2023年3月17日
こんにちは。東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
今回はユニケア事業所内で行われた「家族会」の様子をお届けいたします。
「家族会」って何?

一般的な家族会は、精神障害者を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい共有し、連携することでお互いに支えあう会であると厚生労働省は謳っています。
ユニケアの家族会は、亡くなった利用者様の遺された家族をお招きし、生前の思い出などをお話する機会を作る会として第二回目の開催になります。
家族会は、利用者様の生前に関わらせていただいたスタッフとの再会の場としながらご家族の心のケアの一環として、また多職種にとっても貴重な学びの場とさせていただくことを目的としたグリーフケアの場にしたいと考えております。
そんな第二回のユニケア家族会には、2名のご家族の方と2名のケアマネさんにご参加いただくことができました。お忙しい中ご参加いただき本当にありがとうございました。

今回はご家族からの貴重なご意見、そして日々密な連携を図ってくださっているケアマネさんからのご意見、実際に関わらせていただいたスタッフからの意見などを中心にご紹介させていただきます。
(参加いただいた方々には、家族会を周知していくことにご賛同いただいた上で、事前にお写真の掲載許可をいただいております。亡くなられた利用者様ご本人のお名前のみ、イニシャル表記させていただいておりますのでご了承くださいませ)
前回の家族会の様子はこちらの記事をご覧ください!
お一人目:S様(ご参加いただいた家族:奥様)
「話ができる時間がなく、最後どうして欲しいのか聞けなかったのが自分として残念です」


2月に亡くなりましたが、バタバタしていたため悲しむ暇もなくここまで来てしまいました。
そうおっしゃるのは、ALSを患い2月にご逝去されたS様の奥様。

自分だけじゃとてもとても無理でした。でも、先生、歯医者さん、ウィルさん(訪看他事業所)、たくさんの方が毎日来てくださっていて・・・。まだ手続き終わっていないんですが、それが終わった時にどうなるんだろうと思っています。前向きにいかないといけないが、葛藤しているところなんです。夜一人になるといろんな思いが出てきて・・・でもなんとか元気にやらないとと思って頑張っています。
S様がALSを発症したのはコロナ禍の最中でした。生前はS様の介護でなかなか外出できなかったそうですが、世間の感染症流行もかなり落ち着きを見せ、ようやく最近になって電車に乗ってお出かけできるようになったそうです。
しかしコロナ禍では、S様が人工呼吸器を付けていたため、感染させちゃいけないという思いを奥様もスタッフも強く感じ、奥様自身も「自分のせいで何かあったら」といつも気を張り詰めていらっしゃったそうです。
そんな中でも、奥様はいつもユニケアスタッフやケアマネさんへ優しい心遣いをしてくださっており、皆奥様の優しさにいつも救われ、元気をいただいておりました。


こんなに優しい家族っているんだと実感していました。ご本人も奥様もとても穏やかだったため、どのような気持ちを抱えていらっしゃったのでしょうか?

今はインターネットがありますので、調べるとどうなっていくのか誰でも調べられるため、主人が最期こうなるんだと徐々に覚悟はしていました。それでも、ALSだと診断される前は眠れませんでしたね。もしかしたらそうなんじゃないか?それだったらどうしよう?という思いがまずありました。今も当時もなんで?なんで?という思いしかありません。退院してから、「ここからは看護師さんがいないため自分がなんとかするしかないんだ、人工呼吸器は命に関わるから……」と責任を感じたのですが、娘に相談した時「それはそれで仕方ないと思わないと」と言われ少し気持ちが楽になりました。それでも、自分のせいで何かあるのは嫌だとずっと思っていましたね。
ご家族が自宅で大切な人をお看取るにあたり、どれだけ地域のサービスを活用していたとしてもご家族の負担や不安は計り知れませんよね。
だからこそ、サービスの介入時から家族への精神的ケアや信頼関係の構築が必要になります。


