ユニケア速報!「社会保障審議会介護保険部会」の概要②

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

師走が近づき、急に寒くなってまいりましたね。

私たち訪問看護師やセラピストも、防寒を万全にして毎日元気にご利用者様宅へ訪問しております。

ご利用者様はもちろんのこと、私たちサービス提供者が元気でないとこの業界は成り立ちません。

適切に暖房を使いつつ、食事や水分補給もこまめに行い、元気で明るく頑張っていこうと事業所内でも合言葉にしております!!

 

さて前回は、今秋から積極議論が展開されている社会保障審議会介護保険部会において、特筆すべきテーマとして「複合型サービス」を一つの例としてご紹介いたしました。

 

今回はその第二弾として、11月28日の部会で議論されたテーマ「給付と負担」の中で「被保険者範囲・受給権者範囲」について取り上げさせていただきたいと思います。これは、介護保険の被保険者範囲だけでなく、介護保険料の負担年齢にも関わる重要事項でもありますので、是非お読みいただけますと幸いです。

 

介護保険被保険者の範囲とは

そもそも介護保険制度は、どのような目的で運用されているのでしょうか。

介護保険制度は、「老化」に伴う様々な介護ニーズに適切に応えることを目的として制定されたものです。

人間は生きている限り、年を重ねれば程度の差こそあれ必ず「誰かのお世話」を受けることとなります。

生きていれば病気になることもあるでしょう。人間生活を支える上で「医療保険」が存在するように、介護も全国民で支える必要があるという考えから「公的保険」として位置付けているわけです。

 

介護保険の被保険者の位置づけについてですが、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上64歳以下の第2号被保険者から構成されております。第1号被保険者については、65歳以上になったすべての国民に対して定義づけております。ちなみに第2号被保険者については、40歳以上64歳までの方で、厚生労働大臣が定める「特定疾病」に該当する場合をいいます。

 

介護業界に身を置く人なら当たり前の話かもしれませんが、これは非常に重要な意味があります。

具体的には、第1号被保険者であれば理由のいかんにかかわらず、要介護状態であると認められれば介護サービスを受けられるということを意味するわけです。

これは簡単なことではありません。この仕組みを設計している日本の介護保険制度は、制度上足りない部分もあるものの、非常に秀逸していると言っても過言ではないのです。

 

 介護サービスにおける「権利」と「義務」

先程、介護サービスを受ける権利についてお伝えしましたが、同時に義務もあります。

それは介護保険料の負担です。

ご承知の通り、介護保険料については40歳以上のすべての国民に負担義務があります。

介護に限った話ではありませんが、介護サービスには給付を受ける「権利」と負担をする「義務」があるわけです。給付と負担はまさに連動しているということですね。

 

ところが今回の介護保険部会において、第2号被保険者の対象年齢引き下げと、第1号被保険者の対象年齢引き上げが議論されるようになりました。介護保険制度施行から20年以上経過しましたが、今回議論の俎上にのせられたわけです。

 

行政サービスは税金と公費で成り立っています。

その際に必ず問題になるのが「給付」と「負担」のバランスと、権利義務の関係性です。

権利の裏側に「義務」があります。まさに権利と義務は表裏一体の関係性があるということです。

それはその通りなのですが、乱暴的な推進がなされてはいけません。

 

 

介護保険部会において寄せられている意見

本件に対して、介護保険部会では出席委員から様々な意見が出ており、賛否両論あります。

以下、部会が公開する資料を用い、原文ママでご紹介します。

 

(賛成論)

・ 将来的には、被保険者範囲を40歳未満の方にも拡大し介護の普遍化を図っていくべき。

・ 60歳代後半の方の就業率や要介護認定率も勘案し第1号被保険者の年齢を引き上げる議論も必要。

(反対論)

・ 被保険者範囲・受給者範囲については、介護保険制度創設時の考え方は現時点においても合理性があり、基本的には現行の仕組みを維持すべきである。

・ 第2号被保険者の対象年齢を引き下げることについて、若年層は子育て等に係る負担があること、受益と負担の関係性が希薄であることから反対である。

 

