社会保障審議会介護保険部会の論点 ②経営の大規模化・協働化

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

もう8月も終盤になり、2022年ももう3分の2が過ぎようとしております。

私たちも日々訪問看護サービスを行っておりますが、少しずつ日も短くなり、少しずつ秋めいたものを感じております。

 

今年も、新型コロナウイルス感染症に悩まされる1年となってしまっています。

経済を元に戻すべく、今年は大きな自粛要請もないため、やむを得ない部分はあるものの心配は尽きません。

私たち訪問看護師も常に感染対策を最大限行い、ご利用者様へのサービスに従事しております。

日常生活においてマスクをしなくてもよくなる日が、早く来てほしいものですね。

 

さて前回に引き続き、さる7月25日に開催されました「社会保障審議会介護保険部会」において議論された内容について取り上げさせていただきます。

今回のテーマは、生産性向上についてさらに掘り下げ「経営の大規模化・協働化」についてです。ぜひお付き合いくださいませ。

 

厚生労働省が考えていること

今回の介護保険部会の最大の論点は「生産性の向上」にあります。

前回のコラムでは、その概要についてご紹介したわけですが、各論として様々な議論が展開されました。

もちろん、これはまだ決定事項ではありません。

ただ、人口減少社会・超高齢化に突き進む日本が、今後どう介護保険制度を持続していくかの大きなカギとして、生産性の向上は切っても切り離せない重要論点であることは間違いありません。

 

いくつかある各論の一つに「介護事業の大規模化・協働化」というものがあります。

実はこれ、一部ではありますが制度として始まっております。

以下、その概要をご紹介したいと存じます。

 

なぜ「大規模化・協働化」が議論されているのか?

日本企業の99.7%が中小企業であることは、結構知られております。

日本経済が中小企業の英知や努力によって支えられていることは、まぎれもない事実です。

介護事業も同様で、法人種別は社会福祉法人・営利法人・NPO・一般社団法人等様々ではありますが、法人の規模感で考えれば中小事業者数とほぼ一緒と考えてよいでしょう。

要は、介護事業においても(もっと言えば障害サービス事業や医療機関も)、大多数の中小規模の事業所や法人によって支えられているわけです。

 

中小事業所は(規模に関わらずどの法人もそうかもしれませんが)、投資をしようと思っても簡単にはいかないものです。

当法人も一般社団法人として、現在江戸川区内で2か所訪問看護事業を運営しておりますが、何か大きな投資をしようとしても資金的な問題・収支面での問題を無視することはできません。

 

皆様方のおかげで、これまで何とか事業を継続してこられておりますが、先々を考えると不安はどうしてもあります。

 

小規模法人には、人材の採用についても大きな壁が立ちはだかります。

上場企業であっても、人材を採用するのは簡単にはいかないものですが、やはり中小法人ではできることにも限界が生じます。

 

例えば、新卒スタッフの通年採用。

規模の小さい法人ですと、どうしても現場を回すことに手一杯となり、人材を計画的に採用することが難しくなりがちです。

スタッフに欠員が生じた際に、それを補充する形で採用するという、いわゆる即戦力採用になってしまっているのではないでしょうか。

 

人材採用が非常に厳しい、この業界。

計画的に採用したくても、なかなかできない現状。

このジレンマ、胸が苦しくなるほど気持ちは理解できます。

 

少し前置きが長くなりましたが、国は試験的に近い形(実際には法整備され運用もされている)ながらも、法人を大規模化・協働化することにより、人材採用の負担やリスク、消耗品等の大量購入によりコスト削減に寄与できるのではないか、と考えているわけであります。

具体的な施策

介護保険部会では、経営の大規模化・協働化の一環として主に「中小事業所の事業継承・合併の推進」と「社会福祉連携推進法人」を挙げております。

 

先程、日本企業の99.7%が中小企業でるあるとお伝えしましたが、多くの中小企業において後継者不足が深刻と言われており、業績がよいのに経営を断念せざるを得ないという話がよく聞かれます。

 

最近では、商工会議所等の後押しもあり、事業承継(M&A)が少しずつ進んでいるようです。

 

