いよいよ始まる!介護職員等ベースアップ等支援加算

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

秋分の日も終わり、ずいぶん日も短くなってまいりました。

最近、暗くなるのがすっかり早くなり、何となく切なさを感じてしまう今日この頃でございます(笑)

 

世間ではハロウィーンモードにシフトしてきていますね。

10月に入ると、介護施設やデイサービス等でもハロウィーンイベントを行うというところも多いのではないでしょうか?

 

私たち訪問看護師やセラピストも、訪問の際にプチ仮装してみようかな!

 

話変わって、いよいよ10月から「介護職員等ベースアップ等支援加算(以下『ベースアップ加算』といいます)」の算定が始まります。

当法人のコラムでも以前取り上げさせていただきましたが(詳しくは過去記事をご参照くださいませ)、新加算導入の背景や留意点等についてもう一度おさらいしたいと思います。

 

是非お付き合いいただけますと幸いです。

 

「介護職員等ベースアップ等支援加算」とは?

ベースアップ加算とは、令和4年2月から開始した介護職員処遇改善支援補助金と同様の要件を満たすことで、同年10月以降も継続して取得できる加算であり、『処遇改善加算』『特定処遇改善加算』に続く第三の処遇加算です。

 

処遇改善加算・特定処遇改善加算に加え、このベースアップ加算を算定することにより、事業所は介護職員をメインとして「3階建ての処遇改善策」を講じることが可能になるというわけです。

 

そもそも処遇改善加算は、介護業界の平均賃金を全産業平均に近づけることを目的に創設されています。

令和4年10月以降について臨時の報酬改定が行われ、全体で収入を3%程度(月額平均9,000円相当)引き上げることが決定しました。

これは、その前に実施された「介護職員処遇改善支援補助金」の後継策として施行されたものになります。

 

補助金を受給できるのは確かにありがたいですが、性質上一時的な対策に過ぎず、介護職員の処遇を根本から解決する術にはなりにくいということから、恒久的な対策としてこの加算が創設されたわけですね。

 

処遇内容について

厚生労働省の試算では、事業所あたり常勤換算で概ね9,000円/月の処遇改善が見込まれる、という内容になっています。

ただし、一律に全員が月9,000円の改善がなされるわけではありません。実際の配分については各法人の裁量により決定されます。

 

なぜ、配分が法人(事業所)の任意となっているのでしょうか。

それは、介護職員等の賃金水準を全産業平均にまで引き上げることを目指す以外に、もう一つ理由があるからです。

具体的には、介護業界で働く方々に「キャリアパス」を示すためです。

一定の経験や知識を習得することによって、職員さんが目標とするポストや職務に就くことができ、ひいては長く法人で活躍する道筋を作るためなのです。

 

処遇改善に関する加算は、主として上記2点を実現するための貴重な財源になり得ます。

各サービスの加算率については、上記のスライドをご覧くださいませ。

 

取得要件

当該加算の取得要件を簡単にまとめますと、

 

①介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得していること
②賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の2/3は介護職員等のベースアップ等(※)に使用すること

※ 「基本給」又は「決まって毎月支払われる手当」の引上げ

 

となります。

 

これは、基本的に介護職員処遇改善支援補助金を踏襲する形になっております。

補助金申請をされた事業所については、就業規則や賃金規程を適宜改定されていることと思いますが、今回のベースアップ加算を初めて取得される事業所におかれましては、必要に応じて同様に改定することになります。

 

処遇改善の対象となる方

 

ベースアップ加算の対象になる方は「介護職員及び他の職員」となります。

※加算額の2/3は介護職員等に配布したうえで他の職員へ分配することが可能です。

詳細につきましては「参考URL」に厚生労働省発出の資料リンクをご確認くださいませ。

 

申請方法

各事業所において、都道府県等に介護職員・その他職員の月額の賃金改善額を記載した計画書(※)を提出します。

計画書等には、月額の賃金改善額の総額(対象とする職員全体の額)の記載を求めておりますが、職員個々人の賃金改善額の記載までは求めないこととなっております。

 

なお、10月からベースアップ加算を算定する場合には、8月末までに計画書を提出しなければならず、もうすでに締め切られております。

もちろん、以降も新規で算定することは可能ですが、その際は算定する月の前々月末までに計画書等を提出しなければなりませんので、注意が必要です。

例えば、11月から加算を算定しようとした場合には、9月末までに都道府県等に提出しなければならない、ということです。

 

報告方法

各事業所において、都道府県等に賃金改善期間経過後、計画の実績報告書(※)を提出します。
こちらについても、月額の賃金改善額の総額(対象とする職員全体の額)の記載を求めておりますが、職員個々人の賃金改善額の記載は求めないことになっております。

令和4年6月に厚生労働省より申請書式の例が出され、事務処理の手順も示されています。

これからベースアップ加算を算定しようとお考えの事業所様は、地域の介護保険課ホームページ等をご確認くださいませ。

 

補助金と加算の違いと問題点

基本的な部分は補助金とベースアップ加算は似ておりますが、違いもあります。

 

  • 「補助金」は全額公費で賄われるため、ご利用者様負担が発生しないが、ベースアップ加算の場合はご利用者様負担が発生する
  • 算定率が変わるサービス事業がある(例えば訪問介護は補助金1%→加算2.4%
  • 介護職員処遇改善補助金を取得していた場合は引き続き要件を満たした運用を行わなければいけない

