こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
3月に入り、春の兆しが感じられるようになりました。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
新型コロナウイルス感染症もまだ落ち着かず、私たち介護・医療の従事者も大変な状況でサービスを提供してはおりますが、何とか頑張って乗り切りたいものです。
本日は、コロナ関連の介護保険施策の中から、通所介護事業所・地域密着型通所介護事業所(以下「通所介護」といいます)に関するテーマを取り上げたと思います。ぜひお付き合いいただけますと幸いです。
コロナ禍における通所介護サービスの現状
新型コロナウイルス感染症のまん延が全く落ち着かない中、日本における医療機関や介護事業所においては厳しい運営を強いられております。
知り合いから最近聞いた話なのですが、都内の某リハビリ病院にお母様が入院されていて、このたび胃瘻造設のために系列病院へ転院し手術を予定していたものの、双方においてコロナのクラスター感染が発生したために延期となったとのこと。
そのお母様は脳血管疾患で入院し、回復期リハビリ目的で転院したのですが、退院後の在宅復帰が困難ということで、有料老人ホームに入居する方向で進んでいるそうです
経口摂取が困難であるため、入院中は経鼻経管栄養や点滴での栄養摂取を行っていますが、老人ホームの受け入れの観点から、今回胃瘻の造設をする運びとなっておりました。
しかし延期となり、修復の見通しは未だ立っていないとのことです。
これはほんの一例に過ぎず、私たち介護事業所では今もなお、発熱された方への援助や、実際にコロナ陽性となった方へのサービスを、防護服やゴーグル、フェイスシールドを身に纏いながら懸命に行っているのです。
なぜ「通所介護」を取り上げるのか?
数ある介護サービスの中から、今回「通所介護(デイ)サービス」を取り上げたわけですが、全国に通所介護がどれ位あるか、ご存知でしょうか?
厚生労働省が毎年公表している「介護サービス施設・事業所調査の概況」によりますと、令和2年10月現在における通所介護の数は、全国で43754事業所あり、従業者数は全職種合わせて696,049名いるとのこと。
日本全国で、約70万人もの方が通所介護で働いているというわけです。
同調査において、居宅介護事業所数が約39,284事業所、訪問介護事業所数が36,075事業所となっており、通所介護は他サービスに比べ圧倒的に多いことが記されています。
どの介護事業所においても、コロナ禍で非常に大変な状況に置かれていることには全く変わりありません。
ではなぜ今回、通所介護を取り上げさせていただいたのか・・・
それは、通所介護がコロナの影響を受け、経営的に厳しい状況に置かれているからであります。
新型コロナウイルス感染症に関する通所介護の特例措置
今、通所介護において最も恐れていることは「感染を恐れた利用控え」です。
これを放置すれば事業所運営が厳しくなり、介護サービスの確保が困難になってしまうことから、厚労省は2020年6月に「通所介護サービス等で利用者の同意をもとに2段階上位の報酬を算定できる」との特例を設けました。
しかし、オミクロン株のまん延が急拡大し、国内の学校でも学級閉鎖・学校閉鎖があちこちで発生する等、留まるところを知りません。
その中で、通所介護における「利用控え」は、さらに深刻さを増しております。筆者が知る神奈川県内の通所介護では、オミクロン株が猛威を奮うようになってからというもの、利用控えが深刻化し、定員の半分にまで稼働が落ち込んだという話も聞きます。
先ほどご案内した特例は、令和3年度までの時限的な措置だったのですが、通所介護における厳しい情勢を鑑み、このたび「介護保険最新情報Vol.1035」が発出され、令和4年度もこの措置は継続されることとなりました。
これが、通所介護事業所にとっては大変ありがたい措置であることは、間違いありません。
しかしありがたい反面、難しい問題もあります。
この措置は、基本報酬の一定割合を「加算」という形で補填することになりますので、当然ながらご利用者様にも自己負担割合分ご負担いただくことになります。
ですので、この加算を算定するには、ケアマネさんに案内の上ケアプランに盛り込んでいただく必要があります。
そして、これが一番大変なのですが、当該加算を算定することに対してご利用者様に説明の上、同意していただかないと算定できないのです。
筆者がいくつか知る通所介護事業所にお聞きしたところ、ほとんどのご利用者様は賛同して下さった中、同意していただけなかった方も、少ないながらもいらっしゃったそうです。
賛同して下さった方、本当にありがたいですね。
しかし、同意されない方がいらっしゃっても、それは仕方がないことであると思います。
高齢者の方の多くが年金暮らしであり、生活は決して楽ではありません。
ただでさえ年金額が削られ大変な中、これ以上負担を増やしたくないとお考えになる方がいらっしゃることに、一概に異論を唱えることはできませんよね。
このように、コロナ禍における様々な介護保険施策には、ご利用者様の自己負担を伴うものも多いことから、何とかならないかという議論がなされたわけであります。
与党・自民党による業界団体への意見聴取
上記の内容を受け、与党・自民党は新型コロナウイルスの深刻な感染拡大が続く中で必要な支援策について、介護事業者の団体から意見を聴取する機会が設けられました。
以前の記事でもご紹介しましたが、岸田政権が介護・医療業界に対する力の入れようが、ここにも現れていますね。
この意見聴取会において、特養の経営者らで組織する「全国老人福祉施設協議会」の出席者は、高齢者の「利用控え」に苦しむ通所介護に対して、何らかのテコ入れが必要であると申し入れました。
具体的には、通所介護経営の補償を要請するとともに、在宅の高齢者を最前線でケアする「訪問介護」にも言及しました。
コロナ感染のリスクを背負いつつ、在宅生活を水際で支えるヘルパーさんには、相応の補填が必要なのではないか、と。
通所介護の利用控えの現状として、下記のようなことが挙げられます。
・通所系サービスは、コロナ感染者の利用が判明した段階で休業せざるを得ない。
・同居のご家族に濃厚接触者、その疑いのある方がいた場合も、同様である。
・通所介護の利用を控えていただくことにより、過度の負担がかかるご家族もいる。
・通所介護を長期で休むことにより、ご利用者様の生活のリズムが崩れるばかりでなく、ADLの低下に直結するケースもある。コロナ完治後に復帰できず、寝たきりになるケースもある。
という具合です。
上記はご利用者側の問題になりますが、事業者側としても、これを何とかして避けたいと願うのは当然です。
しかし、稼働率の低下はどうしても避けられない・・・
これはもはや、事業者側の努力ではどうにもならない問題です。
老施協の出席者は、このような利用控えの場合に、飲食店において行ったのと同様な経営補填・補償をしてほしいと、注文を付けたわけであります。
経営補償を求める気持ち、非常によくわかります。
この意見聴取が、今後どのように進展していくかはわかりませんが、厳しい介護業界の現状を政府が何とかしていきたいと考えていることだけは、間違いありません。
終息が見えない中、コロナ禍に打ち勝っていくために
今回、通所介護の現状について取り上げましたが、厳しい状況であることは間違いありません。
もちろん、事業所側の努力は不可欠であります。
しかし、必要な支援は国にも考えていただきたいところです。
経営上一番つらいのは収支の悪化ですが、介護事業の場合は「人材確保」という根深い問題もあります。
スタッフの中からコロナ感染者や濃厚接触者が発生すると、事業所によっては業務がストップしかねません。
また、コロナ禍により、介護の仕事自体をあきらめてしまう職員が出てきたとしても、不思議ではありません。
そういうことも見越して、事業者は人材採用計画を立てていくことも求められるでしょう。
ただこれは、事業所の力だけではどうにもなりません。
何故なら、介護業界は長きにわたって人材不足に悩まされており、コロナ禍になったから急に発生したという問題ではないからです。
過去、介護におけるコロナ施策の中に「かかり増し経費の支援」がありました。
かかり増し経費の一つとして、介護従業者のコロナ感染により、人員が確保できなくなった場合の費用も含まれていました。具体的には、一時的に派遣会社からスタッフを確保した際にかかった経費等を助成するというものです。
突発的な対応としては、大変ありがたい施策ではあります。
しかし、コロナが未だに落ち着かない今、このかかり増し経費の助成の復活を、個人的には望みたいです。
大変な中でも、目の前のご利用者様へのサービス提供に全力を注ぐとともに、将来のあるべき姿を見据えた「企業ドメインの再構築」も、もしかしたら必要になるかもしれません。
【参考URL】