介護業界においても他人事ではありません。

介護保険制度施行から20年以上経ち、施行当初から立ち上げた介護事業法人の中には世代交代という動きもあります。

またそれ以前に、介護経営が大変過ぎて情熱を失い経営者や、人材不足で事業の継続が難しい等の理由で、黒字にもかかわらず事業廃止してしまうところも多く聞かれます。

 

東京商工リサーチの調査によれば、2021年の介護事業の倒産件数は激減しているとのこと(下記参照)。

倒産件数が減っているのはよいことですが、これはコロナ関連の経済対策の効果によるものとの見方が強いと言えます。

 

現在も尚、特養や老健等の介護施設ではクラスター感染が相次ぎ、苦しい運営を強いられております。

過酷な状況下でお仕事をされている現場の方におかれましては、ただただ頭の下がる思いです。

 

今後も何らかの支援は続くとは思いますが、恐らくコロナ禍初期のような手厚い経済対策までは見込めないでしょう。

以前に本コラムで取り上げました「物価高騰問題」等、問題は山積状態です。

 

2021年は倒産件数が減ってはいるものの、以後はその反動がやってくるのではないかと考えられます。

介護保険部会では、介護事業の事業承継や合併を積極的に推進することに言及しております。

他の業界ももちろんですが、業績がよく世の中に役立つ製品やサービスを提供しているのに、廃業してしまうのはあまりにもったいないと思います。

もちろん限界はありますが、たとえ赤字であったとしても、弁護士や公認会計士、税理士、中小企業診断士といった専門家が関わることで救済することができれば、その企業のノウハウや資源を活用できるかもしれませんし、雇用も守られます。

少なくとも、黒字倒産という悲しい事態は回避したいものです。

今後、介護業界においてもますます企業合併・事業承継が進んでいくものと思われます。

 

そして、まだ数は少ないですが「社会福祉連携推進法人」という制度があります。

社会福祉法人に限定している施策のようです。

細かい解説は割愛しますが、簡単に申しますと複数の社会福祉法人がタッグを組んで一つの事業体をつくり、人材確保や災害対策の強化、経営の効率化を図っていこうという考え方に基づいてできたものです。

それぞれの法人の自主性を保ちながら・・・という記載もありますが、ここがポイントかと思います。

 

個人的には、本当のこのようなモデルが全国的に広がるのか、という疑問もありますが、考え方としては時代の流れというものか・・・という気もします。

 

今は社会福祉法人に限定しておりますが、今後は民間法人にも広がっていくのでしょうか?

筆者は、地域高齢者の生活を支えているのは、主として地域の小規模介護事業所であると本気で思っています。

「経営の大規模化」を推進するということは、やもすればこういった地域の小規模事業所の存在を否定することにもなりかねません。

経営の効率化や生産性の向上については、待ったなしで全事業所が目指さなければなりませんが、いたずらに小規模事業所を排除するような動きになることだけは、絶対にあってはならないと考えます。

 

「スイミー」のように

皆様「スイミー」というお話を覚えていらっしゃいますでしょうか?

小学校の国語の授業で、恐らく勉強されたことがあるかと思います。

 

一つひとつは小さいスイミー、このままでは大きな魚に食べられてしまいます。

このままではいけないと、スイミーは一致団結し、大きな魚の形にまとまって敵に立ち向かうというお話です。

 

一つひとつの介護事業所に、何か「敵」がいるというわけではありません。

しかし一法人レベルではできないことでも、何か工夫をすることによって他法人と連携していくことにより、規模の経済性を得ることはできるかもしれません。

 

このスイミーのように、小さな事業者がまとまることにより、お互いを共存させる可能性が広がる可能性が出てくる。

今後の介護事業を継続していく中で、考えなくてはならない問題といえるでしょう。

 

ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、訪問看護師の魅力ややりがい、介護保険制度の動向等、皆様にとりまして有益な情報をこれからも発信し、同時に当法人の様々な取り組みについてご紹介してまいります。

 

そして、私たちが提供する訪問看護サービスの質をもっと高めていけるよう、これからも日々努力いたす所存です。

 

「訪問看護に興味がある」「訪問看護を学んでみたい」という方、ぜひユニケアでご一緒に活躍していただければと思います。

お気軽にご連絡くださいませ!!

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

 

【参考URL】

第95回社会保障審議会介護保険部会資料

好学社「スイミー」レオ=レオニ/作 谷川俊太郎/訳 1969年

東京商工リサーチHP