居宅介護支援事業所が「介護予防支援」の指定対象に!?

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

皆様、ゴールデンウィークはいかがでしたでしょうか?

介護業界ではなかなか長期休暇を取得するのが難しいですが、少しでも休みが取れてゆとりある生活ができるとよいと思います。

筆者はGWも介護報酬の請求の仕事で休めませんでした・・・どこかで少しまとまった休みが取れればと思っています。

最近、暑い日もあったりして体調を崩しやすいですが、どうぞご自愛くださいませ。

現在、2024年度の介護保険法改正・報酬改定について議論されておりますが、その中で居宅介護支援事業所が介護予防支援の指定対象として加わる見通しとなったようです。

かなり大きなトピックスかと思われますので、今回のコラムに取り上げさせていただきました。

是非最後までお付き合いいただけますと幸いです。

地域包括支援センターの役割

各都道府県において、日常生活圏域ごとに「地域包括支援センター」が設置されております。

江戸川区では、地域包括支援センターを「熟年相談室」と称していますね。

ケアマネさんはじめ、多くの方々が地域包括支援センターの皆様と接していらっしゃると思いますが、今一度地域包括支援センターの役割を知っておく必要があります。

地域包括支援センターの役割は、大きく分けて以下の通りです。

・総合相談支援

・介護予防ケアマネジメント

・権利擁護

・ 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

の4つがあります。

「総合相談支援」とは、文字通り介護に関する総合的な相談窓口として機能しているものです。

保健師・(主任)ケアマネ・社会福祉士といった専門職の方々が、地域において生じる様々な介護福祉問題について相談を受け、解決に向け調整を図っていく機能です。

「権利擁護」は、近年深刻な問題になっている高齢者虐待について対応します。

実際に発生した事案に直接対応するだけでなく、虐待防止の啓発活動や成年後見制度の活用促進を行っています。

「包括的・継続的ケアマネジメント支援」は、地域ケア会議の開催や地域のケアマネさんへの指導・相談業務を行うものです。

そして「介護予防ケアマネジメント」事業は、高齢者の重度化軽減や予防を目的とした活動であり、そのメインになるのが「介護予防支援」プランの作成やフォローになります。

今回のメインテーマは、まさにこの「予防プラン」に関することとなります。

地域包括支援センターの業務は本当に大変!

地域包括支援センターではどのような活動を行っているかについては、先程ご紹介した通りです。

皆さん、これをご覧になってどう思われますでしょうか?

筆者は、地域包括支援センターが行う業務はあまりに多岐にわたり、これだけの業務を限られた専門職で担うのは困難であると考えております。

しかも、2021年から「重層的支援体制整備事業」が始まり、主たる業務である「8050問題(50代の単身者と80代の親の引きこもりから生じる社会問題)」の相談窓口を地域包括支援センターが担うことになりました。

