T様の奥様「病院が本当に嫌いでね、『おら病院は嫌だよ病院は嫌だよ』って。焼き鳥食べたいビール飲みたいって、最後あげたかったなって。『はやくいきたいよ、迎えにきて迎えにきて』って親の写真に向かっていつも言っていました。あたし聞きたくないから言わないで!って」
 
 
南雲(Ns)「永井さん(Ns)と一緒にお伺いしたことがあり、その度に盛り上がってらっしゃって『あーいいご夫婦だなあ』と思っていました。お母さんがトイレで心中しかけたという時の緊急コールも私だったんですけど、あの時は本当にパニックになられていたことを覚えています。その次の緊急コールが、最後の痰が出てしまっていたという時だったのですが、この時は以前のトイレからくださった電話に比べて、とても落ち着いていらっしゃいましたよね」
 
T様の奥様「私もいろいろ最期はどうなるのかとか見たり読んだりしていたのでね、足が冷たくなるとかなんとかもね。本当に皆さん仲良くしていただいて、本当にもう・・・」
 
南雲(Ns)「でも皆さん、本当に素敵な奥さんを持たれているなと思いますよね」
T様の奥様「でもね、気に入らないことがあると『出ていけ』なんていうんでね『あー出ていきますよ』なんていうことも言っていましたよ」
 
 
 
病院がお嫌いだったM様。最期は大切な奥様や娘様のいるご自宅で生涯に幕を閉じることができ、とても幸せな時間を過ごすことができたようですね。
 
そんな大切な最期の時間にユニケアのスタッフが関わらせていただけたことは、介入したスタッフにとって本当に貴重な時間・経験となったと思います。
 
訪問看護のやりがいは、こういったご本人とご家族の貴重な生活の場にお邪魔し、大切な時間の一部を共に過ごさせていただけること、少しでもご本人の人生に関わらせていただけることにあるのだと思います。
 
 
 
お三方目:K様(ご参加いただいた方:ケアマネさん)
「呼吸器をつけないという本人の意思を再確認するタイミングやどうお声がけをしたらよいのかが本当に難しかったです」
 
 
 
K様はALSで闘病されていた利用者様でした。本日ご家族が来られる予定だったのですが、急遽欠席となってしまったため、ケアマネさんに当時のことをお話していただくことになりました。
 
「私は家族の立場っていうわけではないんですけども、60代の若い方だったので頭はしっかりされているのですが、どんどん体が動かなくなっていくという病気の方でした。意識のはっきりした方で、ご本人自身もいつかは呼吸ができなくなってしまうということをわかってらっしゃる方だったのですが、私自身がK様のような方と関わらせていただくことが初めてで、どこまでお話したらよいのかと葛藤する毎日でした。呼吸器をつけないという選択の確認を改めてする際にも、どのようなタイミングで、どのようにお声がけすればよいのか、本当に悩んでいたことを覚えています。」
 
最終的に人工呼吸器を装着せずに最期を迎えたいというK様でしたが、人の気持ちは揺らぐものです。
ケアマネさんの立場としてはK様の決断を理解していても、やはり最期の選択については何度も確認していくことが求められます。
そのようなシビアな話を、日常の会話の中でどう折り込んでいくのかということは、私たち看護師でもとても慎重になりますよね。
 
「本当に一人ではわからなかったのですが、ユニケアさんにご相談させてもらって、『今こういう状態ですよ』『今声をかけないと大変ですよ』ということを教えていただいて、いいタイミングだったかはわからないんですけど、関係機関の方と集まって意思を確認させていただく機会を設けていただき、本当によかったなと思います」
 
「呼吸器をつけてしまってもできることがあるんじゃないかなと思ったのですが、やはりご本人の意思は固かったので、その思いを尊重していくことが大切なのかなと今では思うことができます。その後、他の2名の方を在宅でお看取りさせていただいたのですが、この経験があったからこそご本人やご家族の意思を確認する重要さやタイミング、関係機関との調整方法などを直庭させていただくことが出来ましたので、本当に勉強にある体験をさせていただいたなと思います」
 
 
 
ユニケア青木(Ns・代表)は、K様のご家族との関わりでとても印象に残ったエピソードがありました。
 
青木(Ns)「僕もとても印象的な言葉を覚えていて、奥様に『訪問看護って必要なの?何やるの?』って。その当時、ご本人はまだ全然動ける病態でしたが、その後少しずつ寝たきりになっていってしまう中で、人工呼吸器をつけないという選択肢をされ、最期は呼吸が苦しくなって亡くなってしまいました。僕が最後の訪問に行かせていただいた際、若い方でしたので『絶対女性看護師の方がいいだろうな』と思いながらケアをさせていただいていたら、奥様が『青木さんは家族だからいいのよ!』っておっしゃってくださって。その言葉が今でも忘れられなくて。『訪問看護なんて何やるの?必要ないよ!』と言われていたところから、最後にこういう言葉を聞くことができ、本当にみんなの力でとてもいい関わりができたんだなと思いました」
 
 
武澤(Ns)「K様のことをご存じない方もいるのかなと思うので、簡単にK様のキャラクターをお伝えすると、本当に元気いっぱいで、逆にこちらが元気をいただいてしまう、そんな方でした。段々と動かなくなってくる手先を使ってかばんを作ってみんなにプレゼントしてくれたり、本当にスタッフ思いの方でした。人工呼吸器を使用しないという選択は、本当にK様らしい選択だったなと思っています。自分より年上の人には介護させられないという強い思いから、このような選択をされて最期を迎えられた方です。でも、やっぱりどうしても治療してほしかったなという思いはありました。でもそれはこちらのエゴですし、お手伝いできるのは24時間のうちの1時間でしたので、ご本人とご家族のことを考えると、何が正しかったのかなって・・・」
 
 
ご本人とご家族の意思を尊重するということは、医療従事者にとって最も重視するべき部分です。
しかし、私たちも一人の人間です。人と人との関わりの中から、様々な思い出が巡り、エゴだとわかっていながらも心の中では葛藤することが非常に多い職業でもあります。
それでも、葛藤してしまうほどの思いを持って訪問看護をさせていただけることは、理解のあるご本人やご家族あってのことだと思いますし、スタッフの温かい感情・介入によって得られる葛藤だと思います。
 
 
 
 
家族会は、ご家族の思いに触れながら関わらせていただいたスタッフの気持ちも引き出し、それをご家族と共有することで、短い時間でも共に過ごさせていただいた時間を思い出し、様々な思い出に浸ることのできるとても素敵な機会だなと改めて感じました。
 
会の終了後には、ご家族もスタッフも、どこかスッキリとした表情を浮かべているように見えました。
 
 
ユニケアでは、この家族会という機会を地域に浸透させていき、よりご家族や地域に寄り添ったサービスの提供をしていきたいと考えております。
 
それは単なる業務としてのグリーフケアではなく、例え仕事上で出会った利用者様やご家族であっても、そこから感じ取った思いや感情は、その人自身の成長や価値観を育むきっかけにすることができます。
 
今回は第一回の開催となりましたが、今後もご家族や関係機関のご協力を煽りながら、より素敵な会を開催できるよう尽力していきたいですね!
 
 
 
 
ー----------------------------
 
 

ユニケアでは、看護師さん、セラピストさん、主任ケアマネさん、管理者さんを大大大募集中です!

 

こんな私たちと一緒に訪問看護がやりたい方、ぜひぜひご連絡ください!

 
また次回の更新をお楽しみに♪