訪問看護でも考えていきたい「アンガーマネジメント」

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

 

早速ですが、普段サービス実施中や職場にてお仕事をされていて、イライラしたり怒ってしまったりすることはないでしょうか?

 

「怒り」という感覚は誰にでもあることで、これをゼロにすることはできませんし、その必要はないとも言われています。

 

最近よく耳にするようになった言葉として「アンガーマネジメント」というものがあります。皆さんご存知でしょうか?

職場や家庭において、何かの原因により生じる「怒りの感情」を受け入れて、自分で上手にコントロールするためのトレーニング方法として、近年注目されております。

 

今回は「アンガーマネジメント」の意味や怒りのタイプ診断、実践方法等をご紹介いたします。

訪問看護をはじめとする介護サービス運営において、少しでも参考になればと思います。

 

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、「怒りの感情」を自分自身でコントロールするための技術のことを指します。

誰にでもある「怒りの感情」と上手に付き合うために、1970年代にアメリカで誕生した心理教育プログラムであると言われています。

プログラムが開発された当初はDVや校内暴力などの矯正プログラムとして活用されていましたが、時代と共に一般化され、教育現場や企業の研修などにも広く導入されています。

 

人が怒るメカニズム

ここで具体例をもとに、人が怒るメカニズムを考えてみましょう。

 

訪問看護ステーションの管理者であるあなたは「ご利用者様のご自宅に行ったらまず挨拶すべき」という考えの持ち主で、ある日部下の看護師を連れてご利用者様宅を訪問したとしましょう。

 

もし、同行した部下の看護師が、ご利用者様やご家族に対して挨拶をしなかったとしたら、どういう気持ちになるでしょうか。

ご自身の考えと現実とのギャップから「挨拶をしないとは失礼だ」と憤るかもしれません。

また訪問の目的が担当者の引継ぎであり、ご利用者様から「この人は挨拶もできない失礼な人だ。こんな人にケアしてほしくない」と言われてしまうかもしれません。

そうなった場合、怒りが生じてしまいかねません。

 

怒りのメカニズムを考えるとき、この「〇〇べき」というこだわりがカギになります。

そして「こだわり」と「マイナス感情や状態」の2つがそろうことで、人の怒りは発生すると言われています。

 

裏を返せば、上記2つのいずれかを減らすだけでも、怒りを小さくする可能性が広がるということでしょう。

 

アンガーマネジメントが必要な理由

アンガーマネジメントが、仕事においてなぜ必要とされるのでしょうか?

筆者の経験より、理由は2つあると考えます。

 

価値観の多様化

現代社会は、さまざまな価値観やライフスタイルを認め合う社会へと変革を遂げつつあります。

 

一方で、まだまだ自分が信じてきた価値観以外のものを受け入れられない、という人も一定数いるでしょう。

異なる価値観と接する機会が増えたため、怒りやストレスが溜まりやすくなってしまっているのも事実であると思います。

 

介護事業においても同様で、スタッフは人間です。

当然ながら、スタッフの価値観は多様化しているわけですから、その感覚の違いで相手に対する怒りのポイントは変わってきますね。

ですので、アンガーマネジメントが必要であるといえます。

 

企業内でのハラスメント防止

会社では、上司が部下を叱るというケースもあるかと思います。

ときには叱ることもやむを得ませんが、やり方を間違えて怒りの感情をぶつけると、上司本人は教育のつもりでも、部下や周囲からパワー・ハラスメントとみなされかねません。

そうなると、部下のモチベーションが下がってチームの生産性が下がるなど、企業全体にとってもマイナスとなるでしょう。

 

企業として、介護事業所として、社員のモチベーションや生産性を上げるためにも、アンガーマネジメントは必要といえるでしょう。

 

アンガーマネジメントを身につけるメリット

アンガーマネジメントを身につけると、どんなメリットがあるでしょうか?

いくつか挙げさせていただきます。

 

ストレスが減少し、健康的になる

怒りの感情は、相手だけでなく自分にも強いストレスを与えるものであり、健康的とは言えないでしょう。

怒りの感情に対する理解を深めることで、ストレスを抱えにくくなり、ひいては精神面でも健康的になるでしょう。

 

組織内で良好なコミュニケーションが期待できる

怒りっぽい人には、どこか近寄りがたいオーラが出てしまう可能性があります。

「今話しかけたら怒られるのではないか」と思われているようでは、良好なコミュニケーションは期待できないでしょう。

 

アンガーマネジメントを身につけることにより、感情ではなく理性的な言葉で伝えられるようになり、円滑なコミュニケーションが取れる可能性が広がるでしょう。

 

パワー・ハラスメント(パワハラ)を防止する

前述でもお伝えした通り、怒りを相手にぶつけることにより生じる「パワー・ハラスメント」の防止にも、アンガーマネジメントは大きな効果が期待できると考えます。

部下に指導したいことがある場合は、一度怒りを鎮静化させることで冷静に意図を伝えられるため、パワハラの抑制につながるでしょう。

 

組織の生産性が上がる

上司がいつも怒っていてギスギスした雰囲気の組織で、質の高い仕事ができるでしょうか?なかなか難しいと言えるでしょう。

 