最初の頃は少し意思疎通できていたんですが、認知症も入ってきていたため必要最低限のことしか喋れませんでした。人工呼吸器をつけるかどうかの選択もできず、最期どう迎えたいかは聞けなくて・・・。パソコンの視線入力も口パクも出来ずに病状が進んでいってしまったため、心の底の思いを聞けませんでした。もっと生きたいのか、これが最大限なのか。主人は入院中もずっと穏やかで、家に帰ってきてもそうでした。こういう状態が嫌じゃないのかな?納得しているのかな?と思って3年間過ごしていたのですが、どうしてそういう感情でいられたのか、どこからその覚悟が生まれてきたのかは最後までわかりませんでした。
長く担当した看護師の武澤は、S様との関わりを思い出しながら思わず涙を浮かべていました。

2019年10月にユニケアに入り、ALSの方と関わりたいと言っていた時に最初に関わらせていだいたのがS様でした。いろいろと悩みながら3年間過ごさせていただいたのですが、今でもS様が大好きだった相撲の番組などを見る度にS様のことを思い出してしまいます。もっと何かできたんじゃないかとも思ってしまいます。話せないため意思疎通ができず、欲を言えば入院中からもっとコミュニケーションの方法が出来ていれば……とタラレバの話ばかりしてしまって・・・。

武澤も非常に熱心にS様に関わらせていただいていたことから、医療者である前に一人の人間としての感情が溢れてきてしまいます。
「医療者なんだから感情移入しすぎちゃだめ」という考えの方もいますが、私達はそうは思いません。
人間らしい関わりから得られる「人の温かさ」には、沢山のパワーがあると実感しているからです。
S様にもこの気持ち、伝わってくださっていたら嬉しいですね。

最初お引き受けした時は、奥様に無責任なこと言ってしまいました。安心させようと思って「いつでもどこでも遊びに行けますよ!」と言ってしまったんです。でも使用したい制度が上手く使えない問題などもあり、奥様のご要望を叶えて差し上げることができず・・・もっと最初から適切な情報をお伝えしていきたかったなと反省しました。

サービス提供者が「こうしたい」と思ってもなかなか上手く事が進まないことの多くに、「法律や制度の縛りがある」ことがあげられます。
一方で、これら法律や制度によって守られていることや助けられていることも沢山あります。
いかに現状のサービスを上手く組み合わせながら今ある資源による最善のサービスを提供していけるかは、ケアマネさんだけではなく往診・訪問看護・ヘルパーなどの社会的資源全体が協力して情報共有し、地域全体で支えていくことで実現されるのだと思います。
このような家族会などの機会を通して、これからもぜひ多職種間での連携を大切にし続けていきたいですね。
お二人目:H様(ご参加いただいた家族:奥様)
「お墓もあるんですけど、まだうちにいます。毎日、ごめんねもう少し家にいてねって。」

H様は喉頭がんの治療として喉頭摘出をした方で、声が出せないため会話が難しい方でした。

主人は、喉頭癌で声をずっと出せませんでした。だんだん歩けなくなってきて、口もきけないし。肺に転移してしまうからということで摘出したんですが、最後まで取るんじゃなかったと後悔していました。でも皆さんが訪問に来られるときには「今日は〇〇さんが来るんだよ」「明日は〇〇さんだよ」というと、「うんうん」といつも受け止めていました。療養の中で、お酒だけは辞められず、朝昼晩2合飲んでいました。(喉頭を)取っちゃったことを本人がとても後悔していたからこそ、私もお酒飲んでいても何も言いませんでした。
H様は睡眠薬を使用されてたそうです。一般的に睡眠薬とアルコールの相性は悪く、併用は禁忌と言われています。
しかし、在宅の現場では医療的な常識をすべてに適応させることが必ずしも正解とは限りません。
担当医師と連携を図りながら薬剤の調整や全身管理をし、「本人の希望をできる限りかなえられる環境を整える」ことが、医療者には求められます。
ここでもやはり、自分たちの知っている医療の常識に従うだけではなく、多職種と連携をしながらいかに「その人らしい家での暮らし」を実現していくかが、大切になるのですね。

