「介護支援専門員実務研修受講試験」の実態と今後の課題

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

先日のコラムで、在宅生活の限界点を高めるために何ができるか等について、書かせていただきました。

その中で、当法人で今後居宅介護支援事業所の開設を考えている旨も、このコラムでお伝えしました。

 

今回は、介護支援専門員実務研修受講試験(以下「ケアマネ試験」といいます)の状況について、取り上げさせていただきます。

お付き合いいただけますと幸いです。

〇ケアマネ試験の変遷

ケアマネ試験は、平成10年からスタートしました。

介護保険制度の施行が平成12年でしたので、その2年前ということになりますね。

制度の施行を2年後に控え、日本の要介護・要支援者の方々を支えるキーマンとして、ケアマネさんの養成に国を上げて真剣に取り組み始めたわけです。

 

以下、東京都福祉保健局のホームページにて公表されているデータです。東京都内(全国)における過去のケアマネ試験の受験者数・合格者数・合格率が示されております。

東京都の試験実施状況(東京都福祉保健局)

 

受験者数は平成10年度の20万7000人をピークに減少が続き、平成30年度に5万人を割り込んでおります。合格者数もピーク時は約9万1000人でしたが、平成30年度、令和元年度と2年連続で1万人を切っております。

 

合格率についてですが、試験制度がスタートして数年は、東京都内・全国とも合格率が30%~40%と高水準を維持していたことがわかります。

 

しかし、全国における合格率は、平成17年度の第8回試験では3割を下回り、平成23年の第14回試験には2割を下回ることとなり、難易度が各段に上がっていることが窺えます。平成30年度の第21回試験が10.1%と史上最低の合格率となりました。

 

ケアマネ試験は、介護分野において「難関試験」に位置付けられるようになったということです。

 

ちなみに、令和元年の第22回試験は、その年の10月に発生した超大型台風により、一部地域で試験が実施できなかったために、翌年3月に再試験が行われました。

令和2年度の23回試験、令和3年の24回試験については、コロナ禍不安の中でも予定通り実施されました。

直近令和3年度の第24回試験では、全国の受験者数が54,290名、合格者数は12,662名、合格率は23.3%と、少し盛り返しています。

 

 

〇受験者や合格率(者)の激減の理由

ではなぜ、ケアマネ試験の受験者数や合格率等が、ここまで変化したのでしょうか?

理由はいろいろ指摘されておりますが、大きな要因の一つに「受験資格の大幅改定」が挙げられます。

 

過去、試験においては「保有資格取得者に対する試験免除」が存在しました。

例えば、医療系の資格を保有している方は、その分野の試験を免除されていました。

 

ところが、その制度に関して疑義が唱えられるようになったのです。

ケアマネは、保健、医療、福祉について幅広い知識と技術が必要と言われています。

試験においては、関連資格の有無にかかわらず、全員が同じ試験を受けされるべきではないか、と。

 

また、受験資格も厳しくなりました。

 

それまで受験資格は医師や看護師といった「保健、福祉、医療の法定資格保有者」と「相談援助業務の経験がある人」のほかに「社会福祉主事任用、ホームヘルパー1級・2級、介護職員基礎研修、介護職員初任者研修、 実務者研修ほか、介護業務 10 年 1800 日」といった資格者も、実務経験を満たせば受験が可能でした。

 

しかし、受験要件が限定される改正が行われ、平成30年度より保有資格取得者に対する試験免除廃止と、受験資格の厳格化がなされることになったのです。

 

国は、質の高いケアマネジメントができる人材を求めています。

それに伴う試験制度の厳格化となったわけですが、これが予想をはるかに超えた「人材難」を迎えることとなりました。

 

〇ケアマネ試験は都道府県ごとに行われ、受験費用はバラバラ

ケアマネ試験を受けたことがある方は、当然ご存知かとは思いますが、試験は概ね毎年10月の第4日曜日に、都道府県ごとに実施されます。

 

驚いたのが、受験料や実務研修費用、実施時期等が等都道府県ごとに決められており、その金額はバラバラであるという点です。

 

「介護の資格最短net」というサイトを拝見した限り、試験の受験費用で最も安い都道府県は山梨県の7,800円、最も高いところは千葉県で14,400円でした。その差6,600円!!

