こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
11月に入り、すっかり日が暮れるのが早くなってまいりました。
先日「小春日和」について触れましたが、この時期は本当に春のように暖かい陽気です。
私たち訪問看護師も、小春日和のような暖かな気持ちでご利用者様に接していけるよう、日々頑張ってまいります!
さて最近、このような相談が筆者によく寄せられるようになりました。
それは「施設運営を考えているんだけど、どうしたらよいのかわからない」というご相談です。
訪問看護ステーションでも、有料老人ホームやサ高住(後述)に訪問看護師が訪問するケースはあります。無関係どころか、結構関係します。
そこで今回から数回にわたり、介護施設の開業や運営の注意点等について取り上げ、皆様に発信したいと存じます。どうかお付き合いいただけますと幸いです。
今回は1回目として「開業の流れや手続き」について取り上げます。
有料老人ホームの定義~施設形態もいろいろ
入居者数にかかわらず、高齢者に対して「食事の提供」「介護の提供」「洗濯掃除等の家事」「健康管理」のいずれかのサービスを提供する施設は、有料老人ホームに該当します。
また、有料老人ホームは「介護付有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」に大きく分かれます。
※近年では「サービス付き高齢者向け住宅」という形態も増えていますが、根拠法令の微妙な違いもあるため、ここでは割愛します。
介護付有料老人ホームは、簡単に申しますと介護保険のサービスになります(「特定施設入居者生活介護(特定施設)」といいます)。特定施設の場合は、施設自体に介護サービスが一体となっておりますので、設置にあたってはかなりの規制があります。
住宅型有料老人ホームの場合、それ自体は介護サービス事業所ではありません。そのため、住宅型有料老人ホーム自体の主たる事業収入は「家賃収入や管理費用」といった、不動産的収入となります。また特養等と異なり、公的な補助金もないため、参入障壁はそれほど高くないと思われがちです。
しかし、それは間違いです。有料老人ホームの開設は、決して簡単ではないということを十分認識しなければなりません。
事業主体として「法人格」が必要
有料老人ホームにかかわらず、介護事業を運営するには法人格を取得しなければなりません。個人事業者でなければ、有料老人ホームの事業主体になり得るということになります。
近年では、別事業を営む法人が、新規に介護事業を行うケースも増えております。
法人であれば開設は可能なのですが、サービスの性質上、介護の経験が全くない法人が有料老人ホーム事業を行う場合には、慎重な判断が必要です。設置主体となる行政も、事業未経験の法人に対して開設許可に難色を示すケースもあります。法人新設の場合も、行政との審議を要する場合があります。
事前の入念な事業計画策定と開業資金の準備
「介護ビジネスは追い風」とよく言われます。高齢者が激増し、供給が追い付かない状況ですので、ある意味正しいですね。
ですが、だからと言って安易に参入すると、大やけどをしてしまうことを心得る必要があります。
有料老人ホームを開設運営する上で、重要なポイントは3つあります。
1つは「開設地の選定と土地の手当て」です。
開設予定地を所管する自治体の現状がどのようになっているのかを、よく考えなくてはなりません(後述)。
また、土地の手当てが必要です。
有料老人ホームの開設において、事業者が土地を所有するケースはほぼなく、土地オーナーに建物を建ててもらい、テナントとして入居するという、いわゆる「サブリース」の形態がほとんどです。
開設を検討するにあたり、高齢者福祉に理解がある土地オーナーを見つけるだけでなく、契約形態を十分詰めていかないと、後々トラブルになりますので十分な注意を要します。
2つめは「資金の調達」です。
土地の保有を要しないといっても、有料老人ホームの開設には莫大な資金がかかります。建物賃貸借にかかるイニシャル・コストや内装費、備品や設備の用意、運転資金等も含め、億単位の資金がかかるとことはざらにあります。
自己資金だけでなく、金融機関からの融資も必要となります。お金のかかり方が、在宅系サービスとは桁外れとなりますので、相応の覚悟が必要です。
3つ目は「人員の確保」です。
有料老人ホームを運営する事業者の中には、施設内外に訪問介護や通所介護事業所を設置しているところが見受けられますが、それも含めて、有料老人ホームの運営には人員が必要になります。
適正に人員が配置できなければ、事業を行うことはできません。
しかし、介護人材を確保するのは容易ではありません。有料老人ホームの開設を検討するには「人員の確保」という難関を超えなくてはならないのです。
