介護施設の開業「③開業に必要な資金」

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

今年も残すところ1ヶ月余りとなりました。

忘年会の話もちらほら聞かれますね。

コロナ禍で実施できない状況が続いていましたので、今年は少しでも楽しみたいものです。

とはいえ、また最近コロナ感染者が増えておりますので、感染対策を万全にして訪問看護サービスを実施してまいります。

 

今月2回にわたり、介護施設の開業に関する記事をご紹介いたしました。

今回は3回目として、「介護施設の開業に必要な資金」について取り上げさせていただきます。

 

資金の調達

介護施設を開業する上で、非常に重要なのは「資金の調達」です。

経営資源として必要といわれる「人」「モノ」「カネ」「情報」のうちの「カネ」の部分です。

資金がなくなれば、どんなに黒字であっても経営は破綻します。資金が確保できなければ、優秀な人材を確保することもできません。どんなに崇高な理想を掲げても、お金がなければ実現はできないのです。

開業する介護施設によって、開業に必要な費用は大きく異なります。今回は「住宅型有料老人ホーム」を中心に解説しますが、他の在宅サービスに比べて費用が膨大にかかるのは想像に難くありません。

 

ここでは、有料老人ホームの開設に必要な費用について、そして資金の調達方法にはどのようなものがあるのかについて解説いたしますので、一緒に考えてみましょう。

 

事業計画の策定

まず絶対に必要なのは「事業計画の策定」ですが、その前にやらなければならないことがあります。

それは「事業ドメイン」の選定です。ここでいう事業ドメインとは、数ある介護事業の中でどの事業を選択し、経営資源を投入するかを考えることです。

介護事業と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。その中で、有料老人ホームの事業を行いたいと考えたとして、なぜその事業を行いたいのかを明確にしなければなりません。

理由はこのあと詳しく説明しますが、あいまいかつ不順な動機で有料老人ホーム事業をするのは、極めて危険だからです。

 

有料老人ホームは、高齢者の生活の場です。それを支えることは大変尊いですが、同時に困難も伴います。

また前述の通り、施設の運営はお金のかかり方が尋常ではありません。状況によりますが、億単位の資金準備を想定する必要があります。

施設経営には長期的ビジョンが求められ、苦しいからといって簡単にやめることはできません。安易に参入すると大やけどすることもあります。相応の覚悟が必要です。

ですので、最初からあまり高いリスクを負わず、比較的に安価で開業したいということであれば、いきなり施設運営せずに「居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)」や「訪問介護事業所(ヘルパー)」等から始めることをお勧めします。

居宅介護支援事業は、管理者(主任介護支援専門員の有資格者)が最低1名いれば始められます。訪問介護事業は、一定の人員を確保する必要性から、居宅介護支援事業に比べて開業費用はかかりますが、それでも施設運営に比べれば費用は安く抑えられます。

とはいえ、費用が比較的安価だから「簡単」ということではありません。

経営者であれば、介護事業がいかに簡単にいかないかを、身をもって心得ているはずですね。

詳しくは後述しますが、介護事業を経験している法人のほうが、未経験の法人に比べて融資が圧倒的に受けやすくなります。

 

熟慮に熟慮を重ね、それでも住宅型有料老人ホーム経営を行うという考えが固まりましたら、事業計画を立ててみましょう。

 

最初はラフでもかまいません。しかし、金融機関からの融資を検討するのであれば、事業計画書の提出は必須ですので、やはり綿密な作成が必要です。

 

「経営理念」「事業規模」「人員計画」「サービス方針」「準備すべき設備」等をしっかり立案した上で、資金計画を立てなければなりません。

何が必要で、どこにいくらかかるのか、ということを把握せずに進めても、うまくいくはずはありません。

 

以下、資金調達の例についてご紹介いたします。

 

資金調達方法① 自己資金

介護施設を開業するためには、多額の資金が必要です。

 

資金調達の最初の一歩は「自己資金」です。

開業を検討している人が皆、潤沢な自己資金を確保している人ばかりではありません。自己資金だけで施設を開設できる人は、ほぼいないと言っても過言ではありません。

 

だからといって、自己資金がゼロというのは感心できません。

一概には言えませんが、施設の開設を検討するならば、最低でも1000万円前後の自己資金を確保することが必要です。自己資金額は、後述する「金融機関からの借り入れ」にも影響します。

 

資金調達方法② 金融機関からの借り入れ

自己資金ではまかないきれない場合は、金融機関からの借り入れにより資金を調達します。

 

金融機関からの借り入れ方法として、下記が挙げられます。

〇メインバンクからの融資

〇株式会社日本政策金融公庫からの融資

〇信用保証協会からの融資

〇WAM(独立行政法人福祉医療機構)等の団体からの融資  等

 

メインバンクをお持ちの方は、まずはそちらにご相談ください。

 

日本政策金融公庫からの融資は「無担保、保証人なし」など条件が魅力的ですが、金利はやや高くなります。一方、信用保証協会からの融資は東京都などの自治体を通した融資となります。自治体が融資の借り入れ条件を決定し、信用保証協会が保証を担ってくれ、金融機関によって融資が実行されます。