リハビリとして密に介入していたPTの田中は、次のように振り返ります。

コミュニケーションは難しかったが、ご本人は嫌なものは嫌という思いはありました。ご飯も食べれてスティックパン1本だけ。それを見て奥様が、何か食べさせようと思って声をかけてくださっていたが、なかなか食べてくれなかったことを思い出します。グリーフケアに行った時に、奥様が全然介護も大変じゃなかったよとおっしゃっていて、本当にすごいなと思いました。
田中にも、思わず涙があふれてきます。利用者様に真剣に向き合ってきたことで、上手くいかなかったことも全部含めて、様々な思いがよぎってきますよね。

最期の様子について、奥様がお話してくださいました。

4月に車椅子乗ってお花見に少し行って、ワンカップのお酒を飲んで帰ってきたんです。外に出るのは病院と床屋さんだけ。亡くなった時は、私がガタガタやっている時に気付いた時には白くなっていて逝ってしまいました。でも、それが私の運命かなと。その時は涙ひとつもでなかったので、薄情だなと思っちゃいましたね。皆さんによくしてくださったのが、良かったなと思います。
奥様はこのように話していますが、お話されている目には光るものがありました。「薄情だなと思った」とおっしゃっていますが、本当にH様のことを愛されており、大切に思われていたのだと、改めて感じました。とても素敵なご夫婦です。

後悔といえば、ただ本当に息を引き取る時に全然気が付けなかったことです。それでも、うちにいたというだけでよかったのかなと思っています。お墓もあるんですけど、まだうちにいます。毎日、ごめんねもう少し家にいてねって言ってます。お酒だけは置いておいてあげるね、って。私はやるだけのことはやったから後悔はないけど、主人の方はどう思っているかわからないですけどね。皆さんによくしてもらったこと、本当に私は幸せでした。

今はまだ多くの方が病院や施設でお亡くなりになっています。ご本人の希望であれば、どの場所でも近くに誰かしらの目がありますので安心できるかと思います。
しかし、それでも在宅で最期の時間を希望される方は沢山いらっしゃいます。
よく、お亡くなりになられた方のご家族が「最期に何もしてあげれなかった」と後悔されている姿を目にします。
ですがH様の奥様もおっしゃっていたように「うちにいたというだけ=自宅で最期を迎えられた」で十分なんじゃないかと思っています。
最期の瞬間には立ち会えなかったとしても、大切なご家族と同じ空間で同じ時間を過ごすことほど幸せなことはありません。
もしも自分が最期を迎える立場になったとしても、必ず大切な家族と同じ場所で過ごしたいと思うはずです。
家族は医療従事者ではありませんので、多くは望みません。ただ一緒にいてくれればいい、そう思うと思います。
H様にとっても、奥様と過ごされた最期の時間が幸せで有意義な時間であっただろうと想像し、そうであってほしいと願います。
これからも私達訪問看護が、そんな希望を持ったご本人とご家族の支えになれるといいですね。

お三方目:K様(ご参加いただいた方:ケアマネさん)
「本人自身が自分の人生を諦めてしまっている事例で、どうするとよいのかとても悩んだ事例でした」
K様は原因不明の壊死性軟部組織感染症で、40代で寝たきりとなってしまい、週3回の透析を行いながらストマ造設をされていた方でした。
今回、介護されていたお父様をお呼びしようと思ったのですが、体調を崩されて入院治療中とのことで、関係機関でのカンファレンスとさせていただきました。


