スタッフの帰属意識~訪問看護においてどう醸成していくか~

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

新型コロナウイルスの感染がまた拡大の様相を呈しております。

コロナ前の生活にはいつ戻れるのか、ヤキモキされている方も多いかと思います。

 

コロナ禍により私たちの生活は一変し、ニュー・ノーマルの時代と言われるようになりました。

実際、テレワークが浸透し、自宅等で仕事をする人が増えてきました。

またDXが進み、非接触サービスも増えてきています。

自宅で仕事が出来、オンライン会議等を駆使することで、業務の効率化が大いに期待できるのは事実です。

 

反面、経営者は「どうスタッフを管理すべきか」「出社しなくなると、愛社精神も薄くなるのではないか」「よい人材が離職し、組織が脆弱になってしまわないか」等、不安が募ります。

 

不確実性の時代と言われる中、スタッフの管理や定着は必須であり、帰属意識が密接に関わってきます。

 

訪問看護をはじめとする介護や医療サービスにおいては、お仕事の性質上完全テレワークにすることは難しいため、スタッフ間で顔を突き合わせることが多いのが実情です。

それでも、チームワークがモノをいうこの仕事においては、スタッフの中で「帰属意識」が働かないとなかなかうまくいきません。

 

今回は「帰属意識」について取り上げ、訪問看護ステーションとして、ひいては介護事業所としてどうあるべきかについてお伝えしたいと思います。

 

帰属意識とは

帰属意識とはどういう意味なのでしょうか?

 

尾高邦雄著「産業社会学講義―日本的経営の革新」では、帰属意識の定義として「ある特定の集団に対して一体感をもつかどうか、また、その一体感の程度がどれほどかを表す心理的な状態をさす」と記されています。

 

帰属意識は、会社だけに留まりません。

国や地域、社会や家庭においても帰属意識は存在し、自らが属する集団の中で位置づけられる自覚のことを指すといえます。

実際に私たちが使用している「帰属意識」とは、「自分が属する集団への愛着」と読み替えることができるでしょう。

 

では、集団への愛着はどういう状態なのでしょうか?

「この企業にいると自分の力が発揮できる」「とても風通しがよく、周囲の人たちも優しくて仕事がしやすい」「自分はこの企業に貢献したい」「長くこの企業で働きたい」という状態が考えられます。

 

帰属意識が高いことのメリット

では、スタッフが組織への帰属意識を高めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは一例として4つのメリットを紹介します。

 

経営理念、経営方針への理解が深まる

スタッフが強い帰属意識を持つと、会社への関心が強まり、深く知ろうという意識がはたらきます。

 

会社がどんなことを考え、行動し、どこを目指していくのかを示したものが「経営理念」「経営方針」ですが、スタッフはそれをより深く意識し、理解するようにシフトしていくでしょう。

 

・コミュニケーションが醸成され、組織に活気が生まれる
スタッフの会社への帰属意識が高いと、様々なコミュニケーションが交わされるようになります。

 

帰属意識の高い集団は、お互いが仲間であることを強く意識し合い、尊重し、そしてチームとして高い成果を上げるために努力していくように進んでいくものです。

 

現代ではICT(情報通信技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいますが、成果を上げるには、ツールを問わずスタッフ間で活発にコミュニケーションが行われることが不可欠です。

 

・組織の「改善」に向けて前向きな議論に発展しやすい環境となる
自分が所属する組織に愛着を持つと、「自分が好きなこの会社をよくしたい」という気持ちから、自然とよりよい環境を求め、創ろうとしていくでしょう。

 

自分の置かれた環境を他人事と捉えずに積極的に意見を出し合い、改善に向けた議論が活発化していきます。

 

・スタッフの成長を促進させる原動力となる

帰属意識を持つことにより「会社にもっと貢献したい」と思えるようになることもメリットの一つです。

「もっとこの会社で活躍したい」という気持ちが醸成されれば、自発的にスキルアップに取り組めるでしょう。

 

また、どんなに活発で風通しのよい会社であっても、仕事は楽しいことばかりではありません。

時には上司から叱られることもあるでしょうし、嫌なことも起こります。

 

しかし帰属意識の高いスタッフは、たとえ叱られることがあったとしても、それは自分自身の成長につながるはずだと前向きに捉えるため、周囲の人の声を素直に受け止めやすいでしょう。

結果としてスキルが上がることで、帰属意識がスタッフ自身の成長を促進させる原動力となると考えられます。

 

帰属意識が低いことのデメリット

次に、帰属意識が低いことのデメリットをご紹介いたします。

 

・スタッフのモチベーションが低下する

帰属意識が低下している状態、つまり会社への愛着が低い状態を想像してみると、「自分はこんなつまらない会社で働いても楽しくない」「頑張っても評価されない会社にいても意味がない」などが例として挙げられるでしょう。

 

スタッフはこのような状態で、果たして会社での業務遂行への意識が高まると言えるでしょうか?

