東京都が打ち出す「健康長寿社会」

こんにちは!東京都江戸川のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

東京都のホームページでたまたま拝見したのですが、将来の東京の在り方についてまとめた「未来の東京戦略ビジョン」というものがありました。

興味があって読み進めてみますと、東京でも高齢化率が高まっていく中、どのようにしたら健康寿命が延びていくか、歳を重ねても生き生きと暮らすことが出来るかというビジョンであると理解いたしました。

 

コロナ禍や世界情勢等、この不確実性が高い世の中において、このビジョンが本当に実現できるのか、理想論だけを掲げても難しいのではないかと、正直懐疑的な部分もあります。

しかし、こういう考えを持つことは大変重要かつ必要であると思いましたので、今回のコラムにて取り上げさせていただきます。

是非お付き合いいただけますと幸いです。

 

「高齢者像」は確実に変化している

日本の人口が減少していることは、もはや皆様ご存知のことと思います。 

それは東京都も例外ではありません。

 

東京都の人口は少子化の影響により、2025年の1423万人をピークに減少に転じることが予測されています。

未来予想ではありますが、今は2022年。3年後の話ですからかなり現実的なことかと思います。

 

一方で、高齢者の数も比例して増加の一途となります。

高齢者人口は、25年には約328万人(高齢化率23.0%)、40年には379万人(27.8%)に達し、都民の4人に1人が高齢者となる見込みであるとのこと。

在宅生活を営むために、いかにその基盤を整備すべきか

前述の通り、独居高齢者が増え、老々介護をされる方が増えてくると、当然ながら対策を講じなければなりません。

ビジョンでは、高齢者が自分らしく安心して暮らすために、東京都が取り組まなければならない課題は多岐に渡る中、特に重要な課題として「増大する介護ニーズに対するサービス基盤の整備と介護人材の確保」を挙げています。

東京都が出している「東京都高齢者福祉保健計画」では、介護サービスの見込み量が今後どれ位見込まれるのかについての統計が載せられています。

上記2つのグラフは、2019(令和元)年度と2025(令和7)年度までの期間で、各サービスにおいて介護サービスの見込み量がどの程度推移していく(いった)のかについてまとめられています。

 

こちらを見ますと、2019年度と2025年度との比較で、訪問介護が+15.9%、訪問看護が+35.2%、訪問リハ+27.2%、通所介護+17.1%、通所リハ+14.1% 等となっております。

 

下段の「地域密着型サービス」に目を移すと、定期巡回が+61.7%、看護小規模多機能は+168.9%となっているのです。

 

これを見ますと、訪問看護や訪問リハなどの医療系サービスが特に増加が見込まれているということがわかりますね。

 

在宅限界を高めるために、一番効果的と思われるのは「医療と介護の連携」ですが、肝となるのはやはり医療系サービスの充実です。

このように、介護を必要とする高齢者の皆様が安心して在宅療養生活を送るために必要な「訪問看護サービス」について、東京都では様々な施策を講じようとしております。

 

例えば「管理者・指導者の育成」「代替職員の雇用経費の補助」があります。

また都の独自事業として、認定看護師相当の指導者が配置された訪問看護ステーションを「教育ステーション」として指定し、そのステーションが地域の事業所に対して、同行訪問などを通じて指導・助言を行う事業なども実施しているそうです。

 

教育ステーションという言葉、筆者は初めて聞きましたが・・・

訪問看護の整備が、地域包括ケア実現の重要なトリガーになることは間違いありませんが、個人的には都民や関係者に十分伝わっているとはとても言えないようで、そこが課題ですね。

 

施設の基盤整備

東京都高齢者福祉保健計画では、施設サービスの基盤整備にも言及しています。

 

まだまだ、施設整備は十分ではない、と。

それは、東京都の地価の高さが要因の一つであることは言うまでもないことです。

土地面積には限界がありますからね・・・

 

これはさすがに、法改正をしたり税制優遇をしたりして、整備促進を促す以外に道はないと思います。

 

実際、都では未利用の都有地を最大90%まで減額して貸与することや、国有地や民有地の借地料を補助するといった事業などを実施しています。

 

また、施設の整備費用を都が補助することや、不動産オーナーが所有する土地などに施設を整備して、事業者に賃貸する場合も都が補助する仕組みなども用意しているようです。

特養の入所基準の厳格化によって、申込者はかなり減少しております。

しかし、申込者が減ったからよいと喜んでばかりはいられません。

 

