「総合事業」に関する問題提起

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

関東では儚くも完全に桜も散ってしまい、日によっては暑い日も増えてきました。

どうも日差しが強くなってきたな、という印象です。

 

お日さまの光を浴びるのは気持ちがよいものです。

ただ、紫外線には要注意ですね。

ユニケアでも訪問看護師やセラピストたちは日よけに余念がありません。

お肌は大事ですからね・・・

 

もうすぐゴールデンウィークがやってきます。

私たちのような介護業界に身を置く者にとって、長期の連休はあまり馴染みませんが、GW中であっても私たち訪問看護師の訪問をお待ちになるご利用者様のために、元気に頑張ってまいります。

 

本日のテーマ

主として要支援者に対して提供されるサービスに「日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)があります。

詳しくは後述しますが、4月に入り有識者が総合事業について議論するための会合が行われました。

 

2024年度の介護報酬改定を控え、総合事業は大きな論点になると思われます。

今後ますます増える社会保障費を適正化するための一環として、総合事業は創設されましたが、問題山積のようです。

 

今回は、総合事業について取り上げ、今後どのように変わっていくのか等についてご一緒に考えていければと思います。

どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 

 

そもそも「総合事業」とはなにか?

2015年の介護保険法改正で創設された、要支援者を対象とする総合事業が、2015年の介護保険法改正によって創設されました(再掲)。

もう、8年前の話になるのですね。

簡単に申しますと、現状の総合事業では要支援者の方について「訪問型サービス」「通所型サービス」を介護保険の給付対象から除外し、新たなサービスとして市区町村の事情に合わせた独自サービスを認めるものです。

 

総合事業を利用する流れとしては、下記の通りです。

 

現状では、総合事業のサービスは大きく分けて3種類あるといってよいと思います。

訪問型サービス

訪問型サービスは、現行の訪問介護に相当するものと、それ以外の多様なサービスから構成されます。

多様なサービスについては、訪問型サービスA(緩和した基準によるサービス)、訪問型サービスB(住民主体による支援)、訪問型サービスC(短期集中予防サービス)、訪問型サービスD(移動支援)の4つに分類されます。

 

通所型サービス

総合事業の通所型サービスでは、日常生活上の支援、生活行為を向上させるための「通所介護に相当するサービス」に加えて、NPO、民間企業、住民主体のボランティアなどによる「多様主体による多様なサービス(通所型サービスA、通所型サービスB、通所型サービスC)」を利用することができます。

通所Aは、NPO、民間事業者によるミニデイサービスや運動、レクリエーション等を行うサービスです。

通所Bは、住民主体で通いの場を設け、交流の場として体操や運動等の活動を行うサービスです。

通所Cは、市町村の保健・医療の専門職が生活機能を改善するために3~6か月の短期間で、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能向上のプログラムなどを行うサービスです。

 

予防ケアマネジメント

予防ケアマネジメントは、地域包括支援センターや委託先である居宅介護支援事業所が、要支援者(事業対象者)に対して行うケアプラン作成、モニタリング等のサービスになります。

 

問題点

「多様な主体が多様なサービスを提供できる」メリットをひっさけてスタートしましたが、実際のところはどうなのでしょうか?

 

介護サービスは、介護保険料と税金を財源とし、一部自己負担をお願いすることで運営されています。

そこから、要支援者を一部給付対象から除外するという事情には一定の理解はするものの、全体としてうまくいっているとは思いにくいです。

以下、何か問題なのかについて見ていきましょう。

 

担い手不足

担い手不足はもはや自明であり、会合でも冒頭に述べられていたそうです。

 

少し古い資料(令和元年)ですが、総合事業の実施状況で「今後総合事業を導入・拡充を検討しているか」について、サービス種別ごとに集計した調査データがあります。

 

以下は、「現在サービスを実施している市町村」の動向です。

上記の表によると、現在既に総合事業を実施している市町村では、今後も何らかの形で拡充する方針を打ち出すところが比較的多いようです。特に、従前相当ではなく「通所型サービスB」「訪問型サービスB」の拡充意向が強いことが窺えます。

 

続いて「総合事業を実施していない」市町村の動向を見ていきましょう。

上記の表の通り、もともと総合事業に消極的な市町村では、今後もあまり積極的に推進する意向が薄いようです。

 

この状況を見て、総合事業が今後積極的に推進され、担い手が充足すると思われますでしょうか?

