こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
さる7月25日に、社会保障審議会介護保険部会が開催されました。
2024年度の介護報酬改定に向けての足掛かりになる議論がなされたわけですが、今後の介護サービス事業を行う上で非常に重要な内容が含まれておりました。
もちろん、当法人が担う訪問看護サービスにおいても、決して他人事ではありません。
この介護保険部会で議論された内容を、本コラムにて数回に分けてご紹介したく存じますので、是非お付き合いいただければ幸いです。
今回はその①として「生産性の向上」を取り上げてまいります。
これまで取り上げられてきた意見
過去、社保審介護保険部会では、介護業界に関する問題点等について様々な意見が上がっております。
以下、部会資料から一部抜粋いたします(原文ママ)
○ 介護職員は現状でも既に不足。また職員の高齢化が進んでおり、退職者を補いながら入職者の上積みを図らなければならない。魅力のある仕事と評価され、積極的に介護職員という職業を選択する者を増やす施策を重点的に進める必要がある。
○ 介護職員の最大のモチベーションは、ケアにより利用者が元気になったという体験。ケアの質と人材確保は相互に補完する関係にあることを政策に取り入れるべき。また、離職理由は賃金よりも、職場の人間関係、働きやすい職場であるか、法人等の理念や基本方針との不一致が理由として挙げられており、本質的な人材確保対策が必要。
○ 特に地方の郊外部等は慢性的な人材不足が生じており、新型コロナウイルス感染症の影響により、さらに深刻になっている。介護人材の確保、育成や今後の感染症下における安定的なサービス提供の継続のために、地域の実情に応じた支援や対策がこれまで 以上に必要。また、現場における介護ロボットの活用、ICT化の促進、生産性の向上を図るべき。
○ 看護職員の免許を持って働いている人で介護サービスに従事している人は少なく人材不足の状況だが、それに対する施策がない。 介護サービスを行う看護職の人材育成や確保対策を改めて考えることが必要。
○ 処遇改善加算を取り入れてから、介護職員や希望者の増加、人員不足の緩和が見られたというデータはあるか。
○ 一層の処遇改善を進める必要がある。生産性向上にも取り組み、職場環境の改善や処遇改善につなげていく必要がある。
○ 地域の実情に応じた体制整備、職場環境の改善への支援を引き続き検討すべき。
○ 規制改革推進会議において、通所介護事業所や公民館等の身近な場所を念頭に置いたオンライン診療について検討することとされているが、本人の意思や診療の質、疾患の特性等を踏まえ慎重に検討すべき。ICT化の推進に当たっては、適切性の判断も重要 となるので、様々な観点から幅広い検討を行った上で、結論を得ることが必要。
○ 治療と介護のケアミックス的なニーズに対する提供体制をどう整えていくか。介護人材の確保や介護現場での生産性向上の推進の議論に当たっては、こうした視点も含めた丁寧な検討が必要。
○ 労働人口が減少傾向にある中、介護職員を大幅に増やすことは現実的でない。介護現場のDX・規制改革を進める必要がある。
○ デジタル技術の活用について、在宅と施設とを同様に議論すべきではない。在宅にそぐわない部分もあるので配慮が必要。
○ 介護福祉士等のスキル向上、周辺業務を担う元気高齢者の活用、ICT等を活用した周辺業務の軽減を進めるべき。
○ 介護現場の革新や科学的介護を進める際には、一定の設備投資が必要であり、そのためには大規模化・ネットワーク化が必要。
等々挙げられております。
これはほんの一部であり、これまで出席委員から寄せられた意見はたくさんあります。
筆者が考える「最近の議論の傾向」
部会出席委員からのご意見の中には、人材不足への対策をもっと講じる必要があるのではないか、というものも多数ありました。
すでに私たちも承知の通り、これは介護保険制度が始まって間もない頃から叫ばれていることであります。
現在も、そしてこれからも、この人材問題については解決に向けて努力しなければならない超重要課題の一つであることに、異論を唱える方はいらっしゃらないでしょう。
上記を踏まえた上で、筆者が感じたことは何か。
それは、介護人材不足への直接的な対策、すなわちいかにして介護人材を増やしていくかということもさることながら、ここ最近では介護サービスの「生産性向上」をどう高めるかについて、より重きを置いてきているのではないか、という点であります。
先程ご紹介したご意見の中に「労働人口が減少傾向にある中、介護職員を大幅に増やすことは現実的でない」というものがありましたが、まさに言い得て妙であると感じました。
わが国にとって超重要なエッシェンシャル・ワーカーの一つである、介護職。
