こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
まだまだ寒い日は続くものの、少しずつ春の兆しが感じられるようにもなってきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
昨年1月20日に「第9回社会保障審議会 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」が行われ、様々な議論がされました。
2時間の議論でしたが。皆様にとって重要と思われる論点が話し合われておりましたので、是非こちらで取り上げたいと考えた次第です。お付き合いいただけますと幸いです。
〇専門委員会の趣旨
この専門委員会は、介護現場を大いに悩ませている様々な事務負担を、なんとか軽減できないか議論し、改善していくことを趣旨として設置された委員会です。
この委員会が初めて開かれたのは、令和元年8月7日。
介護報酬改定(令和3年度)を2年後に控え、各介護事業所から寄せられた厳しい事務負担を何とかして減らせないものかと、有識者が集まって議論が行われ、今回が9回目となります。
この委員会を皮切りに、令和3年(今年)度の介護報酬改定においても様々な改善がされてきました。
例えば「指定申請の際に法人印の押印を不要にする」「重要事項説明の際に、押印を求めないこととする」「運営規定等の書類は、掲示以外の方法でもよい」等々です。
「大した改善にはなっていない」という意見も出てきそうですが・・・(笑)
介護分野の人員不足がますます深刻化する中で、それを打開するためには事務負担の軽減が不可欠であることに、もはや異論の余地はないでしょう。
ですから、介護現場における事務負担の軽減について、国が専門の委員会を立ち上げて議論し、少しでも改善がなされているということ自体大変ありがたく、評価すべきことであると思います。
〇今回取り上げられたテーマ「実地指導」
今回の専門委員会で取り上げられた内容のうち、特に「実地指導の在り方」について議論が白熱しました。
ここで、介護サービス事業所にとって絶対に避けられない実地指導について、下記にて取り上げます。
実施指導は、指定権者である行政が、各介護サービス事業所に直接出向き、基準に従って運営できているかを確認し指導することです。
私たちが申し上げるまでもなく、皆様ご存知のことと思います。
上記の表の通り、行政が定期的に行う指導には、実地指導のほかに「集団指導」があります。
サービスごとに行われ、大きな会場に管理者を集め、行政サイドから伝達事項等を説明し共有するものです。
しかしコロナ禍により、感染防止の観点から集団指導がなかなか開催できない状況となっています。
江戸川区では、昨年9月に「タワーホール船堀」にて、居宅支援と訪問介護を対象に集団指導が行われましたが、地域によっては集団指導が実施されないところや、オンラインによる指導を行うところもあるようです。
また、上記の表には記されていませんが、定期的に「自己点検票」を全サービス事業所に作成させ、提出を義務付けるところもかなりあります。
そして定期的に、保険者がサービス事業所に出向き、基準に従って適正に運営ができているかを確認するために行われるのが「実地指導」となります。
実地指導は「運営指導」と「報酬請求指導」の2つに大別されます。
進め方は地域差もありますが、東京の場合概ね2週間前に文書で通知されます。
事前に「勤務形態一覧表」「重要事項説明書等のひな型」「運営規程」「特定のご利用者様の計画書や記録等のコピー」等を郵送させます。
事前郵送させることで、担当者は指摘事項の裏付けをするわけですが、主たる目的は指導の効率化です。
事前の確認を経て、実地指導当日は指導官が3名程度お見えになり、書類をくまなくチェックします。
そして、確認して気づいた点について口頭にて指導を受け、概ね1か月後をメドに指導結果を文書で通知します。
口頭では細々と指摘を受けることはあっても、ほとんどの場合この通知をもって終了となります。
しかし、指摘された事項について「改善報告書」の提出を求められることがあります。
その場合は、期日までに提出しなければなりません。
重大な基準違反が発覚した場合は、過誤調整した上で報酬返還指導を受ける場合もあります。
さらに悪質な場合、資格停止や営業停止、最悪の場合は指定取り消し処分といった「行政処分」が下される場合もあります。