等となっております。賛否両論あるのは当然であり、どの意見もごもっともであると思います。

 

筆者が考える本論の趣旨とは・・・

これはあくまで筆者が個人的に考える意見なのですが、第1号被保険者の対象年齢引き上げと、第2号被保険者の対象年齢引き下げという話は、介護保険料負担の対象年齢の引き下げと密接な関係にあると思います。

介護保険料の負担は40歳以上の全国民に課せられた義務であるわけですが、この対象年齢を引き下げようという動きは前々からあります。社会保障財政が逼迫していると言われて久しい中、既存ルールでは制度の維持が難しいという意見が出るのは仕方がないことと思います。

 

しかし、第1号・2号被保険者の対象年齢を変更することと、介護保険料負担の対象年齢の変更は「セット」と考えるのが自然だと思います。

そうなりますと、根はもっと深くなります。もっと議論を深める必要があるのではないでしょうか。

 

実際に、出席委員からは、

 

・ 第1号被保険者の年齢を引き上げることについては他の制度との整合性を踏まえて慎重に検討することが必要。

 ・ 被保険者範囲・受給者範囲の拡大の議論の前に給付や利用者負担の在り方について適切に見直すことが先決。

・ 65歳以上の就業者の増加や40歳以上の生産年齢人口の減少を踏まえ、中長期的な見通しを踏まえて方向性を決めていくことが必要。

 

といった意見もあります(原文ママ)。

第1号被保険者の対象年齢が引きあがると、本当に必要な方が適切な介護サービスを受けられなくなる可能性があります。年金制度も同様ですが、いくら介護保険料の負担が国民の義務とはいえ、負担に相応のサービスが受けられなくなるとしたら、それは平等性に欠けると言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

他の制度の見直しも含めて考えるべきでは?という意見もありますが、その通りだと思います。

日本の福祉制度には「障がいサービス」もあります。

似たような制度が存在するために複雑化し、縦割り行政による弊害もありますが、そこを整理する検討も必要です。

 

日本の福祉制度には年齢による線引きがあります。

一般的に児童福祉サービスは18歳までと言われており、以降は障がいサービスに移行します。そして基本的に65歳になると「介護保険」に移行する仕組みになっています。障がいサービス事業所が長年にわたりご利用者様にサービスを提供し、誰よりもそのご利用者様のことをよく知っていても、一定の年齢が到達するとバトンタッチせざるを得ない状況はやはり問題でしょう。

 

この縦割り的な仕組みを何とかしようという取り組みの一つに「共生型サービス」があります。

介護事業所も障がいサービスが提供でき、また障がいサービス事業所にも介護サービスを提供できるサービスのことです。

まだまだ浸透しているとは言い難いですが、こういうサービスがもっと広がることにより、第1号・2号被保険者の対象年齢を変更しなくてもうまく運用できるのではないか、と筆者は考えています。

 

拙速な決定は、非常に危険です。

時間制約がある中大変なのは重々承知しておりますが、介護保険部会で話し合われていることは未来の福祉において重要事項であり、福祉の未来を方向付けると言っても過言ではありません。

本件に限らず問題は山積ですが、十分議論をしていただきたいものです。

 

まとめ

今回は「給付と負担」の中で、介護保険の被保険者の定義や問題点について掘り下げてまいりました。

被保険者の範囲については、私たち業界関係者であれば当たり前のように運用しているわけですが、介護保険制度の仕組みやその趣旨から考えると非常に奥が深いことがお分かりいただけるかと思います。

私たちは日々サービス提供に奔走しておりますが、どこか一息ついたところでこのようなことにも目を向け、考えていく必要はあると考えます。

 

ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、今後も皆様にとって有益な情報を定期的にご提供したいと考えております。

そして、地域の皆様と連携して、よいサービスが提供できますよう努力を重ねてまいります。

当法人の活動にご興味がある方、お気軽にご連絡くださいませ。

 

今回もお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

次回の投稿もお楽しみに!!

 

【参考URL】

社会保障審議会介護保険部会HP

介護保険制度について(厚生労働省)