アンガーマネジメントを身に着けることで、円滑なコミュニケーションをとりやすくなり職場内でも良好な人間関係が築けるでしょう。

よいチームワークで仕事ができ、生産性の向上につながりますし、離職率の防止も期待できると考えられます。

 

怒りのタイプ診断

怒りをコントロールするには、まず自分の性格を知ることが必要です。

具体的には「どのようなことを大切に考えるか」「何をされたら怒りが芽生えるのか」を知ることが大切でしょう。

ここでは、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が公表している「アンガーマネジメント診断」より、6つの怒りタイプをご紹介します。

 

①    公明正⼤タイプ (熱血柴犬)

道徳⼼が強く、自身の正義を貫こうとするあまり、他人のマナーやルール違反が気になり、 ちょっとした⾏動にもイライラしやすいタイプです。

 

②    博学多才タイプ(白黒パンダ)

執着⼼が強く、⾃分できちんと物事を判断するタイプで、いわゆる「完璧主義」タイプです。

思い込みが強く、⽩⿊つけたがる傾向があるため、他人の意⾒を受け⼊れにくく、厳しくなりがちな⾯があります。

 

③    威風堂々タイプ(俺様ライオン)

⾃尊⼼がある反⾯、他人からの評価を必要以上に気にするタイプですわれたりしたときにイライラする傾向があります。

 

④    天真爛漫タイプ(自由ネコ)

⾃⽴⼼が強く、⾃分を素直に表現するものの、他人に合わせることを嫌がる傾向があるタイプです。はっきりとものを⾔わない人にもイライラしがちです。

 

⑤    外柔内剛タイプ (頑固ヒツジ)

利⼰⼼があり、温厚で⾃分ルールや価値観を⼤切にしている反⾯、頑固な一⾯があるタイプです。 他人と意⾒が異なると⽿を貸そうとしない傾向もあります。

 

⑥    用⼼頑固タイプ(慎重ウサギ)

警戒⼼があり、冷静・慎重に物事をこなすが、人や物事を簡単には信じないタイプです。⼼を開くことや人間関係を築くことにストレスを感じることもあり、ちょっとしたことで傷つきやすいです。 

 

アンガーマネジメントの具体的な手法

実際に日常生活で怒りを感じたときには、どのように対処したらよいのでしょうか。

ここで大事になるのは、怒りは誰にでもあることで、完全になくすことはできないし、なくす必要もないということです。

 

ここでは、人事院から公開されている「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」に記載がある、アンガーマネジメントをいくつかご紹介します。

 

怒りを静める「6秒ルール」

感情のピークは「最初の6秒」と言われています。

その6秒間の間に怒ってしまうのではなく、一度大きく深呼吸したり、頭の中で6までの数字を数えたりすることで、怒りのピークをやり過ごしてみると落ち着くかもしれません。

 

自分を怒らせた正体や原因を知る

怒りが芽生えた原因として、「ある人が」「ある出来事が」自分を怒らせたのだ、と人は考えがちです。

しかし、実は本当の原因は「〇〇べき」という自分の考えにあると言われています。

 

「自分はこういう場面に遭遇すると怒るのだな」ということを知るだけで、怒る前に自分の怒りを察知できるようになり、怒りをコントロールできるようになるでしょう。

 

「○○べき」の境界線を広げる

前述でもお伝えしたとおり、自分の中にある「○○べき」という考え方は、アンガーマネジメントの中でのキーポイントと言えるでしょう。

 

「○○べき」の境界線は一つとは限りません。自分が考える「○○べき(OKゾーン)」と「○○べき(NGゾーン)」のほかに、自分とは違うが許してもよいという「中間(許容ゾーン)」を作り、境界線を広げることができれば、怒りに結びつきにくくなると考えられます。

 

アンガーマネジメントの研修とは

近年、アンガーマネジメントの研修は各地で行われています。 

一般にアンガーマネジメント研修では、個人別・階層別に行われることが多いようです。

 

個人的に「怒りのコントロールをしたい」という方向けの講座は、アンガーマネジメントの入門的な内容になっていると言われますし、中には組織のリーダー向けに「部下をどう叱るか」「パワハラにならないようにするにはどうするか」といった内容の研修等も行われていると見られます。

 

特に以下の研修では、怒りを完全に払拭する必要はなく、怒りと上手に付き合うことで自分自身の感情をコントロールし、職場・家庭等で良好なコミュニケーションが構築できるようになることを目指しているようです。

 

 まとめ

ご自身の性格を変えることはできなくても、性格を知り、上手につきあうことはできるはずです。

介護サービスでは、何かとストレスが溜まりがちであり、イライラすることも多いかもしれません。

皆さんが属する会社組織やご家庭で良好なコミュニケーションを作っていくためにも、この機会にアンガーマネジメントについて考えてみるのもよいかもしれませんね。

 

 

ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、訪問看護サービスを提供する事業所として、これからも皆様にお役に立つ情報を発信していきたいと考えております。

 

今後ともお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。

本コラムをお読みいただき、誠にありがとうございます。

 

【参考URL】

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会

人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」

リクルートマネジメントスクール