介護事業所における「管理者」の仕事①

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

介護保険の指定事業所には様々な職種がありますが、すべての事業に共通して配置が義務付けられている職種があります。それは何かご存知でしょうか?

それは「管理者」です。管理者を設置しない介護サービスは存在しません。

当然ながら、当法人で運営している「訪問看護ステーション」にも「障がい者グループホーム」にも、管理者が配置されています。

 

例えば、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所には「介護職員」は配置されませんし、訪問介護事業所には「看護職員」の配置はありません。

まれに、看護師資格をお持ちの方が「訪問介護員」としてヘルパーステーションに勤務するケースもありますが、それはたまたまそうなっているだけであって、「配置義務」があるわけではありません。

 

しかし管理者だけは、すべての介護サービスに必須の職種になっております。

 

本日は、介護事業所におけるマネジメントについて、シリーズで取り上げたいと思います。

どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 

介護事業所における「管理者」の実情

ところで、各法人では管理者を担っていただく人物を、どのような基準で処遇していらっしゃるでしょうか。

 

恐らく、明確な社内基準をもって管理者を配置できている法人は、それほど多くないのではないでしょうか。それだけ、事業所の管理者を配置することは難しいということです。

 

この業界は常に人材不足にさらされています。

ですので、会社として「管理者」に求める人材像を抱いていても、実際には簡単にはいかないでしょう。

法人によっては、毎年どこかで新規事業所の開設を企画するところも多いので、どうしても人材不足となってしまい、結局内部昇格や付け焼刃のようにして管理者を配置しているケースが多いように思います。

 

では、介護事業所の管理者が行うべき仕事とは何でしょうか?

介護事業所における管理者の仕事は、非常に多岐にわたります。

介護保険法令や省令には、管理者の役割として「事業運営を一元的に管理する」となっておりますが、とてもその一言では集約できません。

 

介護事業所の管理者に求められている職務は、大きく分けて4つあると筆者は考えます。

それは、①サービスの質の向上②コンプライアンスの遵守③人事・組織のマネジメント④収支のマネジメント です。

 

①については、介護事業が「サービス業」といわれていることからも明らかでしょう。

質の低いサービスを提供していたら、お客様から支持されないばかりか、最悪の場合重大な事故やトラブルを引き起こすことにもなりかねません。

 

②については、主として介護保険諸法令に基づいて運営することに、管理者は大きな責任が課せられています。

新規指定の際、管理者は看護保険諸法令に基づき運営をすることを「宣誓」するのです。

誓約書がありまして、コンプライアンスに基づき健全に運営することを、管理者になる方は署名をもって宣誓するわけです。

 

運営(実地)指導の際には、法人代表者名で通知が届きますが、実際の実地指導の際には「管理者」が立ち会うのが大前提です。

 

介護保険諸法令は、定期的に改正があります。

来年度がまさに改正年にあたるわけですが、管理者は常に新しい情報をキャッチアップし、それを全スタッフに周知させるとともに、諸法令を遵守した運営ができるよう管理する必要があります。

 

遵守すべき内容は、介護保険諸法令に留まりません。

ある程度大きな法人であれば、人事労務的な業務は本部機能が担っているケースもたくさんあります。

しかしそうはいっても、管理者が全く労務についてわからないというわけにはいきません。当然ながら、労働法的な知識も少しは知っていないといけません。

 

③について、これは世の中にあるすべての企業や事業所にあてはまりますが、人事・組織マネジメントです。

 

もっとも、介護事業所の管理者の中で、人事の全権を握っている方は多くないと思います。

あるとしたら、比較的小規模な事業所で代表取締役等が管理者をしている場合くらいでしょう。

 

求職者の面接はするでしょうが、すべての職種について採用の可否まで決定できる管理者は、それほど多くないのではないかと思います。あるいは、介護職員は管理者で採用可否を決められるが、相談員やケアマネといった重職については役員や本部が決裁する、というところもあるでしょう。

 

ちなみに筆者がかつて勤務していた法人では、管理者とケアマネ職だけは社長面接がありました。それ以外の職種については、事業所の管理者が決裁することができていました。

 

採用の可否だけではなく、採用後の人事・組織マネジメントが非常に大変です。

もちろん、どの業種の管理職も同様なのですが、ただでさえ離職率が高く人材不足が著しいこの業界で、人事組織のマネジメントをするのは容易ではありません。

しかも、介護事業には「人員基準」というものがあり、これを厳格に守らないといけないのです。

上記①に相当する業務ではありますが、管理者はこれに紐づけて管理しないといけないわけです。

 

④についてですが、事業所の管理者である以上、事業所の収支に無頓着というわけにはいきません。

当然、収支に関する責任が問われます。

もっとも、収支面において事業所の管理者に求められるのは、あくまで事業所で管理可能なコストに関する責任であって、本社がすべき「管理不能コスト」については基本的に対象となりません。

例えば、事務所家賃や減価償却費、借入金の返済に発生する金利といったコストは、基本的に事業所の管理者が管理すべきものではありません。

 

実質的に、管理者は自事業所の売上や稼働率、そして人件費等の収支を管理をすることになります。

 

これだけでも、事業所の管理者は大変な職責を担っていることがお分かりいただけるかと思います。

 

しかし、現実には「介護保険諸法令に基づくマネジメント」を特に強く求められている点が、業界特有の責務であると思います。

 

人材不足が叫ばれて久しい中で、これを行うことは容易ではありません。

筆者も大変苦労した経験がありますので、よくわかります。

 

マネジメント業務に留まらない「管理者」の仕事

介護事業所の管理者が大変な理由は、実はこれだけではありません。

それは、管理者は現場業務を兼務している事業所(法人)が多いためです。

「兼務」とは、例えばデイサービスにおいては、管理者と相談員を兼務している方は多いですし、訪問介護でも管理者とサービス提供責任者を兼務している方も多いのが実情です。

 

しかし、これは介護保険の人員基準に基づく「兼務」です。

現場に入ってスタッフの皆さんとともに仕事をしている管理者まで含めれば、もっと多いのではないでしょうか?

現場に入らず、管理者としての仕事にだけ専念できている方は、決して多くないと思います。

 

実際、私もそうでした。管理者だから現場の仕事はしないだなんて、そんな悠長なことは言っていられませんでした。

デイサービスの送迎、食事の配膳下膳、見守り、排泄介助、時には夜勤と、できる限りの現場フォローはしてきたつもりです。

 

人員にゆとりがあったわけではありませんから、フォローしないと現場が回っていかないのです。

ある程度規模の大きな施設であれば、それほど管理者が現場に入るケースは多くないのかもしれませんが、実際はそうとは限りません。

大手法人のサービス事業所であっても、事業所の管理者が入浴介助や食事介助等を行う例は珍しくありません。

というより、ごく普通に行われているといった方が適切かもしれません。

 

恐らく、これが介護事業所の管理者の現実であると言っても過言ではありませんし、非常に過酷であることを物語っているといっても過言ではないということです。

この続きは、次回に持ち越したいと思います。

今回もお読みいただきましてありがとうございました。次回の投稿をお楽しみに!!