介護事業運営に必要な「人事考課」について

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

新年度に入り、皆様がお勤めの介護事業所でも、新しいスタッフさんの入職も多いことと思います。

貴重な人材を適切に評価するのは、とても大変ですよね。

 

多様性のある社会において、企業が継続的に事業活動を続けるには、従業員一人ひとりが納得できるような人事(給与・昇進)が必要です。

その人事の判断材料になるのが「人事考課」であり、従業員が目標を持ち、モチベーション高く業務に取り組むためにも、公平性、客観性を取り入れた人事考課制度の構築が求められます。

 

今回はこの人事考課をピックアップし、解説いたします。

このコラムが出る頃には、介護職員処遇改善計画書の提出締め切りが過ぎた頃でしょうが、処遇改善加算の算定の細部に関わる重要なトピックになります。

少々長文になってしまい恐縮ですが、介護事業運営に役立つ内容であると自負しておりますので、どうかお付き合いいただけますと幸いです。

 

人事考課とは何か

人事考課とは、スキルや業務実績、勤務態度等、会社が定めた基準に基づき従業員を評価することです。

従業員の貢献度を査定し、昇給や昇進の可否を判断する基準として、人事考課は活用されます。

人事考課において評価された結果によって、従業員の給与や今後のキャリアプランが決まることが多く、大げさに言えば従業員の人生にもかかわります。

人事考課は、組織において大変重要な役割を担っていると言えます。

 

人事考課と似た言葉に「人事評価」がありますが、どこがどう違うのでしょうか?

結論からいうと明確な違いはありません。

 

一般的には「人事考課」は給与や昇進を判断するもの、「人事評価」は育成や能力開発、そして異動などのより広い範囲で判断するものとして使われることが多いです。

もちろんこの2つは密接に関わっていますので、人事評価制度の中に含まれているものが人事考課といえます。

 

人事考課は給与や昇進を判断するものとお伝えしましたが、人事考課を取り入れる目的はこのような査定のためだけではありません。

あくまでも給与や昇進は結果であり、人事考課によって組織の活性化を促し、企業を持続的に成長させるのが大きな狙いです。

 

従業員個人レベルでは、努力の結果昇給や昇進が実現できれば、自身の仕事に対する意欲やモチベーションを向上させることにもつながります。

個人の成長は企業の成長と密接に関係しますので、人事考課は組織にとって重要であるということです。

人事考課を導入することで「企業ミッションへの評価を共有し、期待する行動への理解を促す」「評価の優先度を示し、会社が描く未来の方向性を伝える」「適切な評価に沿った処遇で、従業員のモチベーションを高める」などの効果をもたらすことが期待できます。

 

人事考課のメリット・デメリット

 

それでは、人事考課を行うことのメリット・デメリットについて具体的に見ていきましょう。

 

人事考課のメリット

人事考課を行うことのメリットはたくさんありますが、人事考課を行う上で前提となる点があります。

それは人事考課の評価基準が可視化され、かつ従業員に正しく伝達できていることです。

従業員が会社の人事考課の評価基準等について理解していれば、十分メリットが期待できるでしょう。

 

企業ミッションへの評価を共有し、期待する行動への理解を促す

日々の業務において、時に従業員は「なぜこれをやらなければならないのか?」という疑問を持つこともあるでしょう。

そのような時でも今一度企業の存在意義を示し、企業ミッションへの評価を共有することで、一度俯瞰して「誰に何の価値を提供しているのか」を見つめ直すことができ、目の前の仕事の必要性を認識できます。

また、企業ミッションへの評価基準を明示することで、主体性が芽生え、ミッションの達成に向かって自ら行動に移せます。

 

評価の優先度を示し、会社が描く未来の方向性を伝える

会社がどのような未来に向かっているのか。評価の優先度を示すことで、従業員にメッセージを送ることができます。

企業、部署、職種ごとに、評価の重点は変わります。たとえば全く異なる業界に進出する企業であれば、「技術革新を高く評価する」、新しい分野を広げていきたい企業であれば「提案活動を高く評価する」などです。