実地指導であれば、行政担当者も高圧的ではありません。
むしろ、よい運営をするためのアドバイスをいただける貴重な機会でもあります。個人的には、実地指導は定期的に受けるべきであるとすら思います。
実地指導の結果、悪質な運営が発覚した場合「監査」に切り替わるケースもあります。
監査になると、担当者の対応は一気に豹変します。書類を徹底的に調べられ、ひどい場合は書類をコピーして持ち帰り、役所へ戻ってからもチェックされます。
ここまでくると、報酬返還等はもはや免れません。
先程も申し上げましたが、資格停止や営業停止、最悪の場合は指定取り消し処分が下ります。
行政処分となると、その事実が公表されますし、ここまでくるともう息の根が止められたも同然です。
〇実地指導は事業者だけでなく、実は行政側も「負担」
定期的に行政からの指導を受けることは、確かに必要ですし有意義なことです。
社会保障費の適正化が叫ばれ、虐待等が問題になっている昨今で、悪質な運営をする事業者には行政によるレッドカードが示されなくてはなりません。
行政からの指導が必要なのは、重々理解しているのですが・・・
現場のお仕事をやりくりしながら、年に1~2回実施される集団指導に参加するのは、相当負担です。
これが実地指導になると、もっと負担は増しますし、私たち事業者も実地指導の通知が届くと戦々恐々としてしまいます(笑)。
国は、最低でも6年に1回は、全事業者に対して実地指導を実施するよう自治体に求めています。
6年以内とは「指定有効期間内」という意味です。
しかし、これがほとんど実施されていない事実があるのです。
その理由の一つに、行政側のマンパワー不足が挙げられています。
負担になっているのは事業者だけでなく、行政サイドも同様なのです。
〇実地指導の標準化・効率化への具体策
実地指導が適正に行われないと、事業者の健全な運営に支障を来たすことになりかねません。
とはいえ、実地指導を経験された方は重々ご認識されていると思いますが、実地指導にかかる事務的負担は相当なものです。
今のままでは、この専門委員会の趣旨である「介護分野の事務負担の軽減」から完全逆行してしまいます。
以上から、従来の実地指導の在り方について、議論がなされたということですね。
専門委員会の席で、施設・事業所に対する自治体の実地指導の見直し案が提示されました。
詳しくは、下記「参考URL」をご参照いただければと存じます。
以下、概要をまとめますと・・・
・実際に現場へ行かなくても確認できる内容について、オンライン会議ツールを使った効率化が可能であることをルール上明確にする
・これに伴い、名称を「実地指導」から「個別指導」へ改める。
と。
オンライン会議ツールによる運用が認められるのは、コロナ禍の特例を除けば今回が初めてとのこと。
筆者も、都内の特養でオンラインによる指導が行われたという話を、先日耳にし驚いたのを思い出します。
厚生労働省は、これを恒久化する方針とのことです。
オンライン指導になれば、確かにかなり負担軽減はされそうです。
厚生労働省はこのほか、実地指導の内容を以下の3つとすることを明示する意向を示しました。
(1)介護サービスの実施状況指導
(2)最低基準など運営体制指導
(3)報酬請求指導
この3つのうち、(2)と(3)をオンライン会議ツールで対応することを想定しているようです。
実際の指導は、重箱の隅をつつくようなものではなく、標準的な確認項目による実施とし、所要時間の短縮なども併せて促し、施設・事業所と自治体の双方の負担軽減につなげたいということのようです
本件は審議中であり、決定事項ではありません。
しかし、そう遠くないうちに審議報告され、諮問・答申を経て固まってくるでしょう。
〇私たち今後すべきこと
介護人材不足に歯止めがかからない中、いかにして生産性を上げつつ、必要なサービスをご利用者様に提供しご満足いただけるかが、今後事業者である私たちに課せられた課題であります。
この難題に向け、私たちは今日も努力を重ねていくのは当然なのですが、専門委員会におかれましては議論をもっと深めていただき、皆さんがハッピーになるような方向へと導いていただきたいものです。
今回もお読みいただき、誠にありがとうございました。
当法人では、今後も皆様にとって少しでもお役に立てる情報を発信してまいります。
今後ともお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
【参考URL】