特に力を入れて取り組んでいかなくてはならないということですね。
もちろん大前提として、介護職のサービスの質を高めることや、介護職の魅力を高めていくこと等が重要なことは言うまでもありません。
ただ、労働人口の減少は、介護業界に限ったことではありません。
どの業界でも同じように深刻な問題であります。
今後確実に進んでいく、我が国日本の人口減少。
本コラムでも幾度となく取り上げてまいりましたが、介護事業が生き残っていくには「生産性の向上」が至上命題であることは、もう誰も否定できないと思われます。
どう生産性を向上させるか? ~今日からでもできる意識改革~
介護保険部会では、介護サービスの生産性向上に向け、上記のようなスライドをご紹介しております。
個人的には、このすべてを今日から実行するのは困難かな、とも思えますが(笑)、意識を持つという意味では「すぐにでもできること」と言えるのではないかと考えます。
「職場環境の整備」について、有名なフレームワークとして5S(5つのS)というものがあります。
これは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」の5項目について、それぞれのローマ字の頭文字をとってまとめたものです。ご存知の方も多いのではないでしょうか。
製造業やサービス業において、まず業務改善において取り組むべき事項の一つとして、この「5S」が活用されています。
書類や物品が乱雑であれば、それを探すのにかなりの時間を要します。
これでは、生産性を上げる以前の問題になってしまいます。
そこで、
・いらないものを捨てる(整理)
・決められた物を決められた場所に置き、いつでも取り出せる状態にしておく(整頓)
・常に掃除をする(清掃)
・整理・整頓・清掃が繰り返され、職場をきれいな状態に保つ(清潔)
・決められたルールや手順を全員で守る習慣をつける(躾)
という「5S」が必要というわけですね。
5S活動をすることで、スタッフさんの意識が高まります。
無駄な作業が減れば、ご利用者様へのケアやスタッフ研修等、本来必要なことに時間を有効活用できる可能性が高まります。
「手順書の作成」については、訪問系のサービスでは通常行われていることと思います。
介護サービスを完全にマニュアル化することは難しいでしょう。
「マニュアル化=サービスの画一化」につながりかねません。
しかし、新人スタッフさんでもある程度仕事ができるようにするためには、マニュアル化は必要です。
申し送りのやり方が属人化してしまっては、なかなかそれを実現することはできないでしょう。
そこで手順書が作成され、かつ定期的にアップデートすることで、基本的にはそれを見ればある程度の仕事ができるようになるということです。
ここでご紹介した内容はほんの一部ではありますが、私たち訪問看護ステーションでも真剣に考えていかなくてはならない重要なことばかりであります。
まとめ
ここでは「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」が紹介されておりまして、厚生労働省がeラーニング用として動画や資料を公開しております。
筆者も拝見しましたが、少なくとも生産性向上の意識を醸成するには、非常によい動画であると思います。
「何を机上の空論を言っているのだ」と思われる前に、まずは動画を是非ご覧いただきたいと存じます。
何か物事をゼロから始める場合、ノウハウも情報も何もなければ仮説を立てて実践し、トライ&エラーを繰り返しながら構築していくしかありません。
確かに「そんな簡単に行くなら誰も苦労しない」という意見もごもっともかもしれません。
しかし、物事はすべて「机上の空論」から始まると思うのです。
何かを打ち出そうと思ったら、まず動いてみることが必要なのかもしれませんね。
ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、訪問看護師の魅力ややりがい介護保険制度の動向等、皆様にとりまして有益な情報をこれからも発信し、同時に当法人の様々な取り組みについてご紹介してまいります。
そして、ユニケアのファンを1人でも多く増やすことにより、私たちが提供する訪問看護サービスの質をもっと高めていけるよう努力いたす所存です。
「訪問看護に興味がある」「訪問看護を学んでみたい」という方、ぜひユニケアでご一緒に知見を広げていければと存じます。ぜひお気軽にご連絡いただけますと幸いです!!
今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
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