モチベーションが保てず、会社で働く意義を失ってしまいがちになることは容易に推測できるはずです。

 

・コミュニケーションの質が低下する
帰属意識が低くなると、一緒に働く仲間への関心も低下しがちです。

情報を共有するという意欲が薄れ、最低限のコミュニケーションで済ませようとするかもしれません。

「何となく仕事をして、定時で帰れればそれでよい」と考えるスタッフは、一緒に企業や組織を盛り上げようという姿勢が見られず、改善意欲も薄れてしまうでしょう。

 

活発なコミュニケーションが展開されない組織は、どことなく陰気でどんよりとしたものになってしまいます。

 

また帰属意識の薄いスタッフが増えると、経営方針や企業理念といった重要な情報が浸透しにくくなります。

組織が同じ方向で業務を進めていくことも困難になってしまい、業績の低迷にもつながりかねず、ひいては大きな経営リスクとなりかねません。

 

・離職率が高くなる
スタッフの帰属意識が低いことによる最大のデメリットは「離職者の増加」ではないでしょうか。

 

会社の一員であることに価値が見いだせなくなると、より好条件の職場へと転職しようとする可能性があります。人材の流出は、企業にとって大きな痛手です。

特に優秀なスタッフであるほどダメージは大きくなります。

 

帰属意識が低くなりがちな要因

では、帰属意識が低い、高まらない要因があるとしたらそれは何なのでしょうか。

以下、その要因として考えられる点を2つご紹介しましょう。

 

・不確実性の時代の雇用不安

少子高齢化やコロナ禍による経済不安、諸外国の情勢や円安など、現代は日本だけでなく世界中で「不確実性の時代」といわれています。

そんな中で「自分は定年まで今の企業で働き続けられるのか」と不安に思うスタッフも少なくないのではないでしょうか。

 

介護業界は慢性的な人材不足と言われておりますので、そこまで深刻ではないかもしれませんが、長期的に考えた場合には楽観視できません。

何故なら、日本は人口減少時代に突入して久しく、今はよくても10年後、20年後も安泰かとはとても言い難いからです。

 

今は介護人材や事業所が不足しても、20年後には供給過剰になる可能性が高く、よいサービスを提供し続けないと存続の危機に瀕しかねません。。

 

一昔前までは当たり前とされた「終身雇用制」も崩れつつあり、将来の雇用不安を抱いている状況では、帰属意識を保つことは難しくなるでしょう。

 

・リモート・オンラインの弊害

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの会社がオンライン会議やテレワークを推進しています。

これはある意味革命的であり、日本企業の働き方のパラダイムシフトであると考えられるでしょう。

 

しかし「効率化」「生産性」を優先しすぎると、同時に弊害も生まれます。

 

例えばコロナ禍において採用された新卒スタッフは入社直後からテレワーク状態となり、仕事で行き詰っても気軽に相談できる人が近くにいなくて悶々とするケースもあると聞きます。

また既存のスタッフも、以前よりもコミュニケーションが減っている状況があるのではないでしょうか。

 

テレワークやオンラインのウエイトが偏り過ぎると、スタッフの帰属意識を阻害しかねません。

直接顔を突き合わせてコミュニケーションを取ることの重要性が、ここへきて見直されてきています。

 

帰属意識を高める具体的な方法

帰属意識を高めるために、会社も様々な取り組みを実施していることでしょう。

「こうすれば必ず高まる」という特効薬的なものはありませんが、ここでは筆者の経験をもとに具体的な方法についてご紹介したいと思います。

 

「社内運動会」というのをお聞きになったことはありますか?