従業員は、自分が今後どのようなスキルを身に付ければ評価されるのかが分かるため、自己研鑽の方向性を示すという意味でも効果的です。

適切な評価に沿った処遇で、従業員のモチベーションを高める

処遇に際しては、経営者や上司の感覚によるものではなく、人事考課の基準に適した処遇を行うことが重要です。

適切な評価・フィードバックを行うことで従業員の納得感が生まれ、また努力の方向性も分かるようになり、従業員の士気も高まるとともにモチベーションアップに繋がります。

 

人事考課のデメリット

一方で、人事考課の導入におけるデメリットはあるのでしょうか。以下ご紹介いたします。

評価者に高いスキルが求められ、人事考課の制度設計に手間がかかる

従業員を適切に評価することは決して簡単なことではなく、ましてや完璧な人事考課を行うことは極めて困難であるとさえ言えます。

従業員を評価するためには、非常に高いスキルが求められるのです。

 

また、極力公正中立な人事評価基準を構築するには多くの工数を想定することになります。

都度従業員と対話することにもなりますので、大変な時間と労力を要します。

 

評価により序列が生まれ、一部の従業員から不満が生じる場合がある

上述の通り、どんなに綿密に構築された人事考課制度であっても、すべての従業員を完璧に評価し処遇するのは極めて困難です。

また、従業員の個々の業務態度や成果を評価するため、どうしても評価に差が生じます。

他の従業員よりも低い評価を下された従業員は、場合によってはモチベーションの低下にもつながりかねません。

完璧に行うことは難しいですが、ある程度の「納得感」をどう醸成していくかがカギになるでしょう。

 

画一的な人材開発になりかねず、外部環境の変化に対応しにくくなる

人事考課制度は、基本的に「自社における望ましい人材像」に焦点を当てた育成を想定します。

その裏側には、視野の狭い「型にはまった人材」になる可能性も同時に孕んでいます。

外部環境の急激な変化により、新たな事業展開や方向転換を必要とした場合には、既存の人材では対応しにくくなる可能性もあります。

それを避けるためには、評価基準についてあまり型にはめすぎないようにする工夫も必要でしょう。

 

人事考課の3つの観点

1.情意考課

情意考課は、業務遂行にあたっての意欲や姿勢を評価するものです。

具体的には、規律性・責任性・協調性など組織の中での発言やふるまいが評価要素となります。

社会的な規律を守ることはもちろん、責任感を持って組織の中で良い影響を与えているか評価します。

新入社員をはじめとした比較的社歴の浅い従業員に対しては、この情意効果が有効になり得ます。

 

2.成績考課

成績考課は、会社や上司が要求した職務に対しての結果や成果に対して評価を行います。

例えば営業職であれば、売上目標に対する達成度で評価し得ますし、間接部門であれば業務課題にどう向き合い解決したかで評価し得るでしょう。

基本は従業員一人ひとりに与えられる仕事も、求める結果も異なるので、それぞれ評価基準は別のものになります。逆に、同じ仕事で求める結果も同じであれば、評価基準も同じでなければなりません。不平等・不公平が見えてくると、従業員のモチベーションは低下しかねません。

 

3.能力考課

能力考課は、企業が定めた各等級(資格)における標準的な能力に対して評価するものです。

対象者が置かれている立場において、担当している職務の遂行能力を評価します。

成果が目に見えにくい管理部門の従業員を評価しやすいというメリットもあり、スキルアップへのモチベーションを高めることが期待できます。

 

人事に役立つ評価方法・基準

人事考課のメリット・デメリットについて見てまいりました。

では従業員を適切に評価するための手法には、どのようなものがあるのでしょうか。

これは、介護事業運営にも大変役に立つ内容になっていますので、参考にされてはいかがでしょうか?

