脳梗塞を乗り越えてユニケア駄菓子屋の番頭になったお話

ユニケア訪問看護リハビリステーション 江戸川区

はじめに

ユニケア訪問看護リハビリステーションは訪問看護の事業所です。
ご自宅で療養されている利用者様に訪問看護や訪問リハビリを提供しています。
しかし、もっと地域とつながりを深めたいという思いから事業所開店当初から駄菓子屋を運営しています。コロナが流行する前までは子供から高齢者の方まで様々な方々が駄菓子を買いに訪れていました。
今は少しずつ日常に戻りつつあり、また子供たちが駄菓子を買いに来るようになってきています。
 
そんな駄菓子屋には番頭さんが数名います。その中のお一人に「村上さん」という男性の番頭さんがいらっしゃいます。
実は、村上さんは6年前に多発性脳梗塞を経験されており現在も後遺症と戦っております。
今回、そんな村上さんにインタビューを行い、脳梗塞になってもあきらめずに社会復帰した経緯など様々なことをお聞きする機会に恵まれました。
この記事を読まれている方には脳梗塞後遺症で悩んでいられる方やそのご家族の方がいらっしゃると思います。
私自身も村上さんとお話をするたびに勇気や元気を貰います。
様々な気づきや学びがあるかと思いますので、ぜひご一読頂けたら幸いです。
 

今までの経歴など教えて下さい

昔は自衛隊で働いていました。
自衛隊を辞めた後に建築関係の仕事をしていたのですが、そのうちに自分で会社を起こし社長をやっていました。
社長時代には100人程度の従業員を雇っていたので、それはそれは人に悩まされてきました。
仕事も大変だったので相当な過労やストレスが重なっていたのだと思います。
しかし、それはそれでやりがいはあって15年ぐらいは会社を頑張っていました。
 
そんな折に脳梗塞を発症しました。
状態としては結構ひどかったので左半身がほぼ動かないような状態でした。
その後、リハビリを頑張って今では左手も左足も動くようになって普通に歩けるようになっています。
今回、ユニケアさんで働くのが久しぶりの職場ではありますが、リハビリだと思って頑張っています。
今は、ユニケアさんで駄菓子屋の番頭や草刈りや駐輪場整備工事など様々なことをさせていただいております。
 

脳梗塞になったときの気持ちを教えてください

それはそれは相当ショックでした。
「なんで自分がこんなことになってしまったんだろう」と気分の落ち込みがひどかったことを覚えています。
廃人になったようでいわゆるうつ病のような状況だったと思います。
 
そんな期間が長く続いていたので何もやる気力はありませんでした。
不思議なもので脳梗塞を発症すると気力を奪われてしまいます。
本当に何もしたくなくなるんですよね。力は入らないし何もやる気が起きない。
 
いつも死にたいと思っていました。
リハビリやっても左半身が全く動かなかったので「このまま生きていようか死んでしまおうか」と迷っている時期が1年から2年ぐらいありました。
とにかくぼーっと生きていたように思います。
その期間は、死にたいとか生きたいとかそういうこと以外はほとんど記憶がないんです。
 
ユニケア訪問看護リハビリステーション 江戸川区
 

脳梗塞後遺症はありますか?

最初は左半身がほぼ動きませんでした。
また、言語障害・認知障害など様々な障害がありました。
しかし、リハビリをするようになってある程度は回復してきています。
今でも左半身の感覚が鈍いですし飲み込みが悪いのでたまにむせることがあります。
それは仕方ないことですし今もリハビリを頑張っています。
まだまだ機能が向上すると信じています。
 

リハビリなど始まったと思いますがその時の気持ちを教えて下さい

リハビリしても左半身の動きはあまり良くならなかったので、気持ちはあまり上がりませんでした。
しかし、病院にずっといるのは嫌だったので早く退院したいと言って退院させてもらいました。
退院させてもらった事は良かったのですが、ほとんど歩けないのでとにかく大変でした。
それでも杖を使って近くのコンビニ等には買い物に行ってましたね。
とにかく必死だったことを覚えています。
 

どんなリハビリをされたのですか?

リハビリに関しては、リハビリの方に教えてもらったものをベースに自己流のものをやっていました。
やり方としては動かない手が動いているイメージをする。
それをとにかく脳にインプットするという方法でした。
ぼーっとする日々が続いていたので頭から鍛えていかないとダメだと感じたんです。
誰かに言われたわけではなく自然にそう感じたんです。
とにかくポジティブに足が動いていたり脳が動いていたり。
そんな想像を毎日毎日繰り返していました。
 
最初の頃は1日5分程度しかできないんです。
頭がパンクしそうになるのでなかなか長時間はできませんでした。
それでも毎日続けて出来る時間を増やしていきました。
そうしたら少しずつではありますが、手が動くようになり足が動くようになり杖を使わなくても歩けるようになりました。
主治医の先生はびっくりしていました。
脳の写真を撮ったら少しずつ脳の組織が活発になっていたそうです。
先生は「こんなの見たことがない」と驚いていました。
 

どうやってモチベーションを保ったのですか?

