こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
私達は常日頃からご利用者様のご自宅を訪問し、訪問看護サービスを提供させていただいております。
これまで関わらせていただいたご利用者様の数は、介護・医療含め恐らく数百名にはなるでしょう。
訪問の延べ件数となりますと、とても数えきれません。
サービスの対象者はあくまでご利用者様です。
しかし、それと同じ位重要になるのが「ご家族への支援」です。
そういう意味で、ご家族との関わりについてもこれまで数えきれない位行ってまいりました。
「ご家族支援」と簡単には言うものの、それは非常に奥が深いものです。
ケアマネさんはじめ、ご家族に接していらっしゃる方であれば、きっと共感していただけるはずです。
どんなに経験を積んだ看護師でも「これで十分」ということは決してありません。
これまで私達も「これで本当によかったのだろうか」と思い悩んだことは多々ありますし、時にはお叱りを受けることもあります。
そういう紆余曲折を経て、私達は大いに学ばせていただき、サービスの向上に活かしております。
今回は「訪問看護におけるご家族支援」と題しまして、ユニケアとして何ができるのかについて考察したいと思います。
皆様どうぞお付き合いくださいませ。
訪問看護の現場におけるご家族ケア
ご存知かとは思いますが、訪問看護師が常々行う「ご家族ケア」について列記しますと・・・
■病状や日常生活に関するアドバイス
■看護技術に関する指導
■健康管理指導
■精神面での支援
■主治医とご家族との関係調整、その他外部機関との調整
等、多岐にわたります。
単に医療行為を行うだけでは、訪問看護師としては十分ではありません。
ご家族のケアや関係機関との連携には、いわゆるソーシャルワークとしての知識も必要です。
今後も皆様との関わりにより、学ばせていただければと考えております。
なぜ訪問看護において「ご家族支援」が必要なのか?
近年、様々な社会背景により、訪問看護におけるご家族への支援の重要性が高まっているといえます。
理由は様々ありますが、特に大きな理由が2つあると考えます。
家族関係の希薄化
かつて「二世帯・三世帯同居」といった大家族が多かった時代に比べて、核家族化が進んだ現代は、家族間のコミュニケーションが希薄化しています。
高齢・疾患により家族の一員に看護が必要になった場面で、家族間で意思統一された対応が難しくなったといえます。
私達訪問看護師は、家族間のコミュニケーションの橋渡し役として、ご利用者やご家族と一致団結して看護と向き合えるようサポートする必要があります。
在宅看護の増加
行政の医療政策は「長期入院にかかる医療費の抑制」や「効率的な病床の活用」を目的に、病院から在宅への療養環境の移行を後押ししています。
本サイトの過去記事でも、この件については取り上げさせていただいております。
それに伴い、在宅で看護を担うご家族が増えていると言えます。
ご家族が必要な知識・技術を習得し、安心して在宅で看護を実践するためのサポートとして、訪問看護師は入院中の医療機関様や退院後の各サービス事業所様と連携して対応するという、極めて重要な役割を担っています。
非常にもどかしい「時間的制約」
どんな介護サービスでもそうですが、訪問看護サービスでできることは限られています。
一番悩ましいのは「時間的な制約」です。
もっとご支援したいのに・・・と思っても、制度上時間に制限なく対応することができません。
介護保険や医療保険によらない「自費サービス」もありますが、どうしても高額になってしまいます。
このような時間的制約に悩まれたご経験がない方は、恐らくいないのではないでしょうか。
サービス業の特徴に「サービスの不可分性」「サービスの非貯蔵性」というものがあります。
不可分性とは、サービスの販売と消費が同時に行われ、サービスの提供者とサービスを受ける者が接点を持たなければならないことを意味します。
非貯蔵性とは、サービスは商品のように在庫をすることができないという意味です。
上記の観点から、介護や医療のサービスは時間的な制約から逃れることができないということになります。
ですので、限られた時間の中でいかに必要なサービスを提供するかについて、私達訪問看護師は日々考え実践する努力が欠かせません。
時間的制約は制度上の問題もあり、どうにもならない部分もあります。
事業所内だけでなく関係機関と常に情報共有することで、この「サービスの不可分性・非貯蔵性」という根本的問題に向き合っているのです。
ご家族の不安が尽きることはない
私達訪問看護師は、医療的ケアを行うプロフェッショナルです。
反面、ご家族の大多数は医療について基本的に詳しくありません。
もちろん、ご家族の介護を通じて熱心に学ばれている方も多くいらっしゃいます。介護や医療の現場でお仕事をされているというご家族に、現場でお会いしたこともあります。
しかし、それはまれなケースであり、医療についての知識や経験はほぼ皆無というケースが大多数です。
オムツ交換等の日常的な介助も、喀痰吸引や経管栄養管理といった医療行為も、ご利用者様の疾患により必要となったためにご家族が担っている。このケースがほとんどではないでしょうか。
入院されたご利用者様が退院されるにあたり、在宅で医療行為が必要になると、ご家族様は病院で手技指導を受けます。
経管栄養の管理や血糖管理、喀痰吸引等のやり方について学ぶのです。
しかし退院後は基本的にすべてご家族が担うことになりますから、いくら指導を受けても不安が完全になくなるはずはありません。
ご利用者様の病状によっては、昼夜問わず在宅で対応を要する方もいらっしゃいます。