8050問題は非常に深刻で、高齢者虐待や認知症対策と同じくらい重要な問題です。

地域包括支援センターに求められる役割は重くのしかかります。

実際、どれ位地域包括支援センターの業務負担が大きいのかを示す資料として、さいたま市が公開している資料をご紹介します。

上記の資料をご覧いただくと、この5年で包括の業務は軒並み増えていることがお分かりいただけると思います。

特に、先程挙げた「虐待案件への対応」は5年間で8割増、ケアマネさんへの指導については約5割増と、非常に深刻です。

これに、予防プランの作成やフォローが加わるのですから、気が遠くなりそうです。

これだけの事業を限られた専門職で担っているのが、地域包括支援センターの現状です。

業務過多になっているのは間違いありません。多岐にわたる業務の負担を軽減していかないと破綻しかねません。

上記の業務の中で、筆者が最も負担になっていて問題と思えるのが「介護予防支援」です。

これをどうにかできないか、というのが話題になっているわけであります。

実は以前から議論されていた「予防支援プラン」の問題

先程から再三にわたり、地域包括支援センターの業務過多について取り上げておりますが、実は予防支援の居宅ケアマネへの移行については随分前から問題になっていました。

直近の2021年度介護保険法改正・報酬改定においても、本件についてはかなり議論になりました。

地域包括支援センターの業務が拡充されることは、昨今の社会問題を勘案すれば既定路線でした。

それを見越した各業界団体が、予防ブランの居宅ケアマネへの移行を審議会に働きかけていたのです。

国もそれを問題視し、何らかの策を講じなければということで議論した結果、予防支援については「若干の報酬増」と「委託連携加算(300単位)の創設」でした。

筆者はもっと抜本的に報酬が上がると予想していましたが、完全に肩透かしを食らってしまいました。

この程度の内容では全く改革にはなりません。

本件に関する着地点は「予防支援を包括から居宅事業所へ移行」であったはずで、大いに期待されていただけに、正直ガッカリしたものです。

実際上記の対策では、問題解決にほとんど役に立たないとすら思ってしまいます。

この3年で、この議論はさらに白熱し、今般の介護保険法改正に向け大きな山が動こうとしているわけです。

「予防支援を居宅ケアマネに移行」で、根本問題は解決できるのか

本件含め、法改正の概要はまだ決まっていませんし、報酬改定の本格審議は夏以降からになるでしょう。

とはいえ、本件はかなり真剣に議論されており、かなりの確率で決定しそうな感じです。

未確定要素はまだまだあるものの、もし今回予防支援プランを直接居宅ケアマネが担えるようになって、それだけで問題は解決するのでしょうか?

それは少し冷静に考えなくてはならないかもしれません。

居宅介護事業所は、残念ながらまだまだ事業性に乏しい部分があります。

具体的には、特定事業所加算を算定しない限りは十分な利益を上げるのが難しい、ということです。

ここ数年、居宅ケアマネさんの業務軽減に向け、事務員やITの導入を条件に「プラン件数による支援費逓減の緩和」が認められるようになりました。

コロナ禍も相まって、担当者会議のテレビ電話等での開催を認めたりして、国もケアマネさんの業務負荷軽減に向け考えてはくれています。

今回の予防プランについても、地域包括支援センターが居宅介護支援事業所に委託をしているケースが非常に多いのが実情です。

ご利用者様との契約に先立ち、包括と居宅事業所との委託契約を締結したり、毎月の実績共有も手間がかかったりして、事務的な取引コストがのしかかります。

委託費は一定割合で包括と居宅とで配分しますが、もともとの基本報酬が十分でないため、居宅ケアマネさんが包括からのプラン委託に消極的になっているのも現状です。

そのような中で、予防プランを包括からの委託によらず直接対応できるようになるのは大きいですが、それだけでは根本な問題がなかなか解決できないと思われます。

根本的に、基本報酬が低すぎます。

居宅介護支援事業の業務問題として「事務の手間がかかる」というものがあります。

もっとも、事業所側にも業務効率を高めるために知恵を絞る必要は、当然あると思います。

しかし、そもそもの業務負担という「システマティック・リスク」を少しでも解消するためには、やはり基本報酬を上げることが必要だと筆者は思うのです。

しかしそれでも、予防プランが包括からの委託ではなく、居宅ケアマネさんが直接担当できるようになれば、それだけ業務に対する見返りは大きくなってメリットはあります。動向は今後多いに注目する必要はあるでしょう。

そして、予防プランとは直接関係ない話ですが、「居宅介護支援費の利用者負担導入」という、居宅介護支援事業所にとって最大の問題が残されています。

厚労省と財務省とで繰り広げられているこの大問題、筆者は今般の改定においても「継続案件として導入見合わせ!」という可能性が高いと考えます。

しかし、社会保障制度の現状を考えると、居宅介護支援費の利用者負担はどこかで必ず実現するものと予想します。

そうなった時に備え、運営法人は「次の一手」をどう打つか・・・

そのためには、今後の制度の動向に対して常に注視していく必要があるということではないでしょうか。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

ユニケアでは、今後も本コラムにおいて皆様にとって有益な情報をお届けしたいと存じます。

では、次回の投稿をお楽しみに!!

【参考URL】

さいたま市資料

地域包括支援センターの役割(厚生労働省)