いずれの場合も、融資の前提条件として、「自己資金」が必要です。これにより融資の審査に通るかどうか、融資額がどうなるかが決まるのです。

自己資金が多いほど、融資が実行されやすくなります。自己資金が0の場合は、融資が受けられる可能性は限りなく低くなります。

なぜなら、自己資金の大きさが事業に対する思いと資金の返済に対する信頼の証となるからです。お金を貸す側であれば、自己資金が全く準備できない人が、本当に事業経営できるのかと懐疑的になるのも当然です。

信用保証協会を通す場合、自治体によって自己資金の規定は異なります。よく確認しましょう。

日本政策金融公庫や信用保証協会からの融資を受ける場合は、最寄りの商工会議所や商工会に相談されることをお勧めします。相談員さんが懇切丁寧にサポートしてくれます。

 

資金調達方法③ 助成金の活用

融資以外の資金調達として、助成金の活用があります。

 

助成金は、一定の条件を満たし関係機関に申請を事業主が、審査の結果国や公共団体から支給を受けることができる給付金です。

介護事業に関連する主な助成金は以下の通りです。詳しくは都道府県労働局や公共職業安定所等にてご自身でご確認ください。

 

・キャリア形成促進助成金

事業主が、その雇用する労働者に対し、職業訓練等を実施した場合に訓練経費や訓練中の賃金を助成するものです。

 

・人材確保等支援助成金 介護福祉機器助成コース

介護福祉機器の導入を推進することで従業員の離職率の低下に取り組む事業主に対し、離職率低下が達成できた場合に支給される助成金です。2021年3月までは機器導入によりで労働環境の改善が図られた場合も支給対象でしたが、そちらは廃止されました。2021年4月以降は「離職率低下の目標を達成した場合」のみが助成対象となっております。

支給率は、導入した機器の費用の20%(上限は150万円)となっております。導入した結果、生産性が上がったと認められた場合には、申請により費用の35%が補助されます。

 

・職場定着支援助成金

介護福祉機器(移動用リフト等)についての導入・運用計画や雇用管理制度についての雇用管理制度整備等計画を都道府県労働局に提出、認定を受けて導入し、雇用管理の改善を図った介護事業者に対して、導入等の所要経費の1/2等が支給されます。

 

ほかにもたくさんありますが、膨大過ぎて紹介しきれませんので省略いたします。

 

助成金を活用できれば、開業に必要な資金を補助してもらえますし、運営に必要な資金の一部を調達することができます。

基本的には返済の必要がありませんが、助成金の内容によっては、かなりの量の申請書類を作成する必要があります。不備があれば受け付けてくれません。

また、助成金は基本的に事業遂行(賃金・労働条件の改善、該当する人材の採用等)の後に、実績報告をし、受理されてはじめて支給されるケースがほとんどです。要は「後払い」ということです。

不正受給は問題外。返還を求められるだけでなく、以後助成金受給ができなくなるペナルティが課せられますので、楽観的に考えるのは危険です。

適正に取り扱いさえすれば、返済が不要である助成金は非常に有効な資金調達手法といえます。

助成金に関する情報はなかなか収集しにくく、予算の関係により、年度途中で終了となるものもあります。常に最新情報をキャッチするのは結構大変です。

助成金に詳しい社会保険労務士や中小企業診断士等の専門家や、前述の商工会議所・商工会等に相談してみるのも一案です。

 

資金調達方法④ ファクタリングの活用

繰り返しになりますが、介護施設を運営するためには、十分な運転資金が必要です。

 

住宅型有料老人ホームは介護保険サービス事業ではありませんが、同一法人が他の介護事業所を併設する場合、利用者の自己負担分以外(7割~9割分)は都道府県国民健康保険団体連合会(国保連)に対し保険報酬の請求をします。

 

介護事業をされている方にとっては常識的な話ですが、保険請求した報酬の入金にはタイムラグがあります。基本的に、サービス提供から2か月後の入金となります。

 

売上があっても手元に資金が入ってくるのに時間がかかるわけです。手元に資金が入ってこなくても、スタッフの給与や施設の家賃、光熱費、設備のリース料金などの支払いは「先払い」となります。

ですので、介護事業をするには、常に資金繰りを考えていかなくてはならないのです。キャッシュフローをしっかりしておかないと、経営は継続できません。資金が止まれば会社は倒産します。

売上を早く現金化したい時には、ファクタリングの活用を検討してみましょう。ファクタリングとは、を売掛金となる介護給付費(国保連に請求した報酬額)を、期日前に一定の手数料を払って買い取ってもらうサービスです。

手数料がかかるため、受け取れる額は全額ではありませんが、国保連からの入金があるまでの資金繰りの問題が解決できる可能性が高まります。また、ファクタリングは負債(借り入れ)ではありませんので、貸借対照表(銀行に対して)に影響を与えないというメリットもあります。

以上、介護施設に必要な資金と調達方法等について解説いたしました。

介護施設に限らず、何か事業を行うには相応の費用がかかります。

このコラムをお読みいただいている方の中には、今後新たなビジネス展開を模索されている方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方々にとって、このコラムが少しでも参考となれば幸いです。

 

今回もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。