昭和の時代ではあちこちで行われていたようですが、時代の移り変わりや働き方に関する意識の変化とともにその数は減少し、コロナ禍も相まって自粛する動きがございます。

 

ところが、衰退したと思われた社内運動会が、今少しずつ見直されてきているようなのです。

 

ただ、社内運動会を開催するのは簡単ではありませんよね。

時間の確保や費用の問題もあります。

日常業務を行いながらこのような準備を行うことは現実的に困難である、という会社も当然もあるでしょう。

実際に、介護事業を行う会社では実施困難と言わざるを得ません。

 

ではなぜ、敢えて社内運動会をご紹介したのか?

それは、社内運動会の最大の目的の一つが「チームビルディング」であり、この考え方は介護事業運営に役に立つと考えたからであります。

 

会社の構成員であるスタッフが一丸となっていろいろな競技に参加し、楽しく取り組むことによって一体感が生まれます。

この「チームビルディング」こそが、スタッフの帰属意識を呼び起こす一つのきっかけになりうるのではないかと思われます。

 

 

帰属意識の醸成方法は、工夫次第でたくさんアイデアが出てくるでしょう。

社内運動会以外にも、チームビルディングを目指す取り組みとして、例えば下記のようなものも考えられます。

 

・月1回、全員で一斉清掃をする。経営者や非正規職員も関係なく全員で行う

 

・社内報を定期的に作成し、経営者の考えや方針を表明するだけでなく、部署間を超えたコミュニケーションを実現させる

 

・育児や家族の介護等、他人に相談しにくい相談にも対応できる体制を確立し、仕事と家庭の両立を図るための取り組みを企業として行っていく  等々

 

会社の事情を勘案し、無理なく、できることから着手する。

取り組めるものを積極的に検討・採用することが帰属意識の向上につながっていくのではないでしょうか。

 

帰属意識を高めるために会社として何ができるか?

では、帰属意識を高めるために会社がすべきこと、できることは一体何なのでしょうか。

 

スタッフの待遇をよくすることや、福利厚生を充実させることも有効かもしれません。

しかしそれには限界があり、現実的な方策とはいい難い部分があります。

 

ここでは比較的簡単にできる手段を筆者からご提案します。

 

・スタッフが経営者や人事に積極的に発信しやすい環境を整える

ここでは「気軽に発信できる」というのが非常に重要です。

 

どんなに経営者や上司が「無礼講だ」「どんどん相談してこい」といっても、それだけではスタッフは身構えてしまいます。

 

スタッフが企業に対してどう考えているのかを経営陣に気軽に発信できる環境が整っていれば、企業の問題点が可視化しやすくなります。

そしてスタッフの意見が何らかの形で反映されれば、会社への帰属意識が高まることが期待できます。

 

・経営者が自社の強みや魅力を従業員に向けて積極的に伝える

経営者からの強いメッセージは、コミュニケーションが希薄になっているスタッフにとって安心できる材料になりえます。

社内SNSやWebによる社内報、オンラインイベントなどを行い、遠隔でもスタッフを孤立させないための取り組みをする企業も増えています。

 

もちろんそれだけで不安が完全払拭できるわけではありません。

しかし、コロナ禍でも自社でできることは何かを考え、トップが実践してみせることにより、スタッフの心を少なからず動かすはずです。

 

訪問看護ステーションとして

ユニケア訪問看護リハビリステーション船堀
冒頭にも申しました通り、介護事業はチームプレイが非常に重要です。

訪問看護ステーションにおいても、患者様の命に向き合う仕事をしておりますので、想いが共有できていないと難しいですし、そのためにはスタッフ1人1人が会社に対して帰属意識がないといけません。

 

当法人では、訪問看護サービスに日々忙しく奔走しておりますが、スタッフのチームワーク醸成には余念がありません。

定期的な研修やイベント実施だけでなく、地域や他事業所との交流等、できることは精一杯行っているつもりです。

上記の写真をご覧いただければ、スタッフ同士とても仲が良いことがおわかりいただけるかと思います!!

 

小さな努力を積み重ねることにより、スタッフに「独りじゃない」「困ったことがあれば何でも相談できる」「この法人にいれば成長できる」という環境を整えていきたいと思います。

 

今回は、会社においてスタッフの帰属意識を高めることがいかに重要であるかについてご紹介いたしました。

 

帰属意識の醸成は、スタッフ任せにすべきではないと思います。

会社側、特に経営者が自ら帰属意識の必要性を十分に理解し、日頃からスタッフ目線で寄り添う姿勢が大切なのではないでしょうか。

 

そのために、会社として何ができるか、本記事が多少なりともヒントになれば幸いです。

 

【参考URL】

リクルートマネジメントソリューションズHP