筆者は非常に微妙ですね。

 

基準緩和することで、参入するハードルが下がって取り組みやすいメリットはあります。

例えば、訪問型サービスBやCであれば、介護職員初任者研修修了者でなくても、市町村独自で行われる簡易研修を修了すればサービス提供が可能であり、介護の仕事に不安がある方でも対応しやすいメリットがあります。

 

しかし、このハードルを下げれば、人材が集まると思っているのでしょうか?

そんな簡単な問題ではない気がします。

 

報酬構造の問題(報酬が低い)

報酬が低く、事業所が総合事業を行うメリットが多くないというのが、大きな原因のひとつでしょう。

 

報酬体系が非常に細かく、かつ市町村によって異なるので、ここでは到底ご紹介できませんが、恐らく多くの方が「この報酬体系ではメリットがない」と思われるでしょう。

報酬構造の問題は否めず、事業所の努力やスタッフさんの頑張りに見合った報酬にしないと難しいです。

 

しかし、厚生労働省は「基本報酬を上げる」という話は積極的には行いません。

結局のところ、総合事業が「市町村の事情に合わせて」という建付けになっておりますので、結局市区町村に任せて(丸投げ?)してしまい、国はあまり手を加えないのではないか、とも思ってしまいます。

 

そう思ってしまう理由の一つに、当事業の仕組みに関する基本的な考え方にあります。

「総合事業サービス」の正式名称は、先ほども申し上げたように「介護予防・日常生活支援総合事業」といいます。

介護保険制度であれば、3年ごとに報酬改定が行われます。

社会保障審議会介護給付費分科会において審議され、そこで結論付けられたものを国が儀式的に了承し、決定します。

社会保障の推移により、当然報酬削減もありえます。その場合は、介護保険料と公費、そして自己負担に転嫁されます。

 

しかし総合事業の場合は、3年ごとの報酬改定に連動して見直しがなされますが、市区町村で要支援認定者が増えても国は基本的に面倒はみてくれません。

介護保険制度では、個別給付のように税財源を確保する義務はありません。

あくまで市町村がやりくりを求められるのです。

 

筆者が先程「市町村に任せる(丸投げ?)」と申し上げたのは、まさにこの部分を言い当てているということなのです。

 

 

委託事業所の基準も料金設定も市町村ごとに異なります。

独自の事業で決められるというのは、先程も申し上げたようにメリットもあります。

しかし、いかんせん担い手が少ないため、要支援者は実質的にサービスを選択しにくい現状にあります。

実名は挙げられませんが、総合事業を基本的に行わないという方針を打ち立てている大手介護事業会社もあると聞きます。

CSRの観点で見れば、そういう方針はよろしくないと思いつつ、特に上場会社は株主対策として、あまり事業性の乏しいことに注力したくないと考える気持ちも重々理解できます。

 

改正厚生労働省令には問題あり!?

さらに2022年10月、厚生労働省は省令で「総合事業を受けていた要支援者が『要介護認定』となった場合も、引き続き総合事業サービスを継続して受けられる」とする通知がなされました。

 

これには事業者や業界団体から寄せられる批判の声は大きく、筆者も首をかしげてしまいます。

国は、完全に要支援者を介護保険制度から「締め出そう」としているのではないか?

そう思われても仕方がないですね。

 

まとめ

2042年に日本の高齢化はピークを迎えると推計され、今後も認定を受ける人は増え続けます。

総合事業は、元気な方が要支援にならないよう、また要支援者が要介護状態にならないように「予防」するという重要な目的があります。

にもかかわらず、在宅介護の主力である介護予防訪問介護と介護予防通所介護を「総合事業」に移し、かつ担い手不足という重要課題にメスを入れることなく8年が経過しているのです。

 

地域包括支援センターや委託先の居宅介護支援事業所が担当する「予防支援(予防プラン)」の報酬も、あまりに低くてひどいものです。

 

コロナ禍はだいぶ落ち着いたものの、通所系サービスを中心にコロナ禍のダメージは残っています。

ただでさえはびこる担い手不足やビジネス性に乏しいことに加え、コロナ禍の影響を受けていることを、国はもっと認識すべきではないでしょうか?

 

総合事業をもっと推進したいのであれば、国がもっともっと実態を調査し、「本当の問題」に目を向ける必要があります。

血の通った議論がこの会合で行わない限り、何も変わってはいかないような気がします。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

ユニケアでは、今後とも皆様にとって有益な情報を提供してまいります。

是非皆様とは手を携え、地域の高齢者の方々の生活を支えていける存在であり続けたいと思います。

 

ユニケアの取り組みに興味をお持ちの方、お気軽にご連絡くださいね!!

 

【参考URL】

充実に向けた検討会

介護サービス情報公表システム