 

費用の違いは、合格後の「実務研修」にも表れています。

実務研修費用で最安値は秋田県の23,000円、最高値は北海道の64,650円でした。

 

もっとも、上記は今後変更となる場合もありますが、都道府県によってこんなにも違いがあるのかと、心底驚きました!!

 

〇介護支援専門員には更新制度がある

必要な資格を取得し、5年の実務経験(相談支援に関する実務のケースも)を経てケアマネ試験に合格しても、実務研修を終了して5年後には「更新研修」が待っています。

 

介護支援専門員の更新制度は、平成18年から導入されましたが、介護・医療系資格で更新を要するのは介護支援専門員のみです。

更新研修制度は複雑なので、こちらでは説明を割愛しますが、最大88時間の研修を受ける必要があり、これがなされないと失効してしまいます。

最近はコロナ禍もあり、オンライン研修も充実してきているものの、それでも最大88時間の研修を受けるのは相当大変です。ほとんどの方は、通常に業務をこなされながら、研修受講をされている方ばかりですから。

 

資格を維持するコストも、ケアマネさんにとっては非常に重い負担となっているわけです。

 

〇介護支援専門員は「国家資格」ではない??

これまで、介護支援専門員は「国家資格ではない」と言われ続けていました。

ケアマネ活動を支援する団体である「一般社団法人日本介護支援専門員協会」は、ケアマネの国家資格化へ向けて国にも働きかけをしてきました。

 

しかし、今年に入り、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

それは、介護支援専門員は「国家資格」であるという事実です。

 

一般社団法人 日本介護支援専門員協会のHPに、下記のように記されておりました。

 

平成15年に開会された「第156回国会」において、長妻昭衆議院議員より、『「国家資格」及び「民間技能審査事業認定制度による資格」に関する質問主意書』が提出され、当時の小泉純一郎内閣総理大臣より衆議院議長あてに、閣議決定された答弁書が提出されました(以上原文ママ)。

 

上記を裏付ける資料がこちらです。

字は小さい(表の右下)ですが「介護支援専門員資格が国家資格である」ことが、しっかり記されています!!

この事実、ご存知ない方が結構いらっしゃるようです。

これまでの協会の活動は何だったのか・・・という意見もありますが、いずれにしてもケアマネという資格は国家資格であるということが、これで明確になったのです。

 

資格の取得はあくまで手段であり、目的ではありません。

資格の価値を高める最大の力は、資格を保有する方々の日々のお仕事です。

 

しかし「介護福祉士や社会福祉士が国家資格なのに、なぜ介護支援専門員は国家資格ではないのか」と嘆くケアマネさんは、実際にたくさんいらっしゃったのも事実です。

 

現実として、国家資格であるということは、その資格の価値を高める要素になると思います。

この事実を知ったことにより、現場で活躍されているケアマネさんが、誇りを持ってお仕事ができる原動力になるのであれは、それは大変喜ばしいことであります。

 

〇ケアマネさんの未来に向けて

ケアマネさんの仕事は、本当に大変です。

これは、私達が訪問看護師として日々ケアマネさんと接していても、純粋に感じるところであります。

 

世間では、介護職員の給与水準が一般業種よりも著しく低いとされ、その処遇を改善しようと「介護職員処遇改善加算」や「介護職員特定処遇改善加算」が創設されたことは、皆様もご存知の通りでございます。

 

先日のコラムでもご紹介(過去記事)いたしましたが、介護職員等に関しては今回臨時の補助金に加え、10月より新たな加算が創設されることが決まっております。

 

しかし、上記加算も補助金も、居宅介護支援事業所のケアマネさんは一切恩恵に預かれないのです。

これは明らかにおかしいです。何とかしなくてはならない重要な問題であると思います。

 

先に触れたように、ケアマネさんの仕事は非常に大変で負担が重い上に、近年では介護職員と給与水準が逆転傾向となっている部分もあります。

 

確かに、ケアマネという仕事は、一定以上の質が担保されている必要はあります。

しかし、やりがいを見出すだけではなく、仕事に見合った報酬をケアマネさんが得られるよう、国も考えていただけるとうれしいです。

 

そうすることにより、ケアマネ試験の受験者数の減少や、未更新者の増加に歯止めをかける一つのきっかけになるのではないかと、私達は考えます。

 

 

【参考URL】

東京都の試験実施状況(東京都福祉保健局)

 

介護の資格最短net

 

東京都介護支援専門員(東京都福祉保健財団)

 

一般社団法人 日本介護支援専門員協会HP