もし経管から輸液が漏れてしまったらどうしよう、痰が引けなかったらどうしよう・・・
そう思うと不安はますまず募りますし、眠れない日々が続くこともあります。
私達訪問看護師は、ご家族が抱える不安は決して尽きることはないのだという前提で考え、対応していかなくてはならないと、改めて思います。
ご家族間の支援
援助させていただいているご利用者様の中には、複数のご家族が関与されているケースもたくさんあります。
同居されている方や、近隣にお住まいの方、あるいは遠方にお住まいの方等、様々です。
当然のことですが、ご家族一人ひとりがそれぞれの思いをお持ちです。
「家族だからすべて同じ考えを持っている」というケースばかりではありません。
例えば、あるご家族は「介護が大変なら施設へ入れればよい」という意見があり、別のご家族からは「いやいや、本人は自宅がいいと思っているはずだ。ギリギリまで自宅で過ごさせたい」という意見もあります。
また「施設入所はお金がかかるから絶対に反対だ」というように、経済的な側面から意見を述べる方もいらっしゃいます。
このように、先々の方針についてご家族間で揉めるという話は枚挙に暇がありません。
「患者様の治療方法の決定」「療養方針の選択」「在宅限界が来た時にどうするか」「看取りをどうするか」等の場面で、ご家族が納得して答えを出すためには、ご家族間のコミュニケーションが欠かせません。
また、特定のご家族に経済的・精神的負担が集中し過ぎないようにすることも必要です。
訪問看護師はご家族間のコミュニケーションを促し、相互理解・意思決定・役割分担などがスムーズに行われるよう後押しします。
もちろん、主治医の先生やケアマネさん、ヘルパーさん等との連携が大前提での話になります。
勘違いしてはいけない「ご家族に寄り添う」ということ
よく「ご家族に寄り添うケアを」というフレーズを耳にします。
これは確かに重要であり、何ら否定することはありません。
ただ、勘違いしてはいけないことが1つだけあると考えます。
それは、どんなにご家族に寄り添うために努力をしても、ご家族「そのもの」にはなれないということです。
私達訪問看護師は真剣にこの仕事に向き合い、プロとしてサービスを提供しています。
出来る限り、ご家族の気持ちに寄り添って対応するよう努めております。
しかしどんなに頑張っても、私達はご家族を上回ることはできないのです。
中には、ご利用者様とご家族との折り合いが悪く、訪問看護師(あるいはケアマネさんやヘルパーさん等)だけには心を開くという話も現実にはありますが、テーマの趣旨が崩れてしまいますので、ここでは前提としないことにします。
私達はご利用者様の日常の「ほんの一部」しか垣間見ていないのに、すべてを理解したつもりになってはいけないのです。
「ご家族に寄り添うケア」という姿勢を失ってはなりませんが、この言葉を盾にとっていい気になってもいけないということですね。
グリーフケア
訪問看護では、ご利用者様のお看取りをお手伝いすることも多々あります。
ご利用者様の最期を目の当たりにするのは、どんなに経験を積んだ看護師でも辛いです。
ご家族様の悲しみは、私達など比べ物にならない程のものがあります。
このような大きな損失や悲しみのことを「グリーフ」といいます。
私達訪問看護師は、ご利用者様のご逝去が確認されたあとの対応として「エンゼルケア」を行います。
エンゼルケアは、看護師が直接的に行う最後の援助ですので、特に心を込めて行います。
悲しみに暮れるご家族のことを思うと、こちらも辛く悲しみが募るものです。
逆をいえば、私たちはそれ位気持ちを込めてサービスを提供しているとも言っても、決して過言ではありません。
ご利用者様の終末期において、訪問看護師は頻繁にご家族に関わることになります。
家族で話し合って自宅で看取ると決めたのに、日に日に襲われる不安に苛まれ、気持ちが揺れ動いて迷われるケースを、私達は幾度となく見てまいりました。
最終的には看護師でもどうにも出来ません。
ある看護師の話ですが、そういう時はご家族の手を取って一緒に泣く位しかできない、と。
しかしそれでも、ご家族の不安を少しは和らげることが出来ると思っています。
私達は、ご家族の悲しみを100%理解できなくても、可能な限り理解すべく努めることが必要です。
ご家族そのものにはなれなくても、その悲しみを受容し、共感することはできるはずです。
おわりに
本コラムで何度も触れておりますが、地域包括ケアシステの実現に向け、在宅サービスの重要性はますます高まっております。
その中でも、私達訪問看護サービスの存在は欠かせません。
中心はあくまでご利用者様なのですが、ご家族の存在なくして援助は成し得ません。
ですので、ご家族支援について私達はしっかり学んで実践していかなくてはなりません。
そしてご家族がいらっしゃらない独居の方については、それによってご利用者様の生活が不便にならないように留意していかなくてはなりません。
ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、本分である訪問看護サービスについて真剣に向き合い、皆様と連携を取らせていただきつつ、スタッフ一同これからも研鑽に励みサービスを提供してまいります。
私達の訪問看護としての取り組みに対し、少しでも関心を寄せて下さる方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にご連絡下さいませ。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
【参考URL】