申込みしなかった(できなかった)方がどうなっているのかが不明なのに、特養の申込者が減ってよかったと簡単に片づけてはいけません。

これから先しばらくは、施設ニーズはなくなりません。

むしろ、サービスを必要とする高齢者は増加していくと予測しております。

 

上記の表(赤い〇の部分。きれいでなくてすみません)にもあります通り、都では特養・老健・グループホームを2025年までに大幅整備し、施設サービスが必要な方に行きわたるようにしようとしているのです。

介護人材の確保

東京都は、各保険者が推計したサービス見込み量を基に、介護職員配置率を乗じて将来の介護職員の需要数を推計したデータを出しております。

 

上記の資料をご覧いただくと、東京都では2025年度に22万3022人の介護職員数が必要になると予想しています。

 

一方で、その下にある「供給面」に注目すると、現状のペースで供給できる介護職員は19万2073人にとどまることを示しているのがわかります。

 

その差、3万949人。

あくまで推計ではありますが、要するに完全に需要を供給が追い付かず、介護職員3万人以上増やしていかないと最低限のサービスすら賄えない可能性がある、ということを言っているのです。

東京都の場合、人口は多いものの、多様な業種があって働く選択肢が広く、業種間の競争が激しいため、なかなか介護人材に労働者が行き渡りません。

 

コロナ禍による経済不安で、巷ではリストラ等も増えていると聞きます。

短期的には、コロナ経済対策により倒産は抑制されているようですが、平常に戻った際に再建できなければ倒産も加速度的に進んでいくでしょう。

 

介護労働市場は、世間が不景気になると盛り上がる、すなわち介護職の応募が増えると言われていますが、慢性的な人手不足の解消とまではいきません。

 

こうした実態も踏まえ、中長期的な視点で、人材確保・定着・育成対策を総合的に実施していかなければならないのは、間違いありません。

また、介護現場の革新を進めていくことが、質の高いサービスを継続的に提供できる仕組み作りに役立つだけでなく、介護業界のイメージを変え、人材確保にもつながると言えます。

最近では、外国人介護従事者の受入れ環境の整備も少しずつ進んでいます。

先日、筆者の知り合いから聞いたのですが、岡山県から呼び寄せたフィリピン人の介護士さんが、直近の介護福祉士国家試験に合格されたとのこと。

日本語能力検定もN1レベルであっても大変な試験に、見事に合格されたという話を聞いて非常に驚きました。

大変素晴らしいと思います。

 

もっともっと門戸を開き、よくわからない偏見など捨てて、受け入れを進めるべきですね。

 

地域包括ケアの実現に向けて

現在、地域包括ケアシステムの推進と深化が各地で進められているそうです。

東京都が目指すべき地域包括ケアシステムを実現していくためには、前述したサービス基盤の整備や介護人材確保だけでは足りません。

 

一人ひとりが介護予防・フレイル予防に取り組むことが必要であると、都は強調しております。

 

「フレイル予防」とは、公益財団法人東京都医師会のホームページによりますと「心と体の働きが弱くなってきた状態を防ぐ取り組み」と定義しています。

 

社会とつながり、人との交流の機会を持ち続けることや、いくつになっても生きがい・役割を持って生活できる地域づくりなどが重要になってくるわけであります。

都が掲げる主な取組みとして、短期集中予防サービスに先駆的に取り組む保険者を後方支援し、効果的な介護予防が展開されるよう推進していく方針を打ち出しています。

 

また、コロナ禍でのフレイル対策として、オンラインツールを活用した介護予防・フレイル予防活動に取り組む区市町村に対し、補助率10分の10の支援事業などを行っているそうです。

 

こういう取り組みには、都も公費を投入して積極支援していただきたいところですね。

介護サービスの生産性を上げるために、大変有益な取り組みになると思います。

 

このほか、東京都の強みである活発な企業活動、豊富な経験と知識を持った多くの人たちの力を活用し、地域活動を活性化させる「東京ホームタウンプロジェクト」なども実施しております。

URLを貼り付けましたので、お時間があるときにご覧いただければ幸いです。

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

【参考URL】

「未来の東京」戦略ビジョン

東京都福祉保健局「東京の高齢者と介護保険」資料

東京都高齢者保健福祉計画(令和3年度~令和5年度)

一般社団法人江戸川区医師会HP

フレイル予防について 公益社団法人東京都医師会HP

東京ホームタウンプロジェクト