令和4年2月~9月まで支給される介護職員処遇改善支援補助金には、受給要件として『同年10月以降も継続して取り組みを実施すること』が定められています。

このため、介護職員処遇改善支援補助金を受給されている事業所がベースアップ加算を新たに取得する場合には、10月以降も継続して要件を満たす必要があり、これが出来なければ補助金の返還を求められる可能性がありますので、注意が必要になります。

 

また、この加算に関しては問題点もあります。

 

それは、介護職員の配置が義務づけられているサービス事業所しか、この加算の恩恵を受けられないということです。

訪問看護ステーションや訪問リハビリステーション、福祉用具貸与事業所や居宅介護支援事業所には、残念ながら今回の加算の対象にはなりません。

わがユニケア訪問看護リハビリステーションも、今回の加算を算定することができず、とても残念ではあります(泣)。

 

介護保険制度開設から、介護職員の処遇改善に焦点が当てられています。

これは非常に重要であり喫緊の課題でもあり、今もなお解決できておりません。

ですので、今後も懸案事項として、更なる拡充をしていく必要があるのは当然です。

しかし、看護師さんや居宅ケアマネさん、福祉用具専門相談員さん等の処遇改善にも、少しは目を向けていただきたいものです。

 

算定スケジュール(10月から算定の場合)

以下、算定からの流れについてもおさらいしてみましょう。

 

〇令和4年8月末まで・・・ベースアップ加算計画書の提出、ご利用者様へ重要事項変更同意書締結開始、ケアマネさんへ算定する旨の連絡等

〇令和4年10月・・・改善期間開始

〇令和4年12月・・・支払い開始(他の処遇改善加算と同様、国保連に請求する)

〇令和4年2月頃・・・次年度(令和5年度)の3処遇改善加算の計画書を提出(詳細は行政に必ずご確認くださいませ)

〇令和5年7月頃・・・処遇改善加算、特定処遇改善加算と同様に改善期間後に実績を提出

 

という具合です。

次年度以降は、他の処遇改善加算と一体的に申請・届出・報告が必要になります。

 

注意事項

算定にあたって注意すべき点は、これまでにも触れてはおりますが、もう一度列記いたします。

 

①重要事項説明書の再締結・同意書等を使用した説明及び同意

②就業規則の変更及び届出(賃金規定変更を行う場合)

③体制一覧表(加算届)の提出

 

です。

 

ベースアップ加算は、ご利用者様の負担が発生するため、重要事項説明書の再締結や同意書の締結等、改めて変更のご説明を行う必要があります。

また、基本給や毎月決まった手当を変更する必要があるため、就業規則の変更を伴う法人が多く存在することにも注意が必要です。

 

そもそも、料金変更を伴う介護報酬改定時は、ご利用者様への説明が必須になります。

また、新たに加算等を取得される場合は、ケアプランに盛り込む観点からケアマネさんへの説明が必要になることは言うまでもありません。

 

今後に向けて

過去記事でもお伝えしておりますが、今後介護事業を中長期的に運営されたいとお考えであるなら、ベースアップ加算の算定に踏み切るべきであると思われます。

 

筆者がよく知る某訪問介護事業所では、介護職員処遇改善加算Ⅰ・特定処遇改善加算Ⅰを取得され、ご利用者様を順調に増やしていき、結果として昨年度年収440万円を超えた職員さんが3名もいらっしゃったそうです。

その事業所のスタッフ数は10名とのこと。10名中3名が全産業の平均賃金を上回ったというのは、すごいことであると思います。

これにベースアップ加算が加わることで、理論上訪問介護においては基本報酬の25%程度をスタッフの処遇改善に活用することができるわけです。

実際、この事業所は同業に比べても十分な賃金をスタッフさんに支払っているため、スタッフの確保にそれほど困ってはいないそうです。

 

求職者は、ご自身の就職先を選定するにあたり、事業所がどのランクの処遇改善加算を算定しているのかについてチェックをしています。

より上位の加算を算定している事業所に属すれば、理論上は自身の給与が高まるわけですから、当然の心理であると思います。

 

2024年度には介護報酬改定が控えておりますが、基本報酬のアップはもはや期待できないでしょう。

ですから、活用しうる策をフル活用してでも、スタッフさんを確保し処遇を上げていき、事業を存続していかなくてはなりません。

 

特に処遇改善加算については、ご利用者様に対してご負担をお願いする形になりますので、同意なしには進まないことではあります。

それでも、ご利用者様には丁寧に説明をしてご理解をいただき、同意をいただいた暁にはよりよいサービスが提供できるよう、更なる努力を重ねていくことが不可欠です。

 

「介護職員等の処遇を改善することはあたりまえだ」と言われれば、そうとも言えるかもしれません。

しかし、事業者やスタッフさんは、ご利用者様に対して謙虚であらねばならないと思います。

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

今後とも、ユニケア訪問看護リハビリステーションに対しましてお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。

当法人の活動にご興味のある方、お気軽にご連絡くださいませ!!

 

【参考URL】

令和4年度介護報酬改定について(厚生労働省)