落ち込んでしまいそうな時も何度もありました。しかし、とにかく「生きたい」という本能がありました。
生命力と言えばいいのでしょうか。
それをずっと思いながらリハビリをやってきました。
 
どんな人にでも当てはまるリハビリではないと思います。
しかし、自分はこの方法でいろんな機能が回復しました。
脳には解明されていないところがまだまだあると思います。
自分はそこに賭けてみたいと思いました。
今でも脳の自己再生能力があるのではないかと信じています。
正直どうなのかが分かりませんけどね笑
 
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脳梗塞になって感じた事はありますか?

この病気になってようやく「人に支えられている」ことがよくわかりました。
最初は辛かったですが「病気になって良かった」と思っています。
今まで見えなかったことや病気しなかったら気づけないことがたくさんありました。
健康な時はなかなか自分では気づけないことがたくさんあります。
病気になりきる事はなかなか難しいですが、周りの人などに支えられているんだなという事は大切にした方が良いと思います。
人は、縦のつながりと、横のつながりがあると思います。
縦のつながりは、ご先祖様。ご先祖様の1人でも途切れたら、自分は生まれて来れなかった。
自分は、途方もない人数のご先祖様と繋がっている。
横のつながりは、今、いる人たち。
人は見えなくても、たくさんの人と繋がり、支えられている。そう感じるようになりました。
 

ユニケアで働いて感じたこと

皆さん本当に優しい方ばかりです。
自分が社長をしていた頃の人たちとは大違いです笑
きちんと選んでいらっしゃるんだなと感じています。
仕事も楽しくやらせていただいています。
仕事や作業はリハビリだと感じるので全く辛くもないですし苦痛でもありません。
先程も言いましたが「人のために何かをして恩返したい」という思いが強いので何をしていても楽しいです。

今後どんな人生を送りたいですか?

人のバックアップをしていきたいと思っています。
自分が生きている限りはそんな活動していきたいです。
今はユニケアさんでいろいろお手伝いできたらと考えています。
 
ユニケア訪問看護リハビリステーション 江戸川区
 

脳梗塞などの後遺症を持っている方に一言お願いします

あきらめちゃいけない。そう言いたいですね。
目標があったら目標を立ててその目標に対して一歩一歩進んでいく。
そうすればいつかはその目標に手が届く。それを諦めちゃうからだめなんです。
でも、あきらめない方法というのが難しい。一人一人違うから。
それでも単純に「あきらめない」ということが大事。
私はそうやってここまでがんばってきました。まだまだ頑張るつもりです。
 
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最後に一言お願いします

死なないでくださいと言いたい。いろんな人に向けて。
もちろん脳梗塞やられている人に対しても。
自殺者も多いじゃないですか。
「人に甘えちゃいけない」と思っている人は多いが甘えていいし頼っていいと思う。
「助けてください」ということがなかなか言えない。もっと言って欲しいと思っています。
1人じゃないから、生きて欲しい。
死ぬようなことがあったら相談してください。
死ぬっていうのは究極だから。
そういう人の力になりたいと思っています。
 

おわりに

今回村上さんとのインタビューを通してたくさんのことを学ばせていただきました。
村上さんが脳梗塞を発症した当時「死にたいと思っていた」という話を聞いたとき、自分の父親が何度も自殺未遂したことを思い出しました。
人は病気になると本当に精神的にショックを受けてしまいます。
その時に周りにいる人間が支えることで、そういったショックも和らげられるのではないかと感じます。
村上さんの場合は、周りに頼りになる家族はいなかったということでしたが、それでも周りの人に支えられていると感じたそうです。
 
私たちは1人では生きていけません。色々な人の支えがあるから生きていけるのです。
そのことに気づいたときに人は強くなれるのではないでしょうか?
 
そんなことを考えさせてくれるとても貴重なインタビューとなりました。
村上さんはこれからもユニケアの駄菓子屋番頭や事務所の整備等の仕事をしてくださいます。
村上さんに直接会っていろいろとお話したいという方もぜひ一度いらしてください。
様々な学びがあるかと思います。
 
今回学ばせていただいたことや「大切にしなければいけない気持ち」などを胸に込めながら日々の訪問看護の業務に活かしていきたいと思いました。
 
ユニケア訪問看護リハビリステーション
青木創治郎