関わらせていただいてから2年くらいですね。40代の方で、僕もほとんど同年代でした。K様はお若いため、仕事をしたいという思いが強く、遊びにも行きたいだろうし、その若さであれば元気な時と同じような暮らしが出来るかもしれないと思い、そのレベルまでなんとか戻したいという思いが強かったです。医療依存度の高い方だったためユニケアさんに入ってもらってからも、なかなか上手いように進まない日々が続きました。こちらはこうしたいというゴールは見えていても、本人の希望は違っていて、そんな葛藤の毎日でした。命に関わることが毎日起こっており、本当に難しかったんです。週3回透析に向かっているが、セダンタイプのベンツで車高が低いのでお父さんが週3回往復で全介助されていました。そんな中、去年12月にお母様が亡くなり、追うようにして年が明けた1月にご本人も亡くなってしまったんです。K様がお亡くなりになる前も、「奥様もK様も亡くなられたとき、お父さんはどうなるんだろう?」と、ご本人だけではなく、家を背負って考えるようになってきていたところでした。K家にとって何が1番いいんだろうと考えるようになったのもつかぬ間、壁を乗り越えてもまた壁が現れ、K様自身もお亡くなりになってしまいました。僕自身はK様との関わりの中で学ぶことが非常に多くとても勉強になったのですが、これでよかったのかと今でも疑問に思っています。
ケアマネさんの主は生活を支えること。K様の担当ケアマネさんは、その生活の中にいるご家族へのサポートにも目を向けられ、ご本人と一緒にご家族のサポートに尽力をつくしてくださいました。


40代でベッドから離れられず、何を言っても聞かず暴飲暴食。自分で自分の体を痛めつけているが、良くなりたいとおっしゃっている方でした。私が訪問した次の日の朝、目が覚めずに救急車で運ばれて亡くなったそうです。実は、前日の訪問も救急車呼んでもいい段階で、本人も呼んでいいよって言っていたのですが、それがこの自宅での生活から離れて最期を迎えることへの了承の意味だったのか、はたまたその他の意味だったのか、今ではもうわかりません。結局、ご本人とお父様と相談し救急車はお呼びしなかったのですが、あの時の私の判断が、お父さんを苦しめていないかという後悔が今もあります。


ご本人の標として歩きたいという願望があって、プログラムを考えました。しかし、その度に様々な疾患的な障壁が出現し、なかなかスムーズにいかなかったんです。食事もとてもジャンクフードが好きだったんですが、透析をされている方でしたので医療者としてはいけないこととわかっていても、人として「だめですよ」ということはできませんでした。病気を期に離婚し歩けなくなる現状の気持ちについて「僕の気持ち、あなたにわかる?」と言われたこともありました。お母様が癌になってしまった時、どうしたらいいの?と相談も受けていたのですが、その後スケジュールの都合で僕が訪問に入る機会がなくなってしまい、それ以降予定が合わないまま最終的な気持ちを聞くことができませんでした。今でもそれが後悔で、なんとしてでもスケジュールの調整をして訪問に行った方がよかったのかなと思っています。

実はK様については、前回ユニケア内でのデスカンファレンスでも事例として挙げさせていただいた方でした。
K様と関わらせていただく中でのスタッフの葛藤や思いについてはぜひこちらの記事もご覧ください。

今回の家族会を通して、スタッフや関係職者の中でも様々な葛藤や後悔の声が聞かれましたが、S様のケアマネさんからはこのようなお言葉をいただきました。

私たちの仕事には正解はないんですよね。関わらせていただいてる間に出来ることをするだけ。その場その場を頑張るしかない、それが伝わると御家族の方に感謝していただけるんだなと実感し、とてもいい会に参加させていただきました。
そして最後は、ユニケア看護師の青木からの言葉で会が締められました。

心からありがとうと言っていただけると頑張って良かったと思えます。自分も父が亡くなってから心が安定するまで10年近くかかり、今でも当時のことをフラッシュバックするんです。それでもこういう機会で、泣いたり笑ったりして話していく中で新たな視点が出来るため、今日は皆さんと共有できたのでとてもいい時間でした。皆様ありがとうございました。
ユニケアでは、この家族会という機会を地域に浸透させていき、よりご家族や地域に寄り添ったサービスの提供をしていきたいと考えております。
それは単なる業務としてのグリーフケアではなく、例え仕事上で出会った利用者様やご家族であっても、そこから感じ取った思いや感情は、その人自身の成長や価値観を育むきっかけにすることができます。
今後もご家族や関係機関のご協力を煽りながら、より素敵な会を開催できるよう尽力していきたいですね!

ユニケアでは、看護師さん、セラピストさん、主任ケアマネさん、管理者さんを大大大募集中です!
こんな私たちと一緒に訪問看護がやりたい方、ぜひぜひご連絡ください!
また次回の更新をお楽しみに♪