現在導入検討中「新しい複合型サービス」とは

こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。

このコラムでもお伝えしております通り、2024年度介護報酬改定に向けて分科会も毎週のように開催され、議論が繰り広げられています。

以前少し触れさせていただいたかもしれませんが、今回の報酬改定において新たなサービスが導入されようとしております。

今回は、「新たな複合型サービス」について紹介し、現行存在する複合型サービスとはどう違うのかについて取り上げたいと思います。ぜひ最後までご覧くださいませ。

現在ある複合型サービス

現行制度で位置づけられている「複合型サービス」は下記の通りです。

①小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。

小規模多機能サービスは「お泊り」がメインに考えられがちですが、あくまでメインは「通い」です。

「訪問」においても、例えば訪問介護であれば提供時間は30分(身体1)が一つの基準になっておりますが、例えば「ベッドから落ちてしまって起き上がれないので助けてほしい」という依頼があった際、ただ起こしてあげるだけでは通常の訪問介護で対応することが難しいものです。

小規模多機能の「訪問サービス」であれば、5分程度の援助であっても介護保険での対応が可能になります。月の「包括単位」でカウントされますので、このような細切れ対応が可能になるということになります。

②看護小規模多機能型居宅介護

看護と介護を一体的に提供するサービスです。
「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスで、「通い」、「泊まり」、「訪問介護」、「訪問看護」サービスを提供します。

少し前までは「複合型サービス」と呼ばれていましたが、このあとご紹介する「定期巡回サービス」が創設されたことから、「看多機サービス」と名称が変わったのかと思われます。

③定期巡回・随時対応型訪問介護・看護

次のサービスを適切に組み合わせて提供します。

・定期巡回サービス
 訪問介護員等が、定期的に利用者の居宅を巡回して、入浴、排せつ、食事等といった日常生活上の世話を行います。

・随時対応サービス
 オペレーターが通報を受け、利用者の状況に応じてサービスの手配を行います。

・随時訪問サービス
 オペレーターからの要請を受けて、随時、訪問介護員等が利用者の居宅を訪問して、入浴、排せつ、食事等といった日常生活上の世話を行います。

・訪問看護サービス
 看護師等が利用者の居宅を訪問して、療養上の世話または診療の補助を行います。

一体型と連携型がありますが、連携型については訪問看護サービスを「連携先の訪問看護事業所」が提供します。

新設が検討されている「複合型サービス」とは?

下記の画像をご覧くださいませ。

次回報酬改定において、新たな「複合型サービス」が検討されはじめました。

その背景について、この資料には記されています。

特に都市部において、訪問介護員の採用が過酷を極め、同時に介護ニーズも多様化している中、定期巡回サービスや小多機・看多機サービス以外に「複数のサービス」を組み合わせたサービスを導入されてはどうか、ということです。

具体的には「訪問介護」と「通所介護」を組み合わせたサービスの導入を想定しているようです。

通所系(通所介護・通所リハ)や訪問系(ここでは訪問介護に限定して考えます)は、人材の確保が特に厳しいサービスとなっております。

特に訪問介護においては、有効求人倍率が15倍を超えるともいわれております。

倍率15倍とは、1名の求職者を求人企業15社で奪い合う、という意味です。これは尋常な数字ではありません。

人材確保に関するこの現状について、分科会では下記のように着目されました。

それは、通所系と訪問系サービスを併設する法人の実態についてです。

通所(訪問)系サービス事業所の法人が運営している訪問(通所)事業所の状況をみると、事業者が訪問系事業所 と通所系事業所の双方を運営している法人が半数にのぼっているということです。

「新たな複合型サービス」の詳細とメリット

分科会では、通所(訪問)系サービスの職員が訪問(通所)系サービスにも勤務していることは「人材不足を補える・人材を有効活用できる」というメリットを享受できるのではないかと指摘しました。

訪問系と通所系サービスを併用して提供するメリットは、人材の有効活用に留まりません。実際の運用面やご利用者様への利便性向上にも指摘がなされています。

例えば、「通所介護で利用者の性格やニーズを把握し、訪問介護側にフィードバックできる」、「通所介護に行くための準備を訪問介護でしてもらうこともあり効果的である」などである。

実際、通所介護の送り出しや迎え入れのためにヘルパーさんを調整するケースは多くありますが、ケアマネさんも結構調整にはご苦労されているようです。

現行制度上、訪問系サービスと通所系サービスを併用して提供を行う場合の課題として、以下の事項等が指摘されています。

・ あくまで別の事業所であるため情報共有の質と量の個人差が大きい(訪問系事業所)

・ 利用者のニーズを把握してからケアプランに反映させるまでタイムラグがある(通所系事業所)

・ 急なキャンセル等のサービス変更があった場合の事業所への連絡調整が煩雑である(居宅介護支援事業所)

という問題です。

これを 通所介護側が一体的に行うことができれば、よりきめ細かいサービス提供を期待することができるでしょう。

また、通所介護事業所がご利用者様のご自宅でサービス提供ができるようになれば、生活相談員や機能訓練指導員がご自宅へ訪問できるチャンスが広がります。そうすることによって、個別機能訓練に関するご家族説明もしやすくなり、より時間を効率化することもできるかもしれません。

実際、分科会では、訪問系サービスと通所系サービスを組み合わせた複合的なサービスがあった場合の利用者のメリットとして、以下の事項等が指摘されています。

・ 訪問サービスと通所サービスを通じて、切れ目のないケアを受けることができる

・ 通所で明らかになった利用者の課題を訪問でフォローするなど、より質の高いサービスが受けられる

・ キャンセル時にサービス内容を切り替えるなど状態の変化に応じた柔軟なサービスが受けられる。

等、筆者が考える限り「いいことづくめ」ですね。

通所介護は最大利用定員が定められており、定員を超えて受け入れることができません。

従って、いかに最大定員に稼働を近づけることができるかが、収益安定の大きなカギになります。

ご利用者様が通所利用をキャンセルする理由は様々で、それ自体は仕方がないことではありますが、キャンセル者が続出してしまうと事業所の収益を圧迫しかねません。

通所系サービス事業所は、いかにしてキャンセルを防ぎ、稼働を安定させるかについて、常に頭を悩ませています。筆者も、通所介護事業所の管理者をしていたことがありますので、この気持ちは痛いほど理解できます。

この「新たな複合型サービス」が実現できれば、新たな収入源となりえます。

キャンセルがあったとしても、それをフォローするためのサービスを提供することが可能となり、事業所としてもきめ細かいサービスをご利用者様に提供することができます。

ぜひ導入していただきたいと願うばかりです。

今後の方向性とは?

事実上、この「新たな複合型サービス」の導入は決定となります。

今後、新たな複合型サービスについては詳細な議論がされることでしょう。

問題は、運営基準や報酬単位です。新たなサービスが導入されても、基準があまりに厳しすぎたり報酬が安かったりすると、導入を躊躇する事業所も増えることが危惧されます。

地域包括ケアシステムの深化に向けて、本当にこのサービスが必要であると認めるのであれば、躊躇せずに拡充すべきです。国が旗は振ったけれども、実際はついてくる事業所は多くないということでは、あまり意味がありません。

筆者はこの新たなサービスについて、大いに期待をしています。

今後の動向を見守り、常に情報をキャッチアップしていきたいと考えております。

また、このコラムでも取り上げさせていただきますね。

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

季節の変わり目、皆様どうかご自愛くださいませ。

では、次回の投稿をお楽しみに!!