 

評価管理制度(MBO)

MBOとは「Management By Objectives」の略称であり、直訳すると「目標(Object)による管理(Management)」です。

元々はアメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーが、1950年代に提唱したマネジメント手法として知られています。

有名な「もしドラ」の中でも活用されていますね。

 

MBOの特徴は「社員が自分で目標を決める」点にあります。

組織の目標を達成するために、自分が貢献できることを目標として設定し、自ら実行していきます。

 

従業員は、自ら設定した目標に対する達成度によって評価されます。

会社や上司の強制や命令ではなく、自分で目標を決めるというのが最大のポイントとなります。

社員の自主性を育み、モチベーションを向上させる仕組みとして有効です。

しっかりと評価者と被評価者の間で目標設定の基準を明確にしておくことが重要です。

 

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、高い業績をあげている従業員に共通する行動特性に着目し、それを基準として、個々の従業員の評価基準を策定する手法です。

コンピテンシーとは、高業績者の行動特性のことであり、「なぜその従業員は仕事ができるのか」の理由にあたる部分に着目するものです。

その人が高い業績を上げているのかについては、能力面だけでは図れるものではありません。

能力以外の部分にも注目し、その人がどう行動したかについての特性を分析し、他の従業員の評価基準として設けることが「コンピテンシー評価」の基本的な考え方となります。

 

企業は、自社のコンピテンシーを理解しておくことで、評価だけでなく人材の育成にも活用でき、組織全体のレベル向上を図ることが期待できます。

 

介護事業所においても、もしかしたら皆さんのお手本になるような方がいらっしゃるのではないでしょうか?

そういう方の行動特性はどうなのか、どういう性質の方なのかを分析することは有効です。

その方を特別扱いするということではなく、人事評価をする上で参考になり得る、という意味です。

 

360度評価

360度評価(多面評価)とは、上司だけではなく同僚、部下、取引先等、複数名から従業員の日々の職務行動について客観評価する手法です。

複数名が評価することで、評価する上での様々なバイアスを取り除くことが期待できます。

多方向から査定された評価を平均化することで評価のばらつきを抑え、より客観的な結果を得ることができます。私情を挟み客観性に欠ける情実的な人事を抑制することもできます。

360度評価は、対象となる本人にとって評価に対する納得感を高めることも期待できるでしょう。

 

人事評価の運用方法

では、人事考課を上手に運用するには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

ここでは、人事考課の効果的な運用方法について説明します。

 

人事考課の導入目的をしっかり周知する

自社において人事考課を導入する目的について、社内にしっかりと周知させることは不可欠です。

人事考課の目的が不明確で、十分理解されないまま進めてしまうと、評価担当者と評価される社員双方の不満が増幅されてしまいかねません。

社員全員に導入目的を浸透させることによって、人事考課に対する意識が植えつけられ、効果的に運用できることができるでしょう。

 

評価基準を明確にする

人事考課を失敗させないためには、対象となる従業員が納得できる評価基準となっていることも重要です。

人事評価を行う前に、企業として期待する人材像を明確にしておく必要があります。そして、その人材像を基にして策定した評価基準は、従業員全員が理解できる内容であることも大切です。

人事考課に対する理解は、従業員だけに求められるものではなく、評価者にも必要です。評価担当者は、明確化された評価基準のほか、制度の運用ルールや評価方法についても理解を深めておかなければなりません。

従業員を評価することは簡単ではありません。公正な評価を行うため、評価担当者を対象にトレーニングを行うことも重要でしょう。

 

評価結果をフィードバックする

人事考課を効果的に運用する上で、評価結果をフィードバックする仕組みを構築しておくことも必要です。

評価担当者の評価結果をフィードバックして、社員の自己評価をすり合わせすることによって、従業員が納得しやすくなるからです。評価結果が従業員にフィードバックされず不明確なものであれば、不満が増長していくだけです。

 

人事評価の結果は、社員の処遇や、社内での配置・異動にも反映されるだけでなく、企業が求める社員像を社内に示すことにもなります。

企業が求める社員像が明確になれば、従業員のスキルアップへのモチベーションを刺激され、より努力を重ねられます。結果として、社員の人材育成にもつながるのです。

 

まとめ

企業にとって、従業員は「人財」であり「貴重な宝」です。

会社に所属する従業員を適切に評価することで、従業員は業務に対するモチベーションを高め、人材育成にもつながり、ひいては企業の健全な発展に寄与することが期待できます。

本コラムがその一助となれば幸いです。

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。