採用手段や時期、コスト等、あらかじめ計画しておかないと、本当に痛い目に遭います。
介護保険事業計画に基づき、有料老人ホームは整備される
介護施設の整備は、市区町村が策定する「介護保険事業計画」に基づいて行われます。介護保険事業計画は、3年ごとに行われる介護保険法改正の都度、見直されます。
介護保険事業計画には、地域の現状を鑑み、不足しているサービスがあれば整備する、といった内容が含まれます。例えば、高齢者の増加に対して受け入れ施設が不足しているので、特養を〇〇地域に50床、グループホームを××地域に18床整備する、といった計画です。
有料老人ホームについても同様に、計画に則り整備数を計画します。
裏を返すと、開設予定地域に有料老人ホームの整備計画がなければ、開設することはできないわけです。このように、有料老人ホームの開設には一定の規制がかかっているということになります。
まずは、地元の市区町村に相談すること
前述の通り、有料老人ホーム事業の運営は簡単ではありません。
人生の終末期を過ごす方の中には、疾患を抱える方も多く、いつ容態が急変するかもわかりません。要介護高齢者の方を受け入れるということには、大変な責任が伴うのです。
また、介護施設運営は、長期的視野で行われる必要があります。開設して数年でやめるという安易で無責任な考えは許されないのです。
さらに、地域住民の中には、高齢者施設の開設を歓迎しない人もいます。中には「認知症の老人が徘徊されては困る」「救急車が頻繁に行き来するのは物騒だ」等々、言いがかりとしか思えないようなことで反対する人も多いのです。
ですので、有料老人ホームの開設にあたっては、長期的視野で行うという覚悟を持ち、地域社会との交流や近隣の住民の理解を得ながら進めることが不可欠です。
また、設置予定地についてどのような法令の規制があるのか等、介護保険事業計画上の調整も含め、地元市区町村の担当部局に十分確認を取りながら進める必要があるのです。
これを「事前相談」といいます。
「事前協議」~高齢者の生活支援施設として適当であるかの審査
市区町村への事前相談を終えると、次に都道府県との協議に進みます。これを「事前協議」と言います。事前協議にあたっては、指針に対する適合性を審査します。
都道府県や政令市等では「有料老人ホーム設置運営指導指針」というものが示されています。建物の構造設備や運営面、手続き手順等について細かく規定されており、事業者はこの指針に基づいて開設し届出なくてはなりません。
都道府県や政令市等では、有料老人ホームとしての機能に支障が生じないように、事業者が趣旨及び内容を十分理解されているかを確認し、指導・助言を行っています。
審査は、有料老人ホーム設置運営指導指針の内容に合致しているか、だけに留まりません。
設置予定地が土砂災害のおそれのある箇所等か否か、当該地域を所管する土木事務所に確認が必要ですし、建築基準に合致しているかの確認も必要です。手続きが進んでいくと、消防確認も必要になります。
さらに、既存の建物に対して届け出を行う場合にも、注意を要します。建物用途が「共同住宅」や「寄宿舎」等である場合には、「有料老人ホーム」への用途の変更確認が必要です。これを怠ると法令違反となってしまいます。
有料老人ホーム設置届等の提出
有料老人ホームの設置については、老人福祉法の規定に基づき、都道府県知事等あて「有料老人ホーム設置届」を提出します。この届出の時期は、上記の地元市区町村・都道府県等に対する事前協議が終了し、建築確認後に速やかに提出することになります。
これが提出されない事業者は、いわゆる「無届ホーム」という扱いになります。有料老人ホーム設置届が提出されないままでいると、行政から届出の勧告を受けたり、悪質性が疑われる場合は事業者名の公表や立ち入り調査等、行政指導や行政処分がなされたりすることもありますので、ご注意ください。
特定施設の場合は、先程申し上げた通りそれ自体が介護保険のサービスになりますので、有料老人ホーム設置届とは別に「特定施設入居者生活介護」としての指定を受けるべく申請することになります。運営基準・人員基準・設備基準を満たしているかを、指定権者である行政が細かくチェックします。
工事完了後、事業開始届の提出
有料老人ホームの建設工事が完了し、事業開始した場合は、速やかに都道府県県知事等あてに事業開始届を提出します。
以上、有料老人ホームの開業する流れや手続き関する注意点について、解説をいたしました。
次回は「介護施設の開業に必要な資格とは?」について配信したいと存じます。
ユニケアでは、皆様にとって有益な情報を定期的に発信してまいります。ほんの少しでも皆様お役に立つ内容であればうれしく思います。
今回もお読